第59話 ピクシー島演奏会
海の上に浮かんだステージと客席。
うん、本当に揺れないし、演奏も無事に出来そう。ガリアさん、本当にありがとう!
みんなは楽器をセッティングしている。
ヒロダーの調子も良さそうね。
「ふぉっふぉっふぉ」
「キャハ、キャハ」
「ふぉっふぉっふぉ」
ジュゲンさん、言葉通じないはずなのに楽しそう。適応能力半端ないわ。
カズくんもピクシーと会うのは初めてだったわよね。しばらく茫然としていたけど、そのうち見慣れたようで、ちっちゃな頭とか撫でてた。ピクシーも嬉しそうにニコニコしている。さすがハンサムなカズくんだわ。ピクシーも虜にしちゃったみたい。もしかして魅了のスキルでも持ってるのかしら。
一番ひどかったのはゴードンさんで、目を見開いて口をあんぐりと開けたまま、まだ今も唖然とした顔でピクシーを見ている。
私は客席側。
横にはそのゴードンさんとフェリペさん。フェリペさんは待ちきれないという顔つき。
メイシャとレイナはまだこちらに待機。それぞれの出番で、私が抱えてステージに運ぶ。
最初は、歌なし。演奏だけでのスタート予定だ。
乙女隊はこのすぐ後なので、ステージの隅で座らせてある。
ピクシーたちは、初めてのことだからか、なんだかワクワクしてるみたい。パタパタとハンサムボーイズの周りを飛んでいる。でも、不思議と、ちょっかい出さないで見てるようね。
キャハキャハと、とても騒々しいけども。
準備が整ったようだ。
気配を察知したか、うるさかったピクシーたちが、ぴたっと声を止めた。
ジュゲンさんのカサーマから。
左手で低音のウォーキングベース。4分音符で、音階に沿うように上下する。
この世界の音楽にはなかなか合わなそうだし、アンデロもいるので、普通は左手の練習用。滅多に曲の中では使われない奏法らしい。
でも、テンポを上げることで、前へ前へと引っ張るような疾走感が出てくる。ジュゲンさんは、これがかなり好きみたいで、実際にわたしたちの曲の中にも入れたりもしてたわ。
この曲、もともとはシンプルなバラードなんだけど、全く雰囲気変わっちゃった! もちろん、いい意味で。
ギターがいれば和音を弾いてくれるのだけど、フェルドさんはもういない。途中から左手で和音、右手でメロディを弾く。そのタイミングでドラムとカズくんが入ってくる。イントロのベースラインをアンデロに交代する。
ピクシーがリズムに合わせて、みんなで羽根を左右に動かしてる。
お人形さんが動いてるみたいで、かわいいー!
ちっちゃなお尻まで振り始めたわ。
カズくんにメロディを渡して、ジュゲンさんがまたウォーキングベースを弾く。
あ、ジュゲンさん、立ち上がって弾きだした。首まで振っちゃって。
テンポを徐々に上げていく。ヒロさん、必死で叩いてるわ。
最後にジュゲンさんがメロディを取って、一曲が終了。
不安だったんで、もう一曲、楽器だけの曲も用意してたんだけど、いらないかも。
「チーちゃんですっ!」
「キョンちゃんですっ!」
「エリですっ!」
「わたしたち、グリーンマーメイド乙女隊っ! いっくよ~!!」
乙女隊、いっけーっ!
言葉は通じなくとも、楽しさは伝わるのね。
ピクシーは相変わらずお尻を振りながら、踊ってる。
……あれ、1匹のピクシーがステージにお尻向けちゃって、わたしたちの方を見てる。
えっ、えっ?
次々とこっちに振り返る?!
なんでよ、乙女隊は気に入らない? やっぱり言葉の壁ってやつ?
チーちゃん、ちょっと不安そうな顔になっちゃってるし……。
一匹のピクシーがトータ姫の耳元でなにかささやいていた。
どうしたのよ、一体?!
「ピクシー達がね、声出して騒いでもいいかって聞いてるわ」
「えっ?」
――もちろん!!
騒いじゃって、騒いじゃって! でも、いたずらだけは、ダメよ。へぇー、ピクシーってそういう空気読むようなところもあるんだー。
「Hi!」
「キャハ、キャハ!」
「Hi!」
「キャハ、キャハ!」
コールアンドレスポンスになってるー! しかも振り付け合わせて踊ってるし。
めっちゃ楽しい!
あたしも踊っちゃおうっと。
あのピクシー、踊り疲れてはぁはぁ言ってるわ。運動不足ね。お腹もポッコリしてるし! ダイエットにも乙女隊よ!
前回のステージで、かなりの自信をつけたのだろう。歌も踊りも、さほど時間が経っていないにもかかわらず、かなり上達していた。
いや、観客への魅せ方が格段にアップしているのだろう。
上手いとか下手だとか、そんな尺度では計れない。
躍動感のあるリズムに合わせて、歌い、踊り、跳ねる。彼女たちの真剣さは、体中から噴き出す汗の量に比例していた。見ているピクシー達を包み込み、自然と体を動かし、ハイにさせる。
いい、ステージだった。
でも心配は、この後。
レイナはまだ前回の失敗から立ち直れていないようだった。ステージに立った瞬間から、下を向き続けている。イントロが流れても微動だにしない。
あ、歌に入れなかった。
泣き出しちゃった……。
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