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第55話 ピクシーのお願い

「助けてください、ですって」と姫は言った。


 また『いたずら』されるのではないかと警戒したが、そうではなかった。


 神話自体の真偽はわからないが、少なくともピクシーと巨大樹、そして世界が危機に瀕していることは間違いないとプリンシペは言う。

 原因は、森林が伐採され続けているためだとも言った。


「巨大樹が枯れてしまうようなことがあれば、どうなるの?」

「わからないだ」


 ただ、ピクシーは間違いなく滅ぶだろうと言った。


 ルネボレー周辺しか知らないが、この世界を空から見た限りでは大きな森もあったし、街の中にも花や木々が多かった。あたしがいた今までの二つの世界に比べてだけど。


「ハー」

「お願いしますって言ってる」


 ピクシーの言葉はわからないのだが、表情や仕草を見ていると、なんとなく何を言っているかがわかった。

 でも、そんなに熱心に私たちを見ないでよね……。

 どうしたらいいかわからないもの。


 人々に、伐採をやめてくれ、ピクシーが死んじゃうから、古代樹が枯れてしまうから、と言ったところで、誰がなにを信じてくれるだろうか。

 森を大切にしましょうと訴えたところで、なにが変わるだろうか。

 そのようなことは、今までの世界でイヤというほど見聞きしてきた。

 自分たちの身が実際に脅かされるまでは、行動しないものだ。


「それって町を襲ってるのと関係がある?」


 世界各地でモンスターの被害が拡大している。滅んだ国も数多くあるそうだ。

 アステラの王様がルネボレーに来たのも、そのことを協議するためだった。


「ちょっと、ピクシーに聞いてみてよ」

「う、聞き取れるけども、話せるかなぁ」


 必死に姫は伝えようと頑張っているけども、ピクシーの顔つきを見る限りでは、うまく通じていないようだ。きょとんという顔をしている。

 大勢のピクシーが一斉に首をかしげる仕草は、かわいいのだけども……。


「では、それがしが!」


 ジャンさんがキャハ文を話し始めた。


「キャキャハ? キャハハハハー?」

「キャハッ!」

「がははは」


 どうやら、姫よりも会話できているようだ。

 どこまでが会話で、どこまでが笑っているのかよくわからなかったが、なにやら楽しそうに話していた。しかし、ジャンさんが「キャハッ」と言っているのは、かなり気色悪い。


 モンスターを巨大化させて襲わせてるのは、確かにピクシーの『いたずら』だそうだ。誰かに気づいて欲しかったという。


「それって、あたしがトータス・ゴッデスにされたのも関係ある?!」


 あるんだって。


「しかも二回も?!」


 一回はやったが、二回目はピクシーじゃないそうだ。


「なんとか考えてみるから、巨大化させるのはやめてって言ってくれる? それと、さっきから髪だの服だのを引っ張るのもっ!」


 あ、そこっ! プリンシペさんの尻尾に花柄マークの落書きしないっ!


「二回目はピクシーのせいじゃないとすると、どうしてかしら?」と姫が首をひねる。


「ピクシーじゃなけりゃ、トレントしかないだぁ。んだども、世界が弱ってるせいで、そこまで強力な力、なくなってるはずだどもなぁ」

「トレントって?」

「木の化け物だぁ。強いやつは木こりの姿をしたドワーフを連れてるだ」


 木の化け物。

 木こりの姿をしたドワーフ。

 前に、なにかあった記憶が……。


「あっ!」


 この世界に来てすぐの頃。魔法の確認をしていた時のことを思い出した。巨大な木の化け物と木こりの、2体のモンスターに出会った。あの時は、吹き飛ばしちゃったんじゃなかったかしら。

 それで、怒って姫をまた巨大化させたとか……。


「なに?」と姫が私の顔を覗き込む。

「ううん、なんでもないっ!」


 とりあえず知らんぷりをしておいたけど、こっちもなんとかしなきゃ……。

 ん、もうっ。ケットバシー、ちゃんと教えてといてくれなきゃ困るっ!


「呼んだかニャ?」


 いつも忙しいという割には、ずいぶんとタイミングいいじゃない。

 で、一体どういうことよっ!


「この世界で誰がどうするかまでは関われないニャ。自分で蒔いた種は、自分で始末するニャ」


 ん、もうっ! 確かに言う通りなんだけど、役に立たない時だけ、出てくるわねっ。


「それだけかニャ?」


 はいはい、それだけよ、それだけっ!


「トレントを呼び出したいときには、この笛を使うニャ。それじゃ、予約があるので行くニャ~!」


 そう言って、筒の形をした笛をくれた。

 ……たまには役に立つこともしてくれるじゃない。


 その後、急いで森へ行き、笛を使ってトレントに会った。

 土下座しまくったら、なんとか許してもらえた。ほっ。


 ルネボレーの王様にも会ってみた。

 環境破壊を進めている国ほど、モンスターの襲撃が激しい。そこで王様は、森林が減り、食料や行くところを失ったモンスターが町を襲うようになっているのではないか、と考えていたようだ。さすが!

 先日のアステラの王との会談でも、その話をしたそうである。


 ただ、その運動を全人間界に広げていくには、いくつか問題があると言う。

 ルネボレーやアステラのような先進国は良いのだが、まだ発展していない国にとっては、森林を伐採し、その資源で国力を上げるしか手がないのだという。無理に考えを押し付けたことで、戦争に発展した国もあるそうだ。

 うーん、モンスターだけじゃなくて、人同士の争いにもなっちゃうなんてね……。


 ただ、世界的には、保護する方向で動いていると言ってくれた。

 この話をピクシーたちが聞いたら、少しは喜んでもらえるかしら。


 王様には、ピクシーや古代樹の話は、ややこしくなるから伏せておいたのだけどね。


お読みいただき、ありがとうございました!


ブックマークなどなど、まことにありがとうございます。

更新の励みとなっております!


引き続きよろしくお願いいたしますm(__)m

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