第43話 またバンド組めるかなー?
トータ姫とジャンさんを亀の国に届ける。
二日酔いのジャンさんに呆れながらも、みんな感謝してた。
ほんと、仲がいい。
次に行くのは1か月後。
魔族の国を経由して、ピクシーに話をつけにいきたいという。
それまでは国造りに専念するらしい。
ようやく道路が完成。家も今いる人数分は、ほとんど出来てきた。
ゴードンさんのところに居候していたのは、家がないという理由もあったので、みんな帰れるようになったら必要なくなるかもしれない。
亀たちも自分の家の方がいいだろうしね。
さらなる道路の整備や、商業施設。娯楽施設なんかも作るらしい。仮小屋になっている王宮は最後。トータ姫らしいわね。
設計にはヒロさんも加わっているそうだ。
ドラムの練習に建物の設計、楽器作りと、大忙しで倒れちゃわないかしらん。ちょっと心配……。
ゴードンレストランに戻る。
早速、ヒロさんとカズくんがオーディションの結果を伝えに来た。
「びっくりしちゃったんですよー! めっちゃ緊張しちゃいました!」
これがカズくんの第一声だった。
一旦戻った時の顔を見て、なにかがあったことは予想していた。
慌てていて詳しく聞けなかったんだけど、良いことなのか悪いことなのか、ドキドキはしていたんだけど。
今こうして顔を見ると、きっと朗報なんだろうなと思えた。
「ピアノに、なんと王立楽団出身の、あの方がいらして!」
名前をジュゲンと言った。応募の時は偽名を使っていたらしい。カズくんは演奏会で見かけており、問いただしたら素直に答えたという。
かつては王立楽団のバンドマスターも経験していたジュゲンさん。
通常は命の限り王立楽団を務めるのが普通だが、70歳になった年に引退を宣言したそうだ。その後、音楽教師をやるでもなく、どこで何をしいているかの噂さえ聞こえてこなかったという。
今はすでに75を超える高齢なのだが、演奏は変わらず素晴らしかったと言った。
石板での録音は出来ておらず、聞くことができないのが残念だなぁ。
カズくんは、出来ることなら、ぜひ一緒にやりたいと言った。
「ところで、お金の話は、みんなに説明したのよね?」
オーディションの応募で予想外に人が集まったことを話したら、ゴードンさんは「お金はいくらでも出すから集めよう」と言ってくれた。
それを聞きつけたメイシャがキッと目の端を尖らせながら、ダメダメー! と口を挟み、ステージをやることでのメリットとか収益増をそろばん弾いて、これくらいと計算して持ってきた。
メイシャはお金のことになると超絶、厳しい人になる。
でも、それがゴードンレストランをここまでしたのよねー。
ゴードンさんも、この点はなにも言えないようだ。
……言うとおりにするわ。
というわけで決まった額だったが、それを伝えた時の反応が気になっていた。
「はい。そこは誰も問題ないかったんですけど……」
もう一点、気がかりなことがある。
アンディさんのように音楽を捉えている人だと、やっていくのは難しいのだ。
その時のことをきちんと包み隠さず、オーディション前に伝えるように言っておいた。
「その話をしたら、ほとんどの人が帰っちゃって……」
やっぱりそうだったのね。まぁ、仕方ない。
残ったのは、ギターが二人、シンセサイザーが一人、そしてピアノは、そのジュゲンさん一人になってしまったという。
「それでジュゲンさんは、オーディションではどんな感じだった?」
「とっても楽しそうでしたよー。僕も楽しかったんで、予定外でしたが5曲もやっちゃっいました。それでも、もう一曲やろうと言われちゃったくらいです」
ひとり2曲くらいずつやる予定だった。まぁ、人数が減ったので構わないけども。
「後の人を待たせるわけにもいかなかったので、そこで止めたのですが、まだまだ演りたそうでした」
「演奏は全く問題ないと思うけど……そんな人が本当に来てくれそうかしら」
「多分」
「じゃぁ、決まりね。どうせ一人しかいないし」
ヘル二人のうちでは、フェルドさんという人の方が上手かったと言った。
というより、もう一人の方は、始めたばかりの初心者のようで、ほとんど弾けなかったそうだ。前にゴードンレストランの演奏を聴いて、やってみたいと思ったらしい。
それでオーディション受けるという心意気、わたしスキだけど!
まあでも、フェルドさんに決まりね。
カズくんも文句ないと言った。
パストマスは残念ながら、技術的に難ありと判断された。
曲の途中で、魔力により音色を変えるのだが、その切り替えが上手くできなかったらしい。
演奏自体の腕も、そこまでではなかったそうだ。
「ただ、ジュゲンさんの直後だったので、比べちゃうとさすがに可哀そうなのですが」
とはいえ、どうかなぁと思いつつ一緒にやるのは難しそうね。
シンセはなくても、取りあえずはバンドになるし……。
「うん、これで行きましょう!」
私はそう言って、早速、ジュゲンさん、フェルドさんに合格の通知を送った。
明日、二人に来てもらいましょう。
いよいよ!
楽しみだわ。
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