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第40話 魔族大宴会

「んじゃ、魔界のもの全員集めてくるずらー」


 そう言って白バイの警官は猛スピードで飛んで行った。


「ようこそ来ただぁ。ここんとこ何人もお客さん来てうれしいだぁ!」


「こんにちは、魔王様」


 あ、姫たちを戻さなきゃ。

 ボンと音を立てて姫とジャンさんが大きくなった。


「うおおお、なんと三人も来てくれただぁ。うれしいだぁ! 宴会の準備するだー!」


 なぜか玄関前に三人とも取り残されてしまった。

 もしかして急に縄でも飛んできてぐるぐる巻きにされて、鍋にでも放り込まれるんじゃないかと一瞬思ったが、なにごともなかったかのように、ガチャっと再び玄関が開いて、「こっちだぁ」と案内を受ける。


 魔王の家の隣には、体育館のような大きな建物があった。

 南京錠を外し、入り口の鉄のドアをスライドさせ、魔王は中に導いた。

 そこには、見るもおぞましい血がべったりと染みついた折檻の道具が所狭しと並んでいた……わけではなく、縦に5列ほど小さなテーブルがずらっと並んでいた。

 どこぞの旅館の宴会場のようだ。


「さぁさぁ、お客さん、こっちに来るだぁよ」


 真ん中の一番奥に座らされた。

 入り口のドアがギィと開いて、何人かが入ってくる。尖った尻尾の影が見えた。こちらの方にやってくる。

 手にはビール瓶のようなものを持っていた。


「さぁさぁ、まぁ一杯! うひょー、嬉しいなぁ」


 わたしたちにグラスが渡され、ビンから液体が注がれる。

 ふと横の壁を見た。オオカミの紋章があった。

 ……やはり魔族に間違いない。


 建物の外でブルルルという音、ブレーキを踏む音、ドアがバタンと閉まる音などが続々と聞こえてくる。

 扉が開き、大勢の魔族たちが入ってきた。やっぱり同じような服装だ。


「おうおう、皆のもの、お客様だぁ。好きなところ座るだぁ」


 あっという間に席が一杯になった。


「よいっしょっと」

 と掛け声をかけて魔王が立ち上がり、紋章の下へ歩いていく。ミカン箱ほどの台があり、その上に立った。


「みなのもの、遠路はるばる下の国からお客さんが来てくださっただー!」


「おおおおお」


「よくぞ、よくぞ参られただぁ」


 そこまで言って、魔王は首をひねった。


「して、用件はなんじゃっただ?」


 姫が立ち上がる。

「私はトータス族の姫、トータ。魔王様にお願いにまいりました」


 会場が一瞬にして静まった。


「うおおおおお、悪い奴だぁ。敵が攻めてきただぁ」

 一斉に姫の周りに炎が飛んできた。


「ファイアウォール!」

 三人の周りに火の壁を作った。ゴオっ、バチバチっという音とともに打ち出された炎が消えていく。音がやんだようだ。魔法を解除する。


「むぅ、強いだ、こいつら、強いだ!」


「お待ちください!」

 姫が叫ぶ。


「戦いに来たのではありません! 話し合いに来ました!」


 周りの者はさらに第二弾を撃とうとしていた。


「みなのもの、待つだぁ!」


 魔王の声が響いた。


「さきほど、話し合いと言っただぁか?」


「はい。戦いではなく、話し合いに来ました! 我々の国をもう攻めないでほしいと!」


「それは本当だぁか?」


「もちろんです!」


「だぁなぁ! そうだぁなぁ! いやいや申し訳ないだぁ」


「申し訳ないだぁ」


 あれれ、急にまたみなの態度が変わったぞ。


「許せんなぁ、あいつらウソつきやがっただ」

「ウソつきだぁ」

 口々に言う声が聞こえてきた。


「あいつらって?」

 私は思わず訊いてしまった。


「ちょっと前に亀の国の使者が来たんだぁ。そんとき、王族っていう悪い奴らがいるから、やっつけて欲しいって言われただぁ。おらたちはどえれえ強いから倒しただぁ。あいつらに騙されただぁ」


 い、いや、ちょっと……。


「ひとの言うことばかりそんなに信じて、もしあたしたちが敵だったらどうするのよ!」


「敵なんだぁか?」


「違うわよ!」


「そうだぁ、そうだぁ。あんたらはいい奴だぁ」


 なんだこれは……。


「すんませんだ、皆さま。魔族というのは素直すぎるのだ。すぐ騙されるだ」


 目の前にいた者が声をかけてきた。


「あなたは?」


「申し遅れましただ。魔王の第二子にて、プリンシペと申しますだ。さきほどの攻撃でケガなどはございませんでしただか?」


「大丈夫です」


「お強い方だぁ。大変失礼いたしましただ。ぜひ後ほど詳しいお話をお聞かせいただきたいだ。この宴会はおそらく朝まで続くと思われますだで、ひと眠りされた後にでも……」


 その言葉通り、宴会は朝まで続いた。

 これが本当に魔族なのだろうか?

 トータ姫の国を一瞬で滅ぼした魔族なのだろうか?

 なにがなんだかよくわからない。


 とりあえず、いきなり襲われるということはないようだ。

 ジャンさんはぶどうジュースを飲んで、魔族と肩を抱き合いながら踊りまくっていた。

 まったく……。あんた、なにしに来たのよぉー! とも思ったが、騎士としてはとても優秀で、わずかでも敵意や謀りごとが存在する中では、こんなにガーガーいびきをかいて眠ることは絶対にないと姫が言う。その言葉は信じていいと思えた。


 プリンシペという魔族の言った言葉が気になる。

 一体魔族というのは、なんなんだ?


お読みいただき、ありがとうございました!


ブックマークなどなど、まことにありがとうございます。

更新の励みとなっております!


引き続きよろしくお願いいたしますm(__)m

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