表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/102

第30話 カズくん

 アンデロという楽器、ああ、頭の中でこんがらかるのでベースって言っちゃうね。ベースを演奏してくれてるのはカズくんという。なんか日本人の名前っぽくていい!


 とはいえ、カズくんもアンディさんもこちらの世界ではどこにでもいるような名前らしく、どっちが変わってるとかそういうことではないらしい。亀の中にも、ヒロさんという口ひげが立派でめっちゃ豪快な大工さんというか建築士さんもいるし、リチャードっていう凄腕の料理人もいるしね。


 で、このアンデロはいわゆるウッドベースに近くて、木で出来てるんだけど、おっきくて中が空洞になってる。指で弾いた音を空洞で共鳴させて、さらに魔力を込めることで大きな音が出る楽器なの。演奏者の魔力次第だけど、いくらでも。


 他の楽器、たとえばギター、これはこっちではヘルというのだけども、これは曲によっては何人もいてもいいし、バイオリンみたいなのはあえて魔法で音を増幅させない使い方をしたりで、やっぱり何人いてもいい。ドラムも王立楽団だと各パートごとに人がつくので、やっぱりある程度の人数が必要になる。


 でも、このアンデロだけは特殊で、大勢の楽団や編成が必要になっても、たった一人。

 一曲の中で二人以上必要になるっていう楽器じゃないの。そういうわけで、楽団でアンデロの定員は、何かあった時や交代のためってことで二人限定らしい。


 で、このカズくん。「くん」づけしちゃってるけど、わたしより年上。25歳位だって言ってたかな。やっぱりものすごく演奏がうまいのだけど、今、この世界にベースの天才少年って言われている子が2人もいてね、二人とも15歳くらいなんだけど、すでに王立楽団員らしい。ちなみにそのうちの一人は代々王立楽団員で、2つ上のお兄さんもドラムですでに楽団にいるっていうからすごい家系よね。


 ともかく、そんなふうに15歳の天才が二人もいたら、席が完全に埋まってるだけでなく、しばらくの間交代なんてこともありえない。おかげでアンデロ奏者の人口が激減したって言われてるくらい。


 こういう事情で、カズくんは若いのに人前で演奏するってことになったのだと思うし、アンディさんに言われても残ったんじゃないかなと思うのよね。



 それでもアンデロを弾き続けたい、弾くのが好きだって言ってるだけあって、とっても上手い! 天才二人と比べてどうかってのは、まだ王立楽団を聞いたことがないのでよくわからないのだけど、なんていうのかな、リズムは安定しているのはもちろんだけども、聞いてて気持ちがいいのよね。低い音が体の中まで入り込んで響いてくる感じがするの。

 この、体にズンズンとくる感じって、わたしも試しに弾かせてもらったんだけど、素人じゃ出せないみたい。もちろん、歌ってても気持ちがいい。


 ちょっと背も低くて小柄で、幼い感じのする男の子なんで、普段はかわらしくてぎゅっと抱きしめたくなっちゃう感じなんだけど、アンデロを弾いている時はカッコイイって思っちゃうから不思議よね。……あ、どうも前世のおばちゃんが残っちゃってるかも、いけない、いけない。わたし、今は若いんだった。


 でもね、お店に来る貴族のご婦人の中には彼目当てで来てるんじゃないかって人もいっぱいいるらしい。たまに帰り際、喧嘩している夫婦もいるようだし。


 性格は引っ込み思案だし、見たところは細くて頼りなさそうなんだけど、先はないとわかっていながらもアンデロを続けていたりと、ものすごく芯が強いのをわたしは知ってる。優しいんだけど、ナヨナヨとした感じじゃない。で、とっても温かい感じがする。


 落ち込んでた亀三人娘も、彼のおかげで笑顔にもなったようだし、励まされてまたやる気も出てきたよう。さすがだわ。でも、三人娘に真っすぐ目をみつめられてありがとうと言われた時は顔を真っ赤にして照れちゃってるあたりもかわいい。

 って、褒めまくっちゃってるくらい、わたしもちょっとだけ、気になる感じ……。いやいや、わたしはアイドル。いけない、いけない。



 ただ、演奏の腕はいいんだけども、作曲はやっぱりまだまだな感じがするの。うーん、曲としての基本的なところはもちろん出来るのだけど、どうしてもアンディさんと比べると見劣りしちゃう。なんかこう、びっくりさせてくれるようなところがないのよ。

 でも、「ぼくだけは、ずっと居ますよ」って言ってくれたので、思わずギュって……いやいや、いけない、いけない。わたしはア・イ・ド・ル!

 本当に感謝してるわ。


 で、肝心のステージについてだけど、アンデロと歌だけ、カズくんとわたしだけでレストランで2曲だけ演奏してみたことがある。お客さんは確かに喜んでもくれたのだけど、何曲もやるってことになると、ちょっと足らない気がしたのよ。


 コード楽器ももちろんだけど、やっぱりリズムが欲しいところね。渋い曲は良いけど、亀三人娘もいることだし、ダンサブルな曲やるなら、ドラムは絶対に欲しいかな。


お読みいただき、ありがとうございました!


ブックマークなどなど、まことにありがとうございます。

更新の励みとなっております!


引き続きよろしくお願いいたしますm(__)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ