第29話 バックバンド解散
メイシャとレイナはソロ、そして亀三人娘はトリオで。それぞれメインとなる曲を用意したいと思ってたので、まずは三曲、歌詞を書いて、アンディさんにお願いした。
メイシャは説得力がある声なので英雄の哀愁を歌った曲。レイナは可愛らしい声なので、これから頑張っていくという娘の決意を両親に伝える曲。そして亀三人娘はダンサブルな曲だけど、ちょっとコミカルな感じがいいかなと。
だが、この亀三人娘の曲で衝突が起きた。
楽してウキウキして踊っちゃうわよね、という内容の曲。
いくつかの歌詞の書き直し、たとえば最初の歌詞で「踊るわたし きらめいて女神になる」という部分は宗教的な理由で「踊るわたし きらめいて羽ばたくのよ」に変更させられたけど、まぁ仕方ないわねと思ってた。
考えてみれば、そこら辺からすでに波乱の予兆はあったのかも。
リハーサル中、わたしは亀三人娘に客席への視線の向け方、逸らし方、また、より可愛く見せるためにあえてカッチリしないで踊る方法などを中心に指摘をしていたのだけども、どうもそれが気に入らなかったようだ。
音程やリズムが多少ズレていても三人で一緒に歌うので、まぁ、そこそこそれなりに聞こえる。素人っぽさは出てしまうが、それも彼女らのウリでもあると思っていた。だが、そのことを一切指摘しないことに嫌気がさしたようだった。
「こんなヘタなやつらと一緒に演奏したくない!」
突然アンディさんが言い出した。いや、でも、楽しそうじゃないの。曲だってノリノリだし。
「いい加減にしてくれ! おれはもう降りる!」
そう言い残して帰ってしまった。
それだけではない。アンディさんから直接「やめた方がいい」と言われたという噂もあるが、ベース、こちらの世界では「アンデロ」という名前の楽器奏者を残して、全員翌日から来なくなってしまった。
亀三人娘は「わたしたちのせいだ」と言って泣き出し、歌うことも恐くなり、もうやめたいとも言いだした。
「あなたたちのせいじゃないのよ!」
そう言うも、しばらく立ち直れないようで、レッスンも渋るようになってしまった。
わたしは何度かアンディさんのところ、他の演奏者のところへお願いに行ってみたのだけど、聞く耳さえ持ってくれない。最後の方は「二度と来ないでくれ」とまで言われた。
演奏してくれないと、ステージは出来ない。
どうにもこうにも弱ってしまった……。
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