第27話 メイシャに任せた!
第4章「初めてのステージ」開始いたします。
ゴードンレストランを離れている間の出来事で、嬉しいことがあった。
レイナの歌が一気に上達していたのだ。
いや、もっと正確にいおう。メイシャだ。歌のトレーナーとしての能力が非常に高い。わたしなど足元にも及ばない。
あたしは前世でそこまで上手くはなれなかったが、この世界に移ってから能力を身に付けたために一気に上手くなってしまった。苦労して身に付けたわけではない。今までやろうとして出来なかったことも、さらりと出来てしまえた。
その点メイシャは苦労して一歩一歩身に付けてきたのだ。
なんで出来ないのか、どうしたら出来るようになるのか。そんなことを毎日のように考えながら、一つ一つ試行錯誤して出来るようになっていった。だからこそ、レイナがどうして出来ないのか、なにが悪いのかというところを把握して、教えることができる。
身体の力を抜くためにはどうしたらいいか?
音程をきちんと捉えるためにはどうしたらいいか?
このメロディはどこで息継ぎをした方がいいか?
アクセントをどこに持ってくると歌いやすいか?
実に細かい。実に細かいのだが、正確だ。
メイシャも、教えることで上達していた。人に教えることで自分でも気づくことが多いようだ。この日からわたしはメイシャとレイナに教えることをやめた。
また、亀たちの中にも歌が好きなものがいる。
亀なので、見た目がどうなのかというのがいまいちわからないのだが、振る舞いが可愛らしい3匹がいた。歌うことにも熱心だ。
メイシャに教えてもらうようにしたら、やはり一気に上達した。
メイシャは確かに頭一つ抜けているものの、このレベルでステージに上がってもいいのだろうか。
もう少しだけ上達してからの方がいいかなぁ。
そんなことを思っていたが、よくよく考えてみれば、前世でのあたしは今のメイシャほどに上手かったわけではない。それでもステージで堂々と歌った。
音程が正確だから。
リズムが正確だから。
きちんと声が出ているから。
もちろん最低限必要ではあるが、そんなものより大事なのは、なにかを伝えたいという強い想いじゃないのだろうか。
その強い想いをどうしたら表現できるかの一つに歌の技術があり、また、ステージ上での振る舞い方がある。
わたしの好きなアイドルたちは、みな、この振る舞いが一流だったと思う。
今までわたしだけがステージに立っていたが、そろそろみんなにも出てもらおう。
歌はメイシャに任せ、わたしはステージングのレッスンを始めた。
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