第22話 牢屋探索
透明になれる魔法もあったのね。
さくっと中に入れたわ。
小説とかだと地下牢とかに捕らえられていたりするけど、亀の世界だからどうかしら、とぐるぐると歩き回ってみた。
新たに政権を取った人たちの議会とか詰所とか、それぞれの事務所みたいな部屋がある。
この亀たちは、選挙とかで選ばれたりしてるのかしら?
みなが慌ただしく動いていた。
まぁ、それはともかく。
地下ってのがないのよ。
そうか、姫が言ってたな、地面から魔力が出ていると。
力がある亀を、力が発揮できるようなところに置いたりしないわよね。
てことは、もしかして最上階とかが牢になってたりするのかしら。
そんなことを考えながら登っていくと、やはり建物の上の方に牢屋をみつけた。
あまりにも多いわ。これじゃ、誰に話しかけたらいいかわからない。
強硬派ってのもいるはずだし。
姫に聞けばわかるかもしれないけど、こちらからの話は通じないのよね。
んっと、テレパシーみたいな魔法は……ないか。
かなり広い。一つ一つの牢は狭いのだが、それぞれの階ごとに50個はあるだろうか。まるで巨大な迷路のようだ。一つの牢に3匹ずつ入れられている。1階分で150匹もいるということでも、その広さがわかるだろう。
幾度となく行ったり来たりしながら、これはと思うような亀を、最上階とその下の階で2匹見つけた。
どっちも白い髭を生やし、威厳のありそうな面構えをして、座禅のようなものを組みながら、目を瞑っている。高貴そうな感じもするな。牢の広さは他よりも少し狭かったが、一人部屋のようだった。
もし王様が生きているのだとしたら、このどちらかじゃないかなぁ……。
そうだ!
私は小さくなる魔法でさらに体を縮め、ひとつの檻に入った。
魔力を出来る限り弱めるように気を付けながら、指先から炎を出し、壁に絵をかいてみた。
ん、ケットバシーに絵の才能も貰っとくんだったかしら……。
出来上がったものは、とても龍とは思えないものだった。
一応、真ん中の亀を二つの龍が持っている絵……のつもり。姫が二度目に出してくれた像を絵にしたものをイメージしたんだけど。
ま、いっか。
じいさん亀の方をトントンと叩く。もちろん透明のままで。
「じゃ……邪教じゃ! 看守よ、邪教じゃ、邪教じゃ。わしを責めてくる。ああ、なんという災禍。いくら死ぬとてこのような恥ずかし目を受けるのは!」
あら、これ、もしかして強硬派だったかしら。
慌てて火をつけて絵を消した。
まだ亀は放心状態のようだった。焦点が定まらず、絵があった方をじっと向いていた。
あんまりにも、このままでは可哀そうね……。
そう思って、別の所に、亀の絵だけ描いてみた。
また、肩をトントンと叩く。
「おお、神よ。なんといういたずらか。奇跡じゃ。なんといういつくしみじゃ!」
老亀は涙を流しながら、その絵に向かって大きく手を広げていた。
少しは何かの足しになったのならいいけども……。
声を聞きつけて看守がやってくる足音が聞こえたので、私はそっと檻を出た。
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