第18話 マヌカン
むっかしー、むっかしー、うらしまはー
助けた亀に連れられてー
竜宮城に来てみればー
「なんの歌よ、それ」
思わず歌っちゃったら、トータ姫が怪訝そうに言った。
昔話の歌よ。こんな物語があったの、と浦島太郎の話をしたが、姫は、よくわからない話ねと言って興味を示そうとしなかった。
「さぁ、行くわよ」と姫に言われたが、さて、深海にどうやって潜っていけるかしら。
ふと思い立って姫の甲羅にまたがってみたら、なにやってんのよ、重いじゃないのと真顔で言われた。
「あんた泳げないの?」
泳げないわけじゃないけども、海底深くまでって、魔法でも使わない限り無理っしょ……。
「まぁ、わたくしも魔法で泳げるのですけどねぇ」
トータス族は泳げないらしい。姫は魔力で泳ぐことができると言った。まるで私が魔法で空を飛べるのと同じようなものかしらね。そうか、魔法……
なにか使える魔法があるかしら、と、小一時間ほどあでもない、こーでもないと試していたが、良い方法が見つからなかった。
だいたい、魔法の説明書ってのがないよね……。
説明書?
ああ、ケットちゃん呼んでみよう!
でも、忙しそうだからな……。
と思った途端に現れた。
「なんか用かニャ?」
あらま、今日はマヌカン並みの速さね。
「マヌカンってなんニャ?」
「ハウスマヌカン。ブティックの店員さんのことよ」
そういや、空前絶後のプログレッシブ演歌なんていうキャッチコピーの歌もあったわね。破壊力抜群だわ。……まぁ、いずれにせよ死語よね。
「ブティックってなんニャ?」
ああ、もう。余計なこと言っちゃった。面倒くさい。
「素敵なお店のことよ」
「それは嬉しいニャ」
トータ姫がちょっとちょっと、なに独りごと言ってるのよ、といぶかしがった。
どうやらトータ姫には、ケットバシーは見えないらしい。
「海に潜るための呪文試してただけよ」
姫はふーんと言った。
「わかったニャ。嬉しいから海に潜る呪文あげるニャ」
ケットバシーはそう言うと、尻尾を立ててくるっと回った。
「さあ、言うにゃ」
「ん? なんて?」
「マヌカンー!」
えええ。海に潜る魔法がマヌカン? ちょ、ちょっと。
「嬉しいニャー、忙しいニャー、次行くニャー」
そう言って消えてしまった。相変わらずの多忙ぶりのようだ。
仕方ない。
「マヌカン!」
私と姫は竜宮城、もとい、トータ姫の城に向けて進んでいった。
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