第17話 出発
メヒスキの町に像を置くのも、諦めた。
そうなると、心配なのはトータ姫の城を見に行っている間の留守である。
とにかく約束は約束だし。よくよく考えてみれば、気丈に振る舞っているものの、姫の心の中を思うと、張り裂けんばかりの思いなのはすぐにわかる。
なにかいい手はないものか。
率直にトータ姫に相談してみた。
あなたの心配な気持ちもわかる。でも城や町が心配な気持ちもあると。
姫はまたいつぞやのようにくるっと小さな指を回した。
「これをね、街が見えるとこに置いたらいいわ」
今度は、手のひら大の真ん丸い水晶玉が2つ出てきた。
「もしかしてまた邪教の……じゃないわよね」
「違うよぉ。てか、そもそも邪教じゃないってば」
姫の言葉遣いが、ちょっとくだけた。素直に心からの心配を伝えたからだろうか。
こんな小さな体でも、色んなことを無理してたんだろうな。
「これを置いておくとね、辺りの風景がもう一つの玉から見えるようになるの。
もう1セット必要だったかしらね」
私はルネボレーのお城のてっぺんと、メヒスキのガザントの家の上に置いた。もちろん、目立たぬように。
なるほど、180度ぐるっと見えるのね。これなら少しは安心かもしれない。
「今度は一緒にいく?」
「行きます!」
ワープみたいなのがあればいいなと思って色々と試していたら、行ったことのある場所へは、イメージすることで瞬間移動できることがわかった。
ただ、一回も来たことがない場所へは、無理みたい。
トータ姫を抱えて飛んでみたんだけど、姫は目をちっちゃな目をクリクリさせながら、わぁすごい、わぁすごいと喜んでいた。
少なくとも水晶玉とこのワープがあれば、なにかあった時は大丈夫そうね。
明日からしばらくの間出かけてきます。そうゴードンさんとメイシャに伝えた。
「どこに行くんだい?」
まさか、海底のお城に行くとも言えるわけもない。
「いい歌い手さん、もしいたらスカウトしてこようかなと」
口からの出まかせだったが、二人ともそうかそうかと喜んでくれた。
「ああ、レイナにも伝えておいて。明日がレッスンの日だったけども、お休み。
……というより、メイシャがレッスンしてあげて」
メイシャが自信なさそうに「ええ」とか「でも」とか言ったので「大丈夫、あなたなら出来るわよ」と言ったら「はい!」と大きな声で答えた。
翌朝、早目に出たが、海が見える頃には、すっかり夕方になっていた。
ここまでくる間に5つの町と7つの大きな森があった。結構、森で分断されている世界のようだ。
かなり遠かったわねぇ。
とはいえ、歩いたら少なくとも2~3週間はかかる距離だろうから、飛ぶって便利ね。
ただ、トータ姫は「飛び酔い」というのだろうか、慣れていないせいか気持ち悪そうにしていた。海の側に洞窟があったので、今日はそこで休んで、明日行きましょうか。
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