表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/102

第16話 再び王のところへ

 城門の入り口に降り立つと、周囲の兵士から歓声があがった。


「英雄さまが帰っていらっしゃった!」


 口々に叫ぶ者がいる。

 王に会いたい旨を伝えると、すぐに謁見の間に通された。


 相変わらず、かあちゃん同席か。


 国王だけが頭にあったが、かあちゃんの存在を意識してみると、改めて今回の話をすんなりと通すのは難しいと思った。だが、平和のためにはなんとしても……。


 今さらだが、どう話を持っていこうか。


「いまひとたびの邂逅、実に嬉しい限り。その後いかがお過ごしかな」


 若い王が相変わらず難しい言葉で話しかけてきた。せっかく日本語が話せる世界なのに外国語でも聞いているようだわね。一旦翻訳しないと会話もできん。


 ああ、もしかしたら思い付きで話さずに、頭の中でよくよく考えてから話すためにはいいかも。まぁでも、こんな風には喋れないけどもね。


「して、今回はどのような要件にて参られたか?」


 単刀直入にきたわね。んー、かあちゃん邪魔だな。というか、一対一で話せたら通じる気もするんだけどな。でも無理だろうなぁ、ええい、ままよ。


 私は像を取り出して言った。


「王様、こちらを見てどのようにお感じなされますか」


 出した瞬間に、広間の兵士たちがざわめき始めた。


 あの龍はわが国の紋章だな。

 よくよく見ろよ、邪教が真ん中にいるぞ。なんだあれは、見たことがない。

 なんだと。本当だ、おぞましい。


「ええい、そのような汚らわしきもの、わらわの目にさらすでないぞ。やはり馬脚を現しおったか。この者即刻ひっとらえい!」


 かあちゃん、やっぱりな……。

 その言葉で兵士たちが槍を構えた。


「静まれ。この国の全兵士をもってしても、この方を捉えるどころか、指一本触れることさえできぬであろう。

 始めて見るものだが、意図は理解した。融合、ということか」


「その通りでございます。世界に脅威が迫っている今、愚かな争いはなんの得にもなりません。一致団結して守っていかねばならないかと。ただこの像を街の入り口に置きさえすれば魔物は襲ってこなくなります」


 しばらく王は腕組みしていた。沈黙が続く。


「わが友である英雄よ」


 あら、友達と思ってくれたのかしら。それはありがたい。


「そなたの申し出、しかと理解した」


 お、話がわかる人で良かった!


「だがしかし。まずは、その像を置くことで、本当に魔物が襲ってこなくなるか確証がえられぬ。だが、この点は英雄殿の申し出ゆえ間違いなきことと信じよう」


 すっかり英雄になっちゃったようね。くすぐったいけれども。

 でもトータ姫も言ってたけど、一部には効かない可能性もあるんだったっけ。ここのところもちゃんと言っておかないとウソつきになっちゃうかも。あ、どうしようかしら。


「しかしながら、その像を見て、この場にいる者がどのような反応を示したか、英雄殿も目の当たりにしたのではなかろうか?


 意図を理解し、納得した者だけではない。理解はできるが反発する者もいる。あるいは、一切理解できぬ者もいる。

 王、国とはいえ万能ではない。民の心は空に浮かぶ雲のようで誰一人として同じではなく、また、誰かによって思いのままに操れるものでもない。


 魔物が襲ってこなくなるという話は非常に魅力的ではあるが、人々の中で混乱が起き、争いになる可能性も否めない」


 なるほど。

 目の前に敵がいれば一致団結できるか、というと、決してそうでもないということね。


「英雄殿のご提案は実に興味深く、かつ、有益な話ではあるが、少なくとも現時点では承服しかねる。どうか許したまえ」


 やられたわ。

 幼さの残るような声で難しいこと喋るんでちょっと笑っちゃいそうだったけど、考えは大したものね。

 でも、なんとかしたいなぁ。


「このようなモノを持つものが世に現れているようです。そのことを、ぜひ王様には知っていただきたく馳せ参じました。どうか騙されぬようご注意ください」


 兵士たちの手前もあるし、思っていることとまるで正反対のことを言っているが……どうか伝われ!


「しかと承知した。英雄殿の来訪は、全てに優先する。いつでも参られよ」


 幼い王はそう言って可愛らしく笑った。

 あ、もしかして、私の本当の気持ちは伝わった?

 いつか一対一で話してみたいわね……王である限り無理かもしれないけども。


 戻ってトータ姫にこの話をすると、やっぱりね、と言われた。

 もしかして姫も意外に切れ者かもしれないわ。


 というか、私が一番モノを知らなかったのかも……。しょせん、ただの庶民だしなぁ。


お読みいただき、ありがとうございました!


ブックマークなどなど、まことにありがとうございます。

更新の励みとなっております!


引き続きよろしくお願いいたしますm(__)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ