第15話 像
部屋に戻ってトータ姫に聞いてみた。
この国の紋章と、この亀の像を組み合わせたもの、作れないかしら?
トータ姫は私の提案にプンと怒ったような顔をした。
「あたくし、職人さんではないことよ」
と言いつつ、指をくるっと回すと、亀を両側から掴むようにした2体の龍の像が出てきた。
「わあ、すごい」
「実はね、わたくしの王家は穏健派で、できれば一番近いこの国と仲良くしたいと思っていたの」
近いってことは……。この国ってそんなに広かったのね。はるか南にある海まで領地だったとは。
「今まで密かにこの国ことを調べていて、人の生態だとか、街だとか、かなり知ってはいたの。
信じる神は違うけども、道徳とか法とかは実に似通っていることに驚いていたのよ。
わたくしたちの国も文明は決してヒケは取らないけども、建築とか娯楽とか優れたものがこの国にはあるということも。
そういう情報が世の中に流れるたび、なんとかお互いに仲良くなる方法はないかと、これまた一部の者がこういったものを作り出してね……」
そう言って、像を指さした。
「もちろん、強硬派もいて、決してこれがすんなり認められるものではないわ。中にはそれで喧嘩が起きることもしょっちゅうよ。ただ、最近は少しずつだけど、この国のことを学びたいと思っている人たちが増えていることは間違いなかったわ」
はっと気づいた。
「もしかして、あなたの国を襲ってきたのって、その強硬派の大元じゃないのかしら?」
トータ姫の顔が曇った。
「そう……かもしれないわね。あ、もしかしたらアイツが……」
聞けば、王族の中に強硬派がいて、この話になると決まって激高する者がいたという。もしかしたらそいつらが裏で手を回したのかもしれないとのことだった。ただ、そこまで力があるとは思えないけども、とも言っていた。
「まぁ、それも調べに行ってみるわ。それよりまずはこの国だけども……」
ダメもとで行ってみるかな。
「一緒に行く?」
トータ姫に言ったが、
「また置いてきぼりにされるのはイヤ!」
と言ってふくれた顔をした。何度も頭を下げて謝る。可愛らしい顔で笑った。
「冗談ですわよ、じょ・う・だ・ん。もう忘れましたわよ」
特に怒っているようでもなかったが、今回はやめておきますと言われた。
そして私はウサギのぬいぐるみに着替え、城に向けて飛び立った。
お読みいただき、ありがとうございました!
ブックマークなどなど、まことにありがとうございます。
更新の励みとなっております!
引き続きよろしくお願いいたしますm(__)m