第14話 邪教
翌日、トータ姫から詳しい話を聞いた。
ここからはるか南にある海の海底に国があること。
襲ってきたのは羽根の生えた黒い人型の集団であったこと。
途中で気を失って、気づいたらこの城の前にいたこと。
国の人々がどうなっているか全くわからないということ。
ふむふむ。とにかくひとっ飛びして見に行ってあげたらいいのかしら。でも、海底の国ってことなので、そんなところに潜れるのかしら。
「もちろん、タダでとは言わないですことよ」
トータ姫がその小さな指を立ててふっと回した。小さな亀の置物が出てきた。
「これを街の入り口に置けば、もう誰も襲ってこないわよ。あ、ただ、わたくしたちの街を襲ってきた者たちには効かないかもしれないけども……」
だとしても、これは助かる。あ、メヒスキの町にも欲しいわね。
「お安い御用ですこと!」
もう一度小さい指をくるっと回した。
ああ、でもどうやって置いてもらおうかしら……。
私は入り口の門番のことを思い出した。
彼ならなんとかなるかも……。
そう思ったが、事はそんなに簡単ではなかった。
「これは邪教のシンボルではないか!」
ゴードンさんに、ちょっと出かけてくると言うやいなや、私の手に持ったものを見つけて叫ばれた。
「あ、いえ。えっと……」
まずい、なんとかしないと。
「まぁ、邪教とかそういうものはどうでも良いのだけどもね。私も冒険者上がりなんで、そこまで熱心な信者ということでもない。それに、向こうからしたら、こちらが邪教になるだろうしな。ただ、君はそっちの宗派なのかい?」
「あ、いえ。私は無宗教です」
「無宗教か……。それもあまり人前では言わん方がいい。無宗教ってことは、邪教徒と同じく敵であることに変わりはないからな。して、その像はどうしたのだい」
「ちょっとお客さんから預かったものなのです。お返ししようかと」
「なるほど。君はこの国の者ではないから知らんかったのだな。うーん、やはり邪教徒が入り込んでいるのだなぁ。だが、悪いことは言わん、少なくともその像を人目につくところで持っていてはいかんよ」
はい、と私は言ってみたものの、考えを振り出しに戻すしかなかった。
「ちなみにこの国のシンボルみたいなものはあるのです?」
ゴードンさんは、入り口においてある王の紋章を指さした。
紋章には龍の首が二体、互いに向き合う姿が描かれていた。王家の紋章がそのまま宗派だったのね。宗教国家っていうのかしら。
いずれにせよ、ここは、もう一度王に会ってみるしかないのかしら……。
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