第10話 若き王様
「……」
ちょっと、なにこの重苦しい雰囲気……。
学校の体育館ほどもある部屋に通された。
真っすぐ赤い絨毯が敷かれており、その脇には甲冑を被った兵士が並んでいる。
奥は一段高くなっており、段の下にはさきほど私を連れに来たような、タキシードを着た人たちが何人も並んでいた。
壇上には、王座と思われる立派な椅子がひとつ。
そこに座っているのが王なんだろう。
空の上からだとよくはわからなかったが、まだ若いようだ。
20代、いや、下手したら10代かもしれない。
幼さの残るその顔なのだが、しかし、王としての威厳が感じられるのが不思議だ。
その横に立っているオバサンは歳恰好からして王の母親ではないだろうか。
私は導かれるようにして段の前に膝をつき、王とその女性を見上げるようにしている。
その女性はわたしの方をじっと見ている……というより睨んでいる感じなのだ。
「こおのうたのびまのえはでたそらのきよみうごなとすでがあったたぶかれんいしゃですあるろう」
うっ。同時に話さないでよね。ただでさえ被り物してるんで聞こえにくいんだから!
「その覆面を速やかに取り去らぬと、死罪にいたす!」
オバハンやっぱり怒ってたのね……。まぁ、ウサギの着ぐるみで王様の前に来たらそりゃそうよねぇ。
「母上、この方が我が国の危機を救っていただいたのですよ」
あ、やっぱり、かあちゃんか。
「そのお方に向かって言うべき言葉ではありませぬ」
「しかし、その恰好、非礼ではありませぬか」
「いや、なにか理由あってのことかと。助けていただいた者に罵声を浴びせるとは、非礼はどちらでしょうか」
「くっ」という声が聞こえた。
さっきひざまづいた時に、ずれちゃって前があんまり見えないのよね……。
二人がどんな顔をして喋ってるのか。
「失礼いたしました。あなたがいなければこの国、民は無事ではなかったでしょう。改めてお礼を申し上げます」
空から見た時は先頭にこの王様がいた。町も平和そうだし、活気づいているし。間違いなく有能な王様なんだろうな。
「ぜひ先々までも平和のためにこの街にとどまってはくれませんでしょうか」
なにか、ざわざわとした声が聞こえてきた。
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