相談したらムラムラしてきたので帰ります
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悠太は学生相談室にいた。
先日の初体験の話を彼のカウンセリング担当の大山ではなく、職員の黒木にしている。
大山は毎週木曜の担当である。
予約無しで来て、空いている相談員が彼女だった。
黒木は50代の女で、白のトレーナーは、シミで汚れていて化粧っ気無く疲れきった顔をしている。
要予約のはずだが、自分の事しか考えない彼の突然の訪問に、相談員は、いつもこたえてくれる。
「あそこの匂いがすごかったです。すごいんです」
「もうやめなさい。その話はもういい。その彼女もここに連れてきなさい。その子もまだ子供なのよ。後で取り返しがつかなくなるかもしれないんだから、3人でここでちゃんと話し合った方がいいと思うの」
「正直萎えてしまったんです。あんまりいいもんじゃないなっていうのが感想です」
悠太は人の話を聞かない所がある。
「いつか良いなと思える日が来るわよ」
「むせてしまうほどなんです」
「だからもうやめて。そういう話は。怒るわよ」
黒木が語気を強めた。
悠太のカウンセリング担当の大山と予約した日まで待てずに、なぜか彼女にカミングアウトしている。
「自分でも大学4年という大事な時期に何をやってるんだろうとは思うんです。でも学生生活で浮いた話はなかったし、今が理想としたものに近い気がするんです。こんなことしてて大丈夫ですかね」
大丈夫って言って欲しいに決まってる。
「まあいいんじゃない。今はそういうことは考えなくても。ステップアップしたのよ。まあ、彼女も一度ここに連れてくるべきよ」
「手にも臭いが付いてなかなか落ちない。そんな気がしました」
「やめなさい」
黒木は声を張り上げた。
相談室は2階にある。
外から学生男女の奇声、笑い声、うかれた話し声が聞こえてくる。
この種類の人間は悠太が理想とする性生活を大学在学中に過ごせているのだろう。
同時に就職活動もそつなくこなしてるはずだ。
今悠太は童貞卒業に近い所にいる。
しかし行為に対し彼自身トラウマになりつつある。
今は童貞を卒業したいという気持ちは弱くなってしまった。
初めて女と少し交わることができたので、以前と比べると余裕はうまれている。
悠太は熱心に自分の相手をしてくれている黒木を前にして、もう帰りたくなってしまった。
外を歩く女の黄色い声を聞くと、早く帰って一人でしたくなってしまったからである。
黒木の話はあまり耳に入ってこなくなった。
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