女を笑わせたら、Hしたのと同じ
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久しぶりに投稿させて頂きます。
「それヤレたよ。展望台で嫌いな人とはキスしないよ」
悠太の友人、野上は将来、自分の会社を持ちたいと、積極的にセミナーに出たりしている。
それに比べ悠太は今日の自分の服装がダサいかダサくないかで、頭がいっぱとなり、外出すると、それしか考えられなくなる。
街のウィンドーにうつった自分の姿を見逃さず確認する。
周りが、ダサいと言っていないかどうかを意識し、最も酷い時は
「今ダサいって言ったよな。このブスが」
知らない女に向かって暴言を吐いたことがある。
JR御茶ノ水駅、聖橋口改札を背にし、前方の横断歩道を渡り、地下鉄新御茶ノ水駅、右手の階段をおりた所にいくつかの店舗に囲まれたスペースがある。
大都会東京にいても、この狭いスペースの中だったら、自分達は何でもできそうな気がしてくる。
屋外の飲食スペースに白いテーブルと椅子が並んでいる。
夜21時過ぎ、他には5人組のOLがかたまって座っている。
太めの体型が多く、とても華やかとは言えない。
話の内容から同じ職場の人間同士と分かる。
悠太は最近できた友人、野上と高山に、得意な気持ちで先日の出来事を話した。
「デート中寝るのは失礼だよな。悠太とやりたかったと思うぞ」
高山は吉田栄作張りのイケメンだ。
そう言われると激しい後悔となる。
モテてるらしいが、イケメンなので納得できる。
デート中に悠太のヤリたいという気持ちを見抜かれても良かったのかもしれない。
展望台で優香は彼にキスしてきた。
これは彼からしたら相当な行動力である。
確かに、それにこたえる必要があった。
野上と高山に言われて、あらためて思う
この屋外のスペースは時間帯によっては、すいている。
地方出身の悠太はじめ、野上や高山たちグループは、好んで、この様な場所を選んだ。
先日、西日暮里に住む杉山さん宅に野上たちとお邪魔して、深夜に近くの霊園を散策した。
墓場へ散歩目的で行くなど彼らに出会うまでしたことがない。
悠太の中では肝試しである固定概念を、置き換えてしまう。
彼らと行動を共にすることにより、彼の滞っていた思考がほぐされていく気がした。
この場所から 水道橋向きの階段を上り、神保町方面に少し歩くと左側にイタリアンレストランがある。
大学1年の時、上京して初めて声をかけられたゲイの先輩、村田と帰ってた時のことだ。
レストランの前で、しゃがみ込み吐いていた20代ぐらいの女がいた。
うんこ座りで、時折前に倒れそうになる体を片手で支えていた。
「汚ねーな」
村田が毒づく。
悠太は、苦しい思いをしてる女性に対して、なんて酷いことを言うのだろうと思った。
ただ一瞬、ワインだかチーズだかモアっと臭う汚物をみた悠太は、綺麗な女性のそれであっても介抱するのは無理だと思った。
彼は他人に感情移入してしまう所があるので、自分まで気持ち悪くなったまま帰宅した記憶がある。
女が脱糞してしまったら後片付けは自分がやりたい。
便秘気味の、うさぎの様な糞だったら好きな形で、尚良し。
結局彼は目の前で女性が大便してる所を見ることができれば幸せなのである。
汗水たらして働いて、女と合法的に金銭授受をし、唾を顔に吐きつけてもらったほうが楽しく効率的に生きられる。
ただ野上や高山みたいになりたいのである。
付き合って、別れては、すぐに別な女ができ、体だけの関係の女がいて、その日知り合った女と勢いでホテルに行ってしまったり。
彼が理想とする自分の姿である。
しばらく話して、3人は水道橋方面へ歩いて行く。
坂道を上がって行くと、昔、長期間文豪が滞在し、執筆活動をしたというホテルがみえた。
この辺の雰囲気は、またガラッとかわる。
我々、田舎者は、こういった所が好きだ。
このホテル近くの地下1階にある雑貨店の商品のポップに「女の子を笑わせたらHしたのと同じ」と書いてあったのを、ふと思い出す。
非童貞の余裕の言葉ではないだろうか。
確かに童貞で天然の彼は笑われることはあっても、笑わせる程のコミュニケーション能力は無いと思われる。
強迫性障害の彼は、同じ小説や映画を何度も何度も読む観るを繰り返していた。
完璧に作品を吸収出来た実感が無いからである。
神経症が治れば多くの文学に触れ、いずれは小説家や芸人の様な言葉の魔術師に自分は変われると信じている所があった。
大学4年の彼は、まだまだ現実逃避していたかった。
3日ぶりに優香から連絡がきたのは、彼が帰宅して深夜0時になる頃である。
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