神様観察日記
空の空間で大口をあけたカオスさん
「ヒマだわ~」
自分の魂しかいない空間でカオスさんは寝そべっていました
「あまりにもヒマすぎて忙しいってなに?
いやむしろ私は何のために存在するの?
生きる意味を教えてよってちょっと鬱になりそうなくらいヒマだわ~」
瞳に現代社会の闇を抱えながら寝返りをうつと
ぽろんと肉体が生成され
「ぶえ!?」
顔面から床に着地したことによりあげられたブサイクな鳴き声
どうやら自分以外にも誰かが生まれたらしい
「いたた・・・ここは?」
顔を抑えて起き上がり隣へ視線を向けると
波打つ栗色の髪は美しい肢体を覆い隠し
肌は白雪のようにホクロどころかシミひとつない
地母神であり、大地の象徴と言われる姿が目に飛び込んできた
問題があるならひとつだけ・・・
「男かよ!!!」
どこまでも続く空間に虚しい男の声が響いた
虚しくではない、虚しい男の声が響いたのだった
「で、ここはどこなんです?」
長すぎる髪を三つ編みに束ね終えたガイアが
左頬を大きく腫らしたカオスに視線を向ける
「空の空間です・・・ほら、俺は原初の神様だから」
「カオス様は何をしてらっしゃったんですか?」
「いや、べつに・・・なんかヒマだなって思ってゴロゴロしてたけど」
「(引きこもりかな?)しっかりしてください。
私の兄弟である貴方がそんなでは今から生まれる弟たちに示しがつきませんよ」
「え!?弟うまれんの!?」
「はい、タルタロスとエロースが生まれる予定です。」
「なんでわかんの?」
「私には予言の力がありますので」
「すげえな!」
「いえ【カオス兄様のほうが凄いはずなのだが・・・】」
「じゃあ生」
「男です。」
「生まれ」
「男です。2人とも男です。」
「一部の望みも?」
「ありませんね。」
兄のくだらない質問に業務用の
とてもとてもキレイに整えただけの笑みで応えた
四角い卓を囲みくつろぐカオスたち
「残り二人も無事に産まれたな。」
タルタロスとエロースとガイア3人に視線を向けるという謎の特技を発動するカオス
「そうですね。」
それに頷き弟2人には優しい視線を向けるガイア
この微塵の優しさすら向けてもらえていないカオス
「・・・。」
タルタロスは何の感情もない瞳にもやさしさの籠った瞳にも視線をむけれず
うつむいたままだ
「扱いが雑だな!長男としてどうかと思う。弟にもっと優しくしたら?」
長男の態度に声を荒らげるのは四男だ
「と、エロースが言っておりますが?」
「男に!興味は!ねえ!!!ぎゃ!」
椅子に腰かけたままふんぞり返るカオスがひっくり返ったが謎の力で
すぐに元通り立て直す
「原初の神がクズだって、お前たちのおじさんは女好きだって教えながら子供を育てようと思うよ。」
「エロースは元気だねえ、夜もお盛んなのかなぁ???」
下品な笑みを浮かべるのに我慢ができなくなったのか
「ちょっと仕事前に試し撃ちしようかな?鉛の矢で」
四男が殺意の籠った瞳で矢を向ける
とてもとても綺麗に淀んだ色の鉛の矢だ
「冗談だってー!ほらほらはやく持ち場に行けよ。」
「持ち場もなにもあんまり人間生まれてないだろ!」
視線の先では液晶の中で人々はマンモスを追いかけていた
服や娯楽などより今は種を残すための狩りと繁殖である
愛や恋がいつ生まれるのやら
「・・・俺、ダンジョン作ってくる。」
三男は席を立ち部屋の隅へ歩き出す
「タルタロス」
「ん?」
「気を付けて行ってくるんですよ。」
ガイアの優しい言葉にコクリと頷いて
タルタロスは部屋から姿を消した
「エロース、いいこと教えてやろっか?」
「なんだよ長男。」
「それスキップ機能あるぜ。」
「マジかよ!」
四角い電子機器を手に取る
「下の方にシークバーあるから飛ばしたいとこまで飛ばしてみ」
「おお!サンキュー兄さん!はじめて兄さんの存在意義がわかった!」
ひどい言葉を残してエロースが飛び出していった
「仕事熱心な弟たちだねぇ」
「そうですね。」
「お前もだぞ、ガイア」
「え?」
「ここにいながら空と大地つくったりしてたろ、偉いぞ」
ガイアの瞳が大きく見開かれる
「どうした?」
カオスから褒められる未来が見えていなかった彼には
長男から褒められたことが嬉しすぎたのだ
「目ん玉飛び出すきかよ」
引き気味の顔を軽くはたく
「いて!」
また椅子事倒れそしてまた神パワーで元通りに起き上がる
神の力を無駄遣いするカオスにあきれながらも
『偉いぞ』
その一言を胸の奥に大事にしまうのだった
そして恐怖と憐れみを抱く
予言する自分とは違い
全てを把握しているはずの彼が
何を思いながら命を眺め続けるのか・・・
色んな神様を書いていきたい
暇つぶしになるといいな