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剣聖と暗殺者

いよいよ始まりました。

マルスとアイオロスの出会いの物語です。

王国歴167年マルス14歳。アイオロス22歳というデルバー先生との出会いから約1年後のことでした。

あん?見ない顔だな・・・。あの歩き方。一応訓練は積んでるみたいだが・・・。まだまだ素人みたいなもんだな・・・。


何を狙って・・・・っておい。ありゃ駄目だぜ・・・。

おまえ・・・。


金髪の小僧が歩いていた。

腰には剣をつけただけの軽装。

しかし、もう片方の腰には、重たそうな小袋がたくさんついた袋をぶら下げていた。

見ようによっては、そのうちの一つ。一番軽そうな小袋は、格好の獲物だった。


しかし、それは、気づかれなかった場合の話だ。

俺にはわかる。

あの小僧相手に仕事するのは、その後の人生台無しにするようなものだ。


剣聖マルス。

王国御前試合2年連続優勝者。

ちょっかい出す方がおかしい。


そして今、金髪の小僧の小袋をねらう、馬鹿な赤毛がいた。



「ちっ、めんどくせー。」

がらでもないことはわかっている。

歩き始めて近づきながら、やめようかとも思っていた。

見ず知らずの奴のために何かしたって、ここじゃ何の役にも立たない。



ただ、あれが年寄りならほっておいた。

その危険を見分けられ無いようなウスノロなら、さっさとくたばった方がいい。

その方が、幸せだろう。

生きていたって、ここじゃあ、その程度の奴は、早いか遅いかの問題だ。


いずれのたれ死ぬ。


しかし、相手はまだ子供。人生を棒に振るのは早すぎた。

そうだ、子供が知らないことを教えてやるのも大人の責任かもしれない。

そう、これは先輩としての行動。

まあ、自分でも笑える行動だった。


「周囲警戒するのはいいことだ、しかし、獲物が警戒していることもわからないとな。」

小声でそうつぶやけば、耳にいいやつなら気づくだろう。


しかし、赤毛は気付かなかった。


おいおい、あれで本当に狙うのかよ。

しかも気づかれてるの、わかっちゃいねぇ・・・・。



「しかたない・・・。」

俺もその瞬間を狙っていた。

俺のことも、もう気づかれているのが分かった。


さすがだね。

ならちょっと、けん制しておこう。


しかし、目の前の小僧はそれすら気づかない。

もう足洗った方がいい。


センスのなさは、この世界では致命的だ。

速いか遅いかの違いでミスをする。

遅ければひょっとすると何とかなるかもしれない。

しかし、早ければ・・・・。


俺は知っている。


この金髪の小僧に下手うって腕を切り落とされたおっさんのことを。

正直、害虫みたいなやつだったからせいせいしたけど、今回はちがう。


人が多く通り過ぎる。気配が分散していく。


すれ違うタイミングが問題だが、それを他人でコントロールする。

今回は後ろから狙っている。

だから、前から来るのに合わせて、意識をそっちに向けさせる。


よし、ここだ。


前から来る女の前に少し体を出す。

突如の進路妨害に、女の体は一瞬硬直した。

そこに素早く光を当てた。


反射する光は一瞬だけ、女の目をくらませた。


それで女はバランスを崩していた。

金髪の小僧の意識がそちらに向く。


馬鹿らしいほどの誘導だ。

しかし、赤毛もチャンスと見て動くだろう。


そして、赤毛の手が伸びていく。

それよりも早く俺はその手をつかんでいた。



「ぼっちゃん。まってください。ほら、まだ何にもしてねぇ」

俺は赤毛の手を取り、両手を上げていた。


案の定、金髪の小僧の手には短剣が握られていた。


「ふっ。まあいいか。おい、赤毛。おまえ、この兄ちゃんに感謝しろ。この兄ちゃんが俺の気をそらしながら、お前がするタイミングと、割って入るタイミングの絶妙な瞬間を演出したんだ。でなけりゃお前のその腕、切り落として、そのまま役人のとこに行ってたさ。」

金髪の小僧は言わなくていいことまで言っていた。


「いやいや、坊ちゃん。そんなことないです。」


精一杯の愛想笑い。

この俺の得意技。


「んー。まあいいや。あんた名前なんての?」

金髪の小僧は有無を言わさぬ顔だった。


うそを教えたら切る。

答えなかったら切る。


そんな感じを受けていた。


「へへ。アイオロスってケチなもんです。金輪際、目の前に現れませんから、どうかご容赦を。」

俺の額から、背中から脂汗がにじみ出ていた。


怖いなんてもんじゃない。


もう一刻も早く、この場から立ち去りたい。

俺はなんて馬鹿な真似をしたんだ。

こんな赤毛ほっとけばよかった・・・。


「うん、アイオロスか。じゃあ、また会った時はゆっくり話をしようか。」

そう言って金髪の小僧は笑顔で背中を向けていた。


おわった・・・・。

とんでもないのに目をつけられた・・・・。


「おい、おまえのせいだか・・・。」

言い終わる前に、赤毛の様子が変なのに気が付いた。


「おい・・・気絶すんなよ・・・・。」

まったく、とんでもないやつとかかわりを持っちまった。


3人の出会いは偶然でした。

この赤毛も、そのうちの1人です。

アイオロスはできるだけマルスとかかわらないようにしますが・・・。

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