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真実

スラムの中を歩いていきます。

アイオロスの姿を見た人たちが集まってきました。

人気者だね。アイオロス君。

スラムの中を歩いていると、何人かの顔見知りと出会っていた。

「よう、アイオロス。飯はうまかったか?」

わざと飯の話題をする奴。


「お、アイオロスじゃ、ばあさん。アイオロスのあしがあるぞ。」

おいおい、爺さん、お前さんよりは先にいかねーよ。


「アイオロス。おまえ、ドジだな。」

色んな奴が、どんどんと俺の周りに集まっていた。


ここはスラム。

ここの住人達は、自分たちとそれ以外で区別している。

そして、ここで仲間と認められたら、ここでは家族も同然だった。


まあ、中にはいけ好かないやつもいるが、それはどこの家でも同じだろう。

スラムはスラムの中で自分たちの世界を作っていた。


王都の中にあって、市民たちとは違う存在。

市民の中には、俺たちスラムの民を人として見ていない奴もいる。


貴族は仕方がない。

アイツらは、特権階級で脳がそういう形に出来上がっている。


しかし、市民は明らかに、俺たちを見ることで、自分たちはまだましだと思うようにしていた。

俺に言わせれば何も変わらない。

しかし、それを思うことで、俺たちと線引きをしている。


俺に言わせたらかわいそうな連中だった。

貴族の支配に対して、まだお前たちはましなんだ。と下を見ることで安心させられている。

かわいそうな市民たち。


まあ、スラムの人間にしても、市民をバカにすることで自分たちの境遇に目を背かされているのだから、大差はなかった。


こんな風にお互いを反目し合わせているのが、支配者だというのは、俺が男爵家で働いていたから知っているだけだ。


普通は疑問に思わない。

市民とスラムの民はお互いを認めていない者たちだった。


認め合わなければ、交わらない。

交わらなければ、何も生まれない。


もし、市民とスラムの民が交流を持ったら?

それは、新たな世界になるだろう。いいのか悪いのかわからない。ただ、今の俺に想像できない世界であることは確かだった。


未知の世界。


湧き立つ泉のように、知りたいという欲求が、俺の中にあふれ出していた。

俺はその世界にとても興味を持っていた。

今更ながら、未知というものが大好きなのだと実感した。


「まあ、そんなことあるわけない。」

俺は自分の思考に終止符を打った。


目当ての場所はすぐそこだった。


「よし、まず体を洗おう。おまえ、そこで脱げ。俺がかけてやるから。」

スラムの共同の井戸。

大抵のことはここで済む。

飲用も兼ねている大事な水源だ。丁寧に使わないといけない。

だから、よそ者には触らせないのが、ここのルールだった。

当然、危険なものを中に入れないように、警備も万全だ。



「いや、いい。体は、洗わない。」

赤毛は、必死になって抵抗していた。


「ばかか、お前。ある程度は清潔にしとかないと、病気になるんだ。病気になったら隣の奴が困る。ここでは、全体の中で個人が果たさなければならない役割がある。それはな。まず、健康でいることだ。」

無理やり手を引いて、その服を脱がしにかかった。


「いやー!」

俺は、その手ではたかれていた。


「おまえな・・・。男だろうが!人前で恥ずかしいなんて思うな。ちゃんとついてんだろうが!」

思いがけない反撃に、俺の頬はくっきりと手形がついていた。


俺の苛立ちは、頂点を迎えていた。

その感情は俺自身、今までしたことのない行動をとらせていた。


股間への攻撃は絶対にしない。


それは俺自身の矜持だ。

それをあえておこなった。ダメージがないように軽く握る形で・・・・・。


「あれ?」

俺は、そこにあるはずのものを見つけられず、2,3度場所を変えて探していた。


「おまえ・・・?」

男にあるべきものがそこにはついていなかった。

俺は、その時初めて気が付いた。


声が妙に子供っぽいとは思った。

短髪だが、髪がしなやかでサラサラだった。

握った手が、やかに細かった。


そう思ってみれば、それらしいものはたくさんあった。


「きゃぁぁあ!」

短剣が俺の目の前を通り過ぎた。

そして、その攻撃はでたらめだったが、殺気がこもっていた。


「すまん。お前はてっきり男だと・・・。」

色々なものが飛んできたが、俺はどうすべきか迷っていた。

スラムの奴らは、面白半分で、アイツに投げるものを提供していた。


「おまえらな・・・・。」

一部始終を見ていたのだろう。楽しくて仕方がないという感じだった。


「アイオロス。責任取れよな!」

中でもそう言ってヤジを飛ばす奴らは最悪だった。


「さて、どうするか・・・・。」

適当によけつつ、この先どうしたものかと悩んでいた。

視線の先には、まだ当分投げるのが山と積まれていた。


というか、増えていた。


「補充すんな!そこ、賭けんな!」

回収する俺の周りのガキどもを蹴散らしつつ、賭けに興じる大人たちを怒鳴っていた。


赤毛の少女でした。

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