**雪猫**
真っ白なユキという猫が近所に住んでいる。
ユキの毛並みは美しく、まるで本物の雪で作られているようだった。
だから、普段ユキを見掛けると、あれ? なんで雪? って思ってしまう。
ユキは当然、冬が苦手だ。
冬になると、飼い主の家で炬燵に籠って春まで出てこない。
けれど、雪は好きなようだ。
雪が降ると、外にこそ出てこないけど、窓辺で興味深そうに綿帽子みたいな雪を眺めている。
一度だけ、ユキが冬に外に出ようとしたところを見たことがある。
そろりと音も立てずに玄関のペット用のドアから出てきて、積もった雪に近づいた。
ユキの肉球が雪に触れた瞬間、ユキは「にゃっ!?」と大きく鳴いて家の中へ戻ってしまった。
でもまた顔を出して、興味深そうに雪を見つめる。
ユキは雪が好きなのかもしれない。
猫であるユキが雪に触れられる機会なんて、一生ないかもしれない。
好きなものに触れられない苦しさを考えると、胸がきゅっとした。
私は思い立って、雪でユキの雪像を作ってみた。
それは酷く不格好で、本物とは似ても似つかない出来だ。
自分の不器用さに嘆息し、空を仰ぐと、窓辺にユキがいるのを見つけた。
ユキはいつものように、雪を見つめ、そしてこの不格好な雪像を見た。
それを見て、雪は目を細めた。
猫の表情なんて、よくわからない。
気のせいかもしれない。
でも私は、ユキが雪の中にいる自分の姿を見て喜んでくれたかもしれない──なんて、思ってしまうのです。
この季節はあまり、猫を見ません。
残念です。