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勇者VS魔王……の配下(非戦闘員)  作者: 黒江
第六章 勇者VS魔王の配下(最後の戦い)
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第六章05 勇者包囲網

 勇者リザとの王都決戦開始から遡ること5日前。

 魔法戦術団の所属営舎の一室で、ある会議が行われていた。


「……というわけで最前線での配備は叶わなかったが……魔法戦術団われらはこの王都で勇者を迎え討つ。何か質問はあるか?」


 褐色のダークエルフ、魔法戦術団副団長を務めるロゼがそう言って廻りを見る。この部屋には今ロゼを含め7人の魔法戦術団構成員が集結していた。誰もが部隊の隊長を担う実力者達揃いだ。


「前線に出れなかったのは仕方がないにして、よく王都を戦場にする事を認めさせたのぅロゼ」


 一際体格の良い褐色肌の大男がロゼに話しかける。男の名はダイン・A・モンド。魔法戦術団第四部隊、通称『土蜘蛛衆』を纏めるオーガ族の棟梁だ。前団長であるミランダとは同期であり現在の魔法戦術団では古参の魔導士で、部族では巫師シャーマンと呼ばれている。


「そうあたりはゲイルが上手くやってくれましたよ。……もう魔王軍われわれもなりふり構っていられないということですよモンドさん」

「なるほど、承知した。……それとなロゼ、お主はもう副団長なんだからいつまでもわしにさん付けはしなくてええんじゃぞ。もっと堂々としておれ」

「あっすみません……中々慣れなくて」


 最年長という事で本来ならモンドが副団長を務める立場なのだが、モンドと団長のミランダは副団長にロゼを推薦しモンドはその補佐という形で今はロゼをサポートしている。ロゼにとってミランダ同様モンドは頭が上がらない存在なのだ。


「うおおー!この作戦必ず成功させミランダさんの仇を必ず討ちやしょう!ロゼの姐さん!」

「ああそうだなカズ!団長を倒した落とし前……きっちり勇者やつに払わせてやるぞ」


 二人の間に割って入ったこの声のデカく全身刺青だらけの無駄に暑い男はカズ・バーナー。亡きミランダに代わり魔法戦術団でも荒くれ者が犇き合う一番隊『炎舞連合』の総長を務める魔導士だ。全身に施された刺青はそれ自体が付与魔法であり戦闘時にはその刺青から炎を作り出し敵を焼き尽くす。まだ若いが隊長を務めるあたりその実力は折り紙つきだ。若さ故に真っ直ぐすぎて自分を曲げられない所が玉に傷か。


「カズうっさいの……姐さんの声聞こえないから少し静かにして欲しいの」

「レン!いいじゃないか!この士気と気合が作戦の成功に繋がるんだぜ!?うおおー!やってやるぜー!見ててください団長ー!」

「……うっさいの」


 部屋の端でカズの大声に嫌そうな顔を浮かべているのはニ番隊『水月党』のスイ・レン。若くして隊長を任せられた女傑だがテンションは低め。本気を出せば王国随一の水魔法を操る大魔導士なのだがいつも気怠そうに隊員達が担ぐ神輿の上に凭れ掛かっている。隊員達からの愛称は『姫』でその結束力はもはや崇拝に近い。カズとは同期で度々暴走する彼を止めるブレーキ役だ。本人はその役を嫌がっているが。


「姐さん、ちょいと小耳に挟んでおきたいことがありやす」

「どうしたナナヤ?」


 ロゼにそう進言したのは三番隊『風車』のナナヤ。風魔法の使い手というだけでなく、精鋭騎士団等他の組織とも独自の繋がりを持ち、そのパイプ役として活動する獣人族の魔導士だ。実家は菓子屋を営んでいてそれなりの知名度もある。


「モズさんの所で調整中だった例の物(・・・)が戻ってまいりやした。いつでも実戦で使えるとの事です」

「おおそうか!あれらを使えば更に市街戦を有利に進めることが出来るな!これで勝つる!」

「まぁ……精鋭騎士団あいつらが突破されん限りうちらの出番はないんやけどねぇ」

「それを言ってはならんぞユキメー!」


 盛り上がっていた所をユキメに水を差され荒ぶるロゼ。痛い所を突かれたようだ。怒り出すロゼをアンジュが二人の間に入り嗜める。


「ほらほらユキメちゃんもロゼちゃんをあんまりイジメちゃ駄目よ」

「いやいやイジメてはないんよ。……こんくらいまだ序の口やし」

「えっまだ!?」


 魔法戦術団は火水風土の四大元素を使う魔法使いを中心とした組織で、それを補佐する形でロゼの雷、ユキメの氷、アンジュの治癒を行使する隊が存在している。

 魔法とは魔力を消費して発動する『力』の具現化。本来誰もが潜在的に魔力を内に宿しているのだが、魔力の容量キャパの問題等色々な要因により魔法使いとして昇華出来る者は限られている。魔法は強力な『力』である……だがその魔法を行使出来る者達は先程述べた通り極僅かで、兵士や戦士といった武器を使い戦う者達と比べるとその数は歴然だ。その為魔法使い、とりわけ戦で使用される戦闘行為を目的とした魔法を行使する実戦的魔法使い……魔導士はどの国でも貴重な戦力として温存される事が多い。逆に魔導士が早期に前線に立つと兵力の層の薄さを露見する事になりかねない為、投入には慎重を期す必要がある。使いどころの見極めが重要な『切り札』なのだ。ゲイルがロゼ達を前線へ投入しなかったのにはこうした理由があった。


「今度こそ団長の仇を討ち、『温存部隊』などという不名誉な名前も返上するのだ!行くぞ皆の者!」

「「「「「御意!!!!!!」」」」」

「あーうちらの出番あるかねぇーあるとええんやけどねぇ」

「おまえー!」




 ファルジオン王国へお越しの際は是非王都へ!建国400年を控えた歴史ある我らの王国は煉瓦作りの建築物が数多くあり美しい景観を作り上げています。

 街の中央には亡き王妃様の名を賜った美しい公園があり国民から親しまれています。王都にはこの公園を中心に南西に商業区、南東に工業区、北西に行政区、北東に居住区と四つの地区が存在しています。

 観光で来られた方はまずは商業区へ行ってみる事をお勧めします。ここにはあらゆる王国の物流が集まりあなたの購買意欲を刺激してくれるでしょう。宿泊施設も充実しているので観光の拠点にも最適ですよ。

 仕事を探しに来られた方は工業区などいかがでしょう?王都を支える生業の数々を是非体験して見て下さい。

 学びに来られた方は行政区へどうぞ。魔法、武道、あらゆる学び舎があなたを迎え入れてくれるはずです。王都への移住届もこの行政区にある役所で受け付けておりますよ。

 そして王都へ移住したいとお考えの方は居住区を一度訪れて見て下さい。ここから見える王都の景観はあなたの心に、記憶に深く刻まれるでしょう。

 高く厚い城壁と我らが魔王様の鎮座する城に守られ、あらゆるニーズに答えてくれる王都ファルジオン。あなた様のお越しを心からお待ち申し上げております。


 ――ファルジオン王国観光組合一同




 リザは焦っていた。王都に入ってから今の今までずっと走り続けているからだ。理由は簡単。追手に追われているからである。


「いくぜぇ野郎共!勇者狩りだぁ!」

「「「「「ヒャッハー!」」」」」


 赤い炎を纏ったモヒカンの集団に追いかけられ。


「おっけーみんなーやっちゃってー。わたしの為に勇者を倒しちゃってねー」

「「「「「アイアイサー!!!!!」」」」」


 青い神輿を担いだ集団に襲われ。


「ゆくぞ者共!我らの力を見せる時よ!」

「「「「「押忍!!!!!」」」」」」


 黒い巨漢の集団に囲まれそうになったりと散々な目に合っている。つらい。

 そして空には……。


「勇者発見!各員に伝達急げ!」

「御意!」


 翼竜に乗った集団に常に監視され居場所が常にまるわかり。迎撃しようにも一定の高さをキープされあちらからは滅多に近づいてこない。ロゼには大いに戦いづらい状況が続いていた。

 リザが路地を曲がり追手をまこうとした……その時。


「あ、やばっ」


 リザが何かを踏み反射的にその場を飛び除ける。リザが離れた地面には何やら文字が書かれていて、その文字が点滅していき……。


 ボカアアアアアン!!!!!!!!


 大爆発を引き起こした。

 これは魔法戦術団が設置した付与魔法によるトラップであり、この罠が街中そこらかしこに仕掛けられていて、これもリザの行動を抑制している要因となっている。


「戦いづらい……」


 珍しくリザが弱音を吐く。それと同時にお腹も鳴る。リザは街に入る前にパンを少し食べただけで他は何も口に入れてはいなかった。それを改めて思い出したリザは目の色を変え迅速に行動を開始する。追手を振り払い、罠の発動の間合いを読み切り、安全な場所を確実に走り抜いていく。そうしてある路地へと逃げ込んだリザは追手の追撃と罠の有無を再度確認。安全を確保すると懐からあるもの(・・・・)を取り出す。それは南町アサカのパン屋ムラクモで買ったパンの一つで人気トップ10の常連、焼きたてメロウパンだ。パンからメロウ特有の甘い匂いが漂いリザの食欲を刺激する。メロウパンがリザの口に収まろうとした次の瞬間……。


 バシュ!


 パンはリザの手から離れ近くの壁へと突き刺さった。


「あ……あ……?」


 リザが呆然とした表情で壁を見ると、パンに矢が突き刺さってるではないか!そしてパンはみるみる変色していく。どうやら毒が塗られていたらしい。リザがものすごい形相で矢が飛んできた方向を見ると先程街の外で見かけた獣人がいた。


「わぁいこりゃまずい……ミカはクールに去るニャ」

「絶対に……絶対に許さないよー!!!」


 ミカの矢を跳ね除けながらリザは走り出す。……怒りと悲しみと空腹を背負いながら。




『目標、商業区から工業区3番街へ移動。尚も速度変わらず』

「了解。ここまでは作戦通りだな」


 ファルジオン王都中央にある公園で隊員からの報告を聞いたロゼは一人頷く。勇者が街に侵入してから今の今までロゼはここから隊員達へ多くの指示を飛ばしているのだ。


翼竜ワイバーンの調子も良さそうじゃないかナナキ」

『はい。モズさんたちの調整のおかげですね』


 ロゼが持つ石から翼竜ワイバーンの鳴き声が聞こえてくる。以前ロジメダイ渓谷で投入された翼竜ワイバーン部隊はそれなりの成果を出したのだが……意図せず橋を焼き落としてしまい、その事で制御に難ありとされ今まで再調整が施されていたのだ。再調整を担当したモズ配下の調教師によると『エサをマハザ産の高級畜産物に変えたら著しい成果が出た』とのこと。


『しかし逃げてばかりだった勇者が先刻から暴れ始めこちらにも多くの被害が出ています』

「わかった。そろそろ潮時だな。監視の翼竜ワイバーン隊を最小限残して他は例の地点まで後退。……次は我々が出る」

『御意!』


 ロゼは手に握った小さな石に話しかけるとそこから別の声が響いてきた。

 これは共鳴石という石である特定の地層からしか発掘されない貴重な鉱物だ。この石は『ある特定の音を反射する』という特徴があり専門家達が研究していたのだが、最近の研究結果でこの石は『石同士で音を反射し続けているとその石同士でしか音の反射をしなくなる』という性質が明らかになったのだ。これを利用して離れた距離からでも言葉の疎通を行えるように調整していたのだ。言の葉を武器として使う魔法戦術団にはうってつけの通信手段といえよう。


「あら、もう行くんえロゼ?」

「ユキメ戻って来てたか」


 支度をするロゼの前にユキメが姿を見せる。こころなしか衣服がボロボロになっている。


勇者あのこ、精鋭騎士団とやりあった後だって言うのにまだまだ余力あるみたいやねぇ」

「だが勇者とて人間だ。無限に体力があるわけではなかろう」

「その通りニャ」


 二人の間にミカが割り込んでくる。ユキメに負けじと衣服がボロボロな状態だ。


「ちょいとヤボ用を済ませてきたニャ……いやぁ死ぬかと思ったニャ」

「……何か根拠があるんだな」

「それを伝えにはせ参じたわけニャ」

「いいのか?」

精鋭騎士団うちらもタダで負けたわけじゃないニャ。……ほれ耳を貸すニャ」


 ミカは手を招く仕草でロゼを引き寄せると小さな声で耳打ちする。


「……本当なのか?」

「嘘は言わないニャ。精鋭騎士団の名に懸けて」

「わかった。助言感謝する。……カインの仇も討てるというものだ!」

「あ、一応生きてるんでそこは心配無用ニャ。今はアンジュさんの治療を受けてる最中ニャ」

「そ、そうか。ならよし!では……来いお前達!」


 バチチッ!!!!!!


 ロゼが号令をかけるとローブを纏った魔導士達が大きな音と共に姿を現した。その数6人。ロゼ率いる魔法戦術団第五小隊『雷牙隊』の隊員達だ。


「インシネ、例の修行の成果はどうだ?」

「はっ!拙僧、鍛練により魔法の腕を更に上げましたぞ!必ずや隊長のお役に立ってみせましょう!」

「ブラスト、相変わらずの派手さだな。これからもっと派手に暴れてもらうぞ!」

「はっ!三度の飯より目立つこと、それが生きがいなもので!今回もド派手に目立たせていだだきますよ!」

「やあモグじい。腰の調子はどうだ?追跡はお前の十八番おはこ、活躍期待しているぞ」

「ヒョッヒョッ……老いぼれなりの戦い方、ご覧に入れますぞい」

「ジャッカル、お前の雷魔法と体術を組み合わせた『雷獣拳』のキレ、また見せて貰うぞ」

「はい!ロゼ様の為、粉骨砕身働かせていだだきます!」

「アーク!ボール!勇者やつの首にかかった懸賞金はお前達にくれてやる!励めよ!」

「ヒュー!さっすが姐さん!」「俺達をわかってらっしゃる!」

「「そこに痺れる憧れるぅ!!」」


 それぞれの隊員に声をかけ士気を引き上げてみせる。ロゼは魔法戦術団の隊員だけでなく国民老若男女誰からも人気がある。ユキメ曰く『美人なんだけど、どことなくチョロそうな所』が人気の秘訣らしい。


「勇者を倒し再び我らの名を王国に轟かせるのだ!いくぞぉ!」

「「「「「「御意!!!!!!」」」」」」


 バチンッ!!!!!


 ロゼの掛け声と共に『雷牙隊』の隊員達は現れた時と同様炸裂音と共に姿を消す。その場に残ったのはユキメとミカだけだ。


「あらもう行っちゃったニャ。もしかしてあいつらって……」

「そ、ロゼが作った最速の部隊。名前は……」

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