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初日

「……」


「京は本の匂いかぐの好きだなぁ」


「うん。教科書は小説とはまた違う匂いがするよ。新しい教科書っていいなぁ」


「隣通しだなー」


「うん。渡瀬と渡辺ってあいうえお順に席決めするとどうしてもそうなるよね。このクラス女子が1人少ないから窓際の一番後ろの席で。中学と変わらないね。そもそもまた一緒のクラスとはおも……」


「自己紹介……」


「自己紹介?」


「どんな感じで攻める?」


「攻める?」


「はじめが肝心だから」


「ちゃんとしないとね」


「こんにちは……ファックユー!」


「絶対やめなね?あっ、吉田君気にしないで……こっちの話。うん。幼なじみ」


「吉田君はどんな自己紹介する?」


「巻き込まないの。ごめん吉田君。相手しなくていいから……」


「練習しとこう」


「練習?」


「こんにちは渡瀬一平です」


「うんうん」


「なんてな……こんなことしたって皆にはオイラのこと……あんたらオイラのことがみえるのかい!?」


「幽霊なんだ?クラスのみんなにはみえちゃうんだ?」


「そう。意味ねぇの」


「みんなに見えちゃうとねぇ。こわくないかな」


「でもこのクラスの生徒しか見えない」


「あっ、ややこしい。面倒だね」


「あと教頭が見える」


「教頭が一番こわいだろうね」


「窓際の席って冬寒いよな」  


「どうしてもね」  


「窓際で読書するの?」


「うん」


「かっこつけてー」


「必然的にそうなっちゃうからね」 

 

「俺たち窓際高校生だよな」


「よくない感じするね」


「何をしても窓際高校生」 

「そうなるかな」


「窓際高校生!ひったくり犯から老婆をまもる!」


「新聞の見出し?」


「そう」


「窓際高校生いらなくない?高校生でいいじゃない」


「窓際高校生!天ぷらうどんたべる!」


「……ん?そんなことまで記事になるの?窓際高校生」


「なるよ。売り出し中だから」


「売れっ子なんだ?」


「あっ!座ったままロッカー開けられる!」


「楽でいいよね。コロ助。あまりイスを後ろに傾けると……ほら倒れた!」


「うおぉぉぅ……」


「あーあーあー……大丈夫?」


「コブいった」


「コブいったかー」


「京も気をつけろよ」


「んー……僕はほら。腕を伸ばせば届くし」


「うわー!ムカつく!背の高い奴は得ばかり!」


「そうでもないよ。コロ助も椅子ごと後ろに移動すれば危なくないよ」


「うっ……君はだれだい?僕は記憶喪失になってしまったようだ……頭を強く打ったことにより」


「倒置法?記憶喪失の設定遅いよ。京って言ったじゃない」


「あんたオイラがみえるのかい!?」


「うわー。めんどくさいめんどくさい」


「こんにちは教頭です」


「あっ。教頭でしたか」


「教頭はロッカーに頭を打って死んだんだよ」


「ほほう」


「だから俺が見える」


「なるほど」


「窓際高校生VS幽霊教頭」


「クラスメートにも見えるんだよね?」


「うん。全員死んでるから」


「えー」


「全員ロッカーに頭をぶつけて」


「バカすぎない?僕たち。ストーリーぐちゃぐちゃだよ」


「ここは地球だったのかー」


「コロ助。先生の話はじまる」


「おっと……いよいよ本番か……」



……


 ……

  

  ……


「まさか自己紹介がないとは……」


「残念だったね」


「こんな日もあるかぁ」


「だね」



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