ノスタルジック
◇ 懐古 ◇
久しぶりのベットでぐっすり眠った。
翌朝は、セラは仲間との連絡の為外出した。
僕はというと、例の悪神の建設物を見に行く事にした。
歩いて程なく例の建設物の近くに着いた。
茶屋?
観光客用の茶屋があった。
この町に着いてから、少しばかりの金を貰っていたので店で団子とお茶を頼んだ。めっちゃうまい。そして、日本の味だ!
給仕の女の子も、ノースリーブの巫女服といった、僕の趣味にドストライクな格好だ。脇が良い。非常にいい。セラもきてくれないかな?
そして、建物を見に行く。
それは、社であった。
剣での傷跡だろうか、非常に傷んでいる。
戦争の跡が生々しく残っていた。
それでも、建築物の構造は綺麗であった。
昔は供物が多く置かれていたらしい。
一度だが、鍋の祭りをやったらしい。
その味は、非常に美味で、膝の悪い老人がそれを食べて、翌日は三里を歩いたと伝わる。
何だか懐かしい匂いがする。
自分でも理解はできていない。
柱に触れてみる。なぜだろう、頬に涙が伝わる。
少しの時間のつもりが、だいぶたっていたのだろう。
「そんなにその柱が気になりますか?」
後ろを振り向くと、巫女服の女性が立っていた。
栗色の髪。僕のそれとよく似た少し癖がある。
セラのような神秘的な美しさではないが、どこか春風の様な可愛さと美しさが共存したような魅力のある女性であった。
何だか懐かしい匂いがする。春の匂い。
先ほどの茶屋の娘とは違う、本格的な巫女の服であった。
優しく笑いかけてくる。
少し恥ずかしさに顔を赤らめ、涙をぬぐった。
「ええ、分からないんですが、なんだか懐かしくて」
「そうですか。申し訳ありません。お呼び止めしてしまって。私も何故だか分かりませんが、貴方から懐かしい匂いがするように思えまして」
もう少し話がしたかったのだが、茶屋の娘が慌てた声で女性を呼び出す。
「ルナ様、大変です。また奴らが着ました!」
「それでは、ごゆっくり」
そういって、一礼すると慌てるでもなく茶屋に向かう。
凛としたその姿を見送る。
柱のぬくもりをもう少し感じていたいが、仕方がない。
茶屋の方では、こわもての兄さんたちが十人ほどいた。
「こんな悪魔の施設があるから、町は良くならないんだ」
「そうだ、そうだ。早く取り壊せ!」
「ルナさんよう、うちで働いてくんないかな?」
「良い体してんだからさ、客付きもいいと思うんだ。何なら俺が囲ってやるからさ。不自由させないからよう」
「お断りします」
冷めた口調で、言い放つ。
「これがあるからだろ?」
【フレイムアロー】
巨大な火の矢が、木製の塀に激突し、延焼させる。
茶屋の女の子は「ひぃっ!」といって怯えている。
ルナは、一瞬眉を動かすが、動じない。
ルナが動けば、女の子が危険にさらされるからだろう。
僕は無力だ、でも、ここでこの人たちを見捨てるほど鈍感でもない!
ええい、ままよ。どうせ失われた命、ここで捨てるのも一興!
胸の小瓶を握りしめる。
父さん母さん少しでいい、勇気をください。
そして駆け出す。




