離脱
◇ 離脱 ◇
犬を引いて外に出てきた。
肌寒さはそんなには無いが、ネグリジェの彼女は少々寒いだろう。
少し歩みを早めると、彼女の首をリードが絞めてしまう。
たまに、苦悶の声が漏れるが、緩めると何故か睨まれる。
すれ違う、衛兵はひそひそ話をしている。
「初日からああいうことする奴初めてだぜ」
笑われている。恥ずかしい。ネグリジェで四つん這いになっている方が恥ずかしいはずなのに、彼女は堂々としている。
「お前の名前を聞いていなかったな?」
一応、命令口調を続行する。
「セラフィヌと申します。セラとお呼びください。ご主人様、ぐっ!」
力加減が分からずまた引いてしまう。
門の裏手に、すぐには向かわず、少し遠回りしてから、そこに着いた。
「穴は?」
「ここにございます。魔術の発現は控えてください。彼らに感ずかれます。少し掘り返せば穴につながります」
それでは、早速二人で掘り返していく。
暫くすると、穴とつながった。
人一人がやっと通れるほどの小さな穴。
早速セラから中に入れようとした時、後方から声をかけられる。
「旦那。何してるんですか?」
衛兵の一人が声を掛けてきた。
完全に混乱してしまった。
頭が全く働いていなかった。
「この雌犬が、もよおしようでね。ここでやらせようとして穴を掘ったのさ」
非難がましい目で、雌犬ことセラは睨んでいる。
リードを引き、躾を行う。苦悶の表情に変わる。
「さあ、マーキングしろ!雌犬が!」
平手で尻をはたく。
「はああぁあぁ」
熱い息を漏らした。
エム字開脚をしたセラは、プシューと勢い良く、金水をだす。
少し匂いが充満する。暗くて大事なところは見えないが、衛兵の松明に移る彼女の顔は、陶器の様な白さから、松明より赤々としているのが見て取れた。
「旦那、あんまり汚させないでくださいね」
あきれたように、衛兵は離れていく。
「危なかった……」
「ご主人様は、ド変態です」
弁解はしない事にした。
脱出後もしばらくは口を聞いて、もらえなくなった。
ある程度進んだところに、綺麗な湖があったので、セラは着替えをした。
黒の造花のついたベール、紫のドレス、黒いタイツ、黒のヒール。
旅には不向きな格好であるように見えたが、特に突っ込まなかった。
「それでは気を取り直して行きましょう。ド変態の虫けら様」
「はいはい」
そんなやり取りをしていると、後方から獣の唸り声が聞こえた。
「いよいよ出てきましたね。ちょうどイラついていた所です」
目視で、五体ほどの大きめの狼が草むらから現れた。
【スカルナイト召喚】《スカルナイトを召喚》
骨の戦士を三体召喚する。
【デスパレード】《使役しているアンデッドを強化》
骨の戦士たちが強化された。
「お願いします」
いろんな負の感情が詰まった言葉だ。
カタカタと歯を鳴らす。
カシャンカシャンと金属のぶつかり合う音。
大狼がスカルナイトへ攻撃を加える。
しかし、スカルナイトにはあまりダメージを与えられない、スカルナイトが剣を振り抜く、狼に深い傷を負わせる。
三分ほどで決着はついた。
当然スカルナイトが勝利をおさめた。
「あまりストレス発散にはなりませんでしたね」
「怖い事言わないでよ」
セラがキッ!と睨んでくる。
「ストレスの原因様が、なんですかねえ」
怖いんですけど