外出準備
◇ 外出準備 ◇
夕食は、六時くらいにすました。
その後は、宮殿の散策に出かける。
たまに部屋の前を通ると、嬌声が漏れてくる。
転移者がノリノリでヤっているのだろう、飯の事も忘れているようだ。
他の転移者にも情報を伝えた方がいいのか。
いや、伝えるのはやめよう。彼らはこの宮殿にいる限りは恩恵を受けられる。
そして、情報を伝える事は、計画の成功率を下げる事になるだろう。
逃走の成功率を上げるには、この宮殿の構造を覚えた方がよいだろう。
東京ドームくらいの大きさはありそうだ。
それなりに給仕の数もいる。
衛兵とは、時折すれ違う。
武装は短槍、建物内部でも外でも使えるように、長槍ではないようだ。
他にも、試験管の様なモノを持っている。
回復薬か何かかな?
おもて門には、数人の衛兵がおり、それ以外でも巡回している。
宮殿には、噴水が設けられている。
太陽が沈み終わり、月が輝きだした。
地球と変わらない夜が訪れる。
魔導灯により、噴水はライトアップされて、なかなか幻想的である。
少し歩き、裏手に回ってみた。どこに脱出穴があるのか不明ではあるが、衛兵の数が少ない事がわかった。
今回の転移者はなかなか素直に宮殿からでないので、警備(監視かな)も手薄の様だ。夜の散策をしている僕は、彼らにとっては数日でいなくなる人間であり、特に興味も示していない。
そろそろ八時に近づくので部屋へ戻ろうとした。
その途中で、サラリーマン男、村上君が例のメイドに声を掛けている。
「おい!お前俺の相手をしろ!」
「……」
まるで、陶器の人形の様だ。
目で拒否の意思を見せている。
しかし、逆らうこと自体は立場としてできないようだ。
立場的に同等である僕なら止められるだろう。
「村上さん、その娘は、これから僕が相手をしますので、勘弁してください」
そう言って、彼女の腰に手を回し、彼から引き離す。
「ちっ!俺の方が優秀だぞ!終わったらさっさと俺のもとに連れてこい」
強大な能力を持つと傲慢になるのだな。
「申し訳ないが村上さん、この娘以外とヤるつもりは無いよ」
僕の部屋の中までエスコートする。
「意外とモノをはっきりという所もあるのですね」
「まあね」
「まあ、彼の精を受けるのも、私の帝国には有用という事もありましたが」
なんだかなぁ。
「それが望みなら、計画の時間を変更するかい?今からあっちに行けば、いの一番で、君の相手をすると思うが」
「お気遣い結構です。あの方の精を受けるくらいなら、貴方様の汚らしい精で蹂躙されたほうがいっそ清々しいです」
「まったく……。先ほど見てきたが、確かに裏手は警備が薄いようだね。この宮殿を抜けた後はどうするんだい?」
「それについては、ご心配なく。それとこの宮殿は帝都から少し離れているので、人手が不足しております。気づかれても、追ってはこないでしょう。それより、野生の魔獣に気を付けなければならないと思われます」
「了解したよ」
「それでは、これをお持ちください」
そういわれて、荷物を渡される。
「何だいこれは?」
「私の着替えでございます。ちなみに下着もございます」
「ばっ!」
何か持ち方が、少し変になってしまった。
「それでは私は着替えてきます」
そう言ってもう一つの荷物を持って風呂場に向かう。
「覗いたら命はないですからね」
「それは了解しているよ」
そして、スルスルと服を脱ぐ音がして、かなり緊張する。
そしてしばらく経ち、黒いレースのネグリジェを着た彼女が現れた。
胸の大きさもあり、すごくセクシーな感じがする。
そして驚かされたのは、首輪を付けている、リードをこちらに手渡し、平然といった。
「準備ができましたので、行きましょう」
何の準備だよこれ。
「貴方様が、私を散歩プレイで野外まで誘導してください。今だけ貴方様の犬に成り下がります。ワン」
四つん這いで、見上げてくる。
可愛い、そしてエロい。
「ではこちらの荷物は?」
「そちらは、普段着です。それとも、アムステルダム帝国まで、私を犬として引きづり回すのですか?変態ですか?体は貴方様に従いますが、心までは負けませんよ。ワン」
「なんの話だよ。心まで犬に成り下がってるし。納得いったから僕をからかうのはやめてくれ」
「中々におもしろいものですから」
無表情でそんな事言わないでね。
頭が混乱してくるから。
「ではいくよ」
「演技力が微塵もありませんね。命令口調でお願いします」
「楽しんでないか?では、行くぞ!」
「ワン!」
無表情に、ワンオクターブ高い声音で高らかに鳴く。