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刀名人
昔々、山奥その辺鄙なところに赤茄子峠という峠がありました。
その峠には恐ろしい化け物がひそんでおりまして、さらわれた村人を助けようと、その化け物を退治しに赤茄子峠に足を踏み入れるものもおりました。ところが、赤茄子峠から帰ることができたものは指で数えるほどだといいます。その噂からか、赤茄子峠にはてっきり人が行かなくなりました。
さて、隣の村にそれを聞いて黙ってはいられない者がおりました。その者は、腕のある猟師をことごとくその餌食としてしまうような化け物を、刀片手にいともたやすく仕留めてきたのだといいます。さあ、刀ひとつ、その刀さばきの名人は赤茄子峠へと足を向けましたとさ。