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WIP 33/32 シャルロットの日記(エンディングムービー)

 私が彼女と出会ったのは、もう三年も前になります。


 最初、タスと名乗り、自分のことを〝さん付けしろ〟と彼女が言った時は、これからの関係に一抹の不安を覚えたものです。

 しかし、それから起こった事件の数々は、私の抱いていた不安はなんて軽いものだったのだろうと後悔するぐらい、危機と不思議の連続でした。


 領内の村が襲われ――

 女王陛下の命で戦地へ向かい――

 宰相と戦い――

 勝利しました。


 そして、色々な人との出逢いもありました。

 ネージュは、今では騎士団長として立派に認められています。

 背も私より高くなって、武装も、フライパンから普通の鎧になりました。

 お母様の形見である大剣は、未だに使い続けていますが、今ではもう、軽々と片手で振り回せるまでになっています。

 彼女に三年前の、内乱に発展するところだった戦争のことを聞くと――


「今だから言うけどよ……

 実はあたし、ついてく必要なかったんじゃねーかなって思うんだよ。

 ほっとんど活躍できなかったし……

 あたしがいなくても万事うまくいってたっていうか……

 まあ、いい経験させてもらったのは本当だから、あたし側にはついてく意味はあったけどな。

 ともかく修行の必要は、まだまだありそうだ。

 戦争はねーだろうが、あってもいいように鍛えておくぜ。

 ……なにが起きるかわかんねーからな。生きてる限り」


 少し恥ずかしそうに、そう語ってくれます。

 確かに、あまり敵を倒したりできなかったけれど、彼女の意見や知識は、旅において大いに役立ちました。

 彼女がいなければ、戦術知識や野営知識、村との交渉などは、うまくいかなかったでしょう。

 これからも私の騎士団を率いる団長として、頼りにさせてもらいたいと思います。


 ヤイヌは、今も旅暮らしをしています。

 彼女は王宮が黄金でなかったことや、王都に宝石がちりばめられていなかったこと、王女様を見ても目がつぶれなかったことなどを、結構本気でがっかりしている様子でした。

 先日、旅の途中で私の領地に立ち寄った彼女と話をする機会があったので、三年前のことと、今のことをたずねてみたところ――


「得がたい経験だったとヤイヌは考えている。

 それなりに活躍もできた。

 ヤイヌの弓はまだまだ強くなる。

 可能性の提示……あの時もまだもう少しやりようがあったとは、思う。

 旅を続ける。

 まだ見ていない世界がある。

 それに。

 まだ助けられる子供たちがいる」


 なんでも、旅の目的(彼女はあくまでも世界の珍しい物を見るついでだと言っていますが)の一つには、戦災孤児の支援というものも、あるようです。

 三年前、玉座の間での戦いで、タスさんに傷を負わせてしまったことに、責任を感じているようなのです。

 ……きっと、タスさんはもう許してくれていると思うけれど。

 というよりも、彼女は〝許す〟とか〝許さない〟とか、そういうつまらないことに時間をとられるのを嫌うような気がするのだけれど。

 それでも、ヤイヌは旅を続けます。

 いつかまた、旅の途中で領地に来た時には、土産話を聞かせてもらいたいなと思います。


 オデットは晴れて、名実ともに女王陛下になられました。

 今まで以上に多忙な日々が続き――また、王宮内の派閥闘争が落ち着いて敵が減ったこともあってか、私の領地に避難されるようなことは少なくなりました。

 それでも、たまに時間を見つけてはいきなり来訪なさって、昔と変わらぬ関係で話をしてくださいます。


「不謹慎な物言いは承知で、あなただけに言いますけれど……

 戦争と内乱寸前で国が大変だった頃――

 すなわち、あなたたちと旅をしていた頃が、一番楽しかったように思いますわ。

 わたくしは、気付いてしまったのです。

 執務机で書類を書いているよりも、旅をしている方が好きなのだと……

 もう少しあの子が大きくなったら、早々に国を任せて隠居してしまおうかしら?

 冗談ですわよ。

 隠居するとしても……戦後の混乱をきちんと片付けてから、ですわね」


 あの子。

 それはもちろん、三年前の旅のきっかけとなった、赤ん坊のことです。

 今では成長して歩けるぐらいに、なっています。

 その子をオデットは、自分の子供として引き取りました。


 まだ結婚もしていないのに母親になってしまいましたわ――とオデットは言葉では嘆いていましたけれど、周囲の反対を押し切ってまで断行したことや、その表情が嬉しそうなことから、きっとあの子との生活は、大変だけれど楽しいものなのだろうと思います。


 私は――

 相変わらず、領地の経営に大忙しです。

 父は戦争が終わるとすぐに『被戦地を見て回らないとなあ!』と嬉しそうに出かけていきました。残党処理などをするのは確かに貴族の役割だと思うのですが、政務が嫌で逃げ出したんじゃないかというのが、私の見立てです。

 マルギットは父についていきましたが、アン、ドゥ、トロワの三姉妹は、相変わらず突出した才能で領地経営に尽力してくれています。

 彼女たちの才覚であれば、もっと大きな、国家経営の政務も任せられそうですし、そう進言もしたのですが(領主が領民に進言というのもおかしいですけど)、彼女たちはこの領地がいい、と言ってくれています。

 大変だけれど楽しい日々――

 それは、三年前の旅路にも劣らない、私の日常です。


 最後に。

 タスさん――三年前に、タスさんと名乗り、そう呼ばれていた少女のことです。


 彼女は一命を取り留めました。

 ただし、戦争の記憶をすっかりなくしているようで、今では奇行もなく、その代わりに奇跡も起こさず、弩の腕も突出しているわけでもなく――なんというか、普通の子供です。

 ネージュなどは〝今までは悪霊でも乗り移ってただけなんじゃねーの〟と笑っていますが、私も時折、そう感じることがあります。


 私たちと一緒に旅をした〝タスさん〟と呼ばれる彼女は。

 国の混乱と戦争を憂えた〝誰か〟が、どこか高い場所から降りてきた存在なのではないかと。


 今では、そう思います――きっと、今の彼女と、あの時のタスさんは別人なのではないかと、そのように、強く強く、繰り返し繰り返し、思うのです。


 実際、お別れの言葉も、言われた気がします。

 あの子の言うことは、いつもよくわからなかったし、あの時もまた、わからなかったけれど。

 今思えば、きっと、あれは、あの子なりの、お別れの、それから、再会を約束する言葉だったんじゃないでしょうか。

 最後の戦いのあと、最後に彼女が言った、意味のわからない言葉。


『続編の舞台は30年後』


 30年。

 長い月日ですが、幸いにもこの国は平和で、領土経営も安定してきましたから、待てるような気がします。

 その頃には、私にも子供がいたり、ひょっとしたら孫がいたりするのかもしれません。

 戦争の記憶も薄れて、人間関係が変わることも、あるかもしれません。

 でも、私は彼女のことを忘れないでいようと思います。

 タスさん。

 突如現れ、様々な不思議を成し遂げてきた彼女を。

 人間はなんでもできるのだということを体現してくれた彼女を心のどこかに置いて――

 これから先を、精一杯生きていこうと思います。

これにて完結です!

途中期間が空いてしまいましたが、ここまでお付き合いくださった皆様、本当にありがとうございました!


いただた誤字脱字の指摘、また感想についても、読ませていただいております。

が、誤字脱字の反映は年始になるかと思われますので、そのあたりご容赦ください。

感想については(自分のせいで)いただいてから間が空きすぎたきらいがあるので、今さらお返事してもいいものか判断がつきませんので、こちらでの謝辞をもって返信に変えさせていただきます。


今までご指摘、応援、ありがとうございました!

次回作も来年には投稿します(ペンネームはまた変えそうな気がしますが)ので、また見かけたら読んでやってください。


それでは良いお年を。

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