WIP 32/32 Movie End
リアル隠密のネージュによって、近衛兵たちはすべてが倒された。
遅れて駆けつけてきた(好意的に解釈するならば、宰相派の兵によって足止めされていた)兵士たちが、宰相と玉座に座っている女性を拘束する。
赤ん坊は――
城の衛兵たちがその処遇について迷っているところを、オデットが引き取り、抱きかかえた。
ヤイヌもあわやというところまで迫られたが、結果として怪我はない。
シャルロットは、タスさんの服を脱がせて傷口に薬草を貼りながら、必死に呼びかける。
「タスさん!
私たちの勝ちよ!
これでようやく、戦いは終わる……
長かった……長かった……?
短かったような気が、しないでもないけれど……
とにかく、もう、戦うことはないのよ!」
タスさんは答えない。
血を流し、四肢をぐったりと垂れさせ、目を閉じたまま、ピクリともしない。
「タスさん?
……返事をしてよ、タスさん。
勝ったのよ、わたしたち。
それなのにこんなのって、あんまり――」
ふと、か細い声がタスさんの口から漏れた。
シャルロットは慌てて耳を近付けた。
「……え?
タスさん! 生きているのね!?
なんで何も話してくれないの!
心配するでしょ!?
……え、『MovieEndしてるから動けない』?
また不思議な言葉を……」
MovieEndとは、『もうそれ以上操作はしませんよ』というようなことを示す言葉だ。
TASにおいて、最後に操作する地点が必ずしもエンディング直前とは限らない。充分な乱数調整ができていれば、最終決戦の半ばから操作を手放して、あとはNPCに任せるという場合も多々あった。
つまり、瀕死の重症を負っているのは確かだが――
動かないのは、動けない以上に(TASにとって)重要な意味があったのだ。
「……とにかく、やることが色々あるわ。
私たちの戦いは終わったけれど、まだ人生は終わっていないもの。
あなたは……平和な領地で眠らせておくには惜しい人材だけれど……
でも、無理に戦うことも、もうないのよ。
オデットやトリスタン様、お父様が、きっと平和な国にしてくれるわ。
だから私たちは、領地を栄えさせて、帰りを待ちましょう。
……ってタスさん。
〝領地を栄えさせて〟のあたりで呼吸まで止めるのやめてくれないかしら。
……え、何ですって?
『NKT』?
えぬけーてぃーって何かしら……
……うん?
あなた、今日は今までになくよくしゃべるわね……
でも、悪いけれど、声がか細すぎて、はっきり聞こえないわ。
それにまた意味のわからない言葉だったし……
今は体を休めて、また後で、いっぱいお話しましょう。
着せ替えもしましょう――って!
――タスさん!?
タスさん!?」
シャルロットがタスさんの肩をゆさぶる。
しかし、反応は、もう、なかった。
ゲームは終わった。
これから、少々の混乱と、外国との戦争がありつつも、国は平和になるだろう。
だから――タスさんが目を開けることは、もうない。
戦いのない場所に、ツールアシストは必要ないのだった。
次でラストです。




