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しあわせまにゅある  作者: にゃー
7/10

赤神さん、心に決める


「赤神さん、新商品のポップってどこにありましたっけ?」


「あ…え、えっとね、パソコンの裏にまとめて置いてあるはずだよ。」


私はいまバイト中です。

高校一年になってすぐはじめたので私は結構な古株になっていたのです。


不思議と前ほどバイトは億劫じゃなくなりました。

最近は従業員の方とも少し話せるようになったし。


「なんか最近、赤神さん変わりましたよねー。」


そう…たぶん私が変わったんだと思います。


「そ…そうかな…?」


「変わりましたよー。

俺が入ったばっかのときの赤神さんははなしかけづらかったもん。」


この人は同じバイトの従業員の白鳥くんです。

確かに最初は私に対してあまりいい感情がなかったみたいだけど、最近はちょっと話せるようになりました。

けども…


「へへへ…私人見知りだし喋るの得意じゃなかったから…ごめんね。」


「いやいや、いい変化ですよー。

あれですか?彼氏でもできました?」


「え…?い、いや…私なんかに恋人ができるわけないよ…」


「そうでもないですよー。

赤神さん、普通にしてればもてますって。

かわいいし。」


なんて感情のこもってない言葉でしょう。

きっといろんな女の子に言ってるんだと思います。


私は白鳥くんのこのイケイケ感が苦手です。

普通ってなんだし…


私にはかなぎくんくらいなヘタレがちょうどいいのです。


「ちゃんと言葉に心を込めないと分かる人にはわかっちゃうんだからね。」


「はは、手厳しいですね。」


「へへへ、年上のお姉さんをバカにした罰だよ。」


「年上って…ほんの半年じゃないですか…」


「と、年上は年上だよ!」


ほんと普通に喋れてますね、私。

高校卒業した後、不安しかなかったけど結構上手くやっていけるかもです。



「かーがーみんー!!!」


「わひゃっ!!」


「ひひひ、相変わらずいい反応だ!合格!」


「は、はるか?それにかなぎくんも?!

なんでここにいるの?!」


「かなぎのストーカー能力で場所は把握してたからね!遊びにきたよ!」


「……かなぎくん……。」


「あー…ごめん…。もう先に謝っとく…」


なんか最近かなぎくんがへこんでるのがかわいいのです。

さっきまでかなぎくんははるかと二人でいたんだ……あれ?

なんか嫌だな。


「いらっしゃいませー。

赤神さんの友達ですか?」


「もち親友だにゃ!だれ、あんた?」


たぶん白鳥くんのセリフだろうな、それ。


「赤神さんの彼氏です。」


「ちょ…!白鳥くん!!」


「ひひひ、お前バカだろ!!」


「え…ちょ…!はるか!!」


「かがみ……彼氏いたのか………」


「もー!かなぎくん!!

信じないでー!!」


なんかもう疲れました。


「あはは、赤神さんおもしろ!

赤神さんと同じバイトの白鳥です。」


「あ…えっと…友達のはるかとかなぎくんだよ。」


すいてる時間でほんとよかったです。

仕事になりませんよ。

あ、ちなみに私コンビニで働いています。


「よし、白鳥くん!覚えとこうか。

かがみんはうちのものだから!!」


「いや、まて土浦!俺のだ!」


「誰のでもないよ!!」


かなぎくんは焦るとさらにおばかさんになるようです。

はるかはもともとです。


「赤神さんの友達面白い人たちですね。」


「白鳥くん!もういいから仕事に戻りなさい!!うちらは話しとくから。」


「…赤神さん…俺あの人とは仲良くなれそうにないです。」


「…なんかごめんね…」


「てか全然すいてるし赤神さんもう上がっちゃっていいですよ。

せっかく友達きてるわけだし。

店長には俺から言っておきますから。」


「え……さすがに悪いよ…」


「なんだ、白鳥くん。いいやつだなぁ。

よし!遊びにいこーか!かがみん!」


「………ほらほら。

はるかさんもそう言ってるし。」


ああああ…白鳥くんが怒ってますよ、はるか。


「………いいの…?」


「いいですよ。

その代わり今度俺とも遊んでくださいね。」


「それはだめだ!」


あー…白鳥くんと二人で遊んだら私、大人の階段登らされそうな…なんてね。

かなぎくん必死だなぁ。


「へへへ、いいですよ。」


「まぢで?やり!」


「か、かがみー……」


「かなぎくんがいいって言ったらね。」


「……はぁ?」


「絶対だめだ!!」


かなぎくん、かわいいです。


「ちょっと待て!

あんたは赤神さんのなんなんだ!?」


「彼氏だ!!」


「ちょっ…!えー!?かなぎくん!?」


ちょっとからかっただけなのですが…

隠す気がないのですね。


「……赤神さん…」


「ああ…その可哀想な子を見る目をやめてくれるかな、白鳥くん…」


「もーいこーよ、かがみん!

うち、もうそいつ飽きたよ。」


「さっきからなんなんですか、あんた!?」


「うちか?!さっきからうちはうちだ!」


「極上のばかだよ!!」


「なにをー!!!」


なぜかはるかと白鳥くんがケンカをし始めました。

はるかは正直者すぎるのです。


「終わるまで外でてよっか、かがみ。」


「……うん、そうだね。」


かなぎくんたちと仲良くなって九ヶ月ちょい経ちました。

この人たちに私はいろいろもらったと思います。

私自身なんもあげれてはいないのですが、

覚悟は決めました。


私はこの人たちが望んでくれている限りずっと一緒にいようと思います。

勝手な覚悟ですが私は決めたんです。

でもその前に私はやらないといけないことがあります。


「ねぇ、かなぎくん。

少しだけ私の話しを聞いてもらってもいいかな…?」


「ん?いいけど改まってどうしたよ?」


「あ、いや…まぁ…たぶん聞いてもらってもよくわかんないと思うけど…誰かに聞いて欲しくてさ…」


「……うん、聞くよ。」


「私ね、いまがすごい幸せだよ。

かなぎくんがいて、はるかがいて、西条さんがいて…いままで生きてきた中で一番幸せだよ。」


「そっか、それはいいことだよ、かがみ。」


「でもね…考えちゃうの…

私はこのまま幸せになっていいのかなって…」


「……だめなのか…?」


「うん…だめなんだ…

だから春休みに入ったら実家に帰るつもり。」


「は?え?もうこっちにいなくなるってことか?!」


「あ、い…いや、そういうわけじゃなくて…

春休み中帰るだけだよ。

私、会わなきゃいけない人がいるから。」


「……かがみ…」


「ご、ごめんね!

意味わかんない話ししちゃった!

でも不安で怖かったから誰かに聞いて欲しくてさ…。」


「……やっぱりあんまよくわかんなかったけどさ、かがみが帰ってくるの待ってるよ。」


「……ありがとう…」


「か、かがみ!」


「え?なに?」


「お、俺もいますごい楽しいよ!

かがみに会ってから毎日幸せだよ!

かがみが地元でなにがあったかはよく知らないしかがみの問題なんだろうけどさ…

お、お前がいなくなるのは…いやだから…ちゃんと帰ってこいよ…」


「……か…かなぎくん……」


「わ…か、かがみ?!」


「かなぎくん!かなぎくん……!

………かなぎくん!!」


私はかなぎくんの胸で泣いてしまいました。

嬉しいような罪悪感のようなよくわからない感情が私を襲うのです。


「私は!私が近くにいたせいで今までたくさん人を傷つけてきたよ!不幸にしてきたよ!どうすればいいかわからなくてたくさんひどいことをしちゃった!

そんな私がいま幸せで…すごい幸せで…

ほんとうは友達なんて作る資格ないのに…!

私だけ救われるなんてほんとは許されないのに………!」


やっぱり言葉にするのはだめですね。

一度言葉にすると止まりません。

かなぎくんに言っても仕方ないことなのに…

聞いて欲しくて仕方ありません。


「…いいじゃん、幸せになって。

かがみは優しすぎるんだよ…。」


「……ありがとう…かなぎくん…

でもちゃんとけじめはつけたいんだ…」


「……そっか…」


「にゃははー!!おまたせー!」


「おそいよ、はるか!

早く遊びにいこ!!」


「およよ!かがみんがいつもより積極的だ!

いいこといいこと!いこいこー!」


たぶんはるかにもさっきの話しは聞こえてました。

私の目はほんとにいやらしいですね。

はるかが見てないふりしても


「かがみんにはわかっちゃうんだよね?」


「え?!あ……うん…」


「ひひひ、最近わかってきた!

うん!さっきの全部聞こえてたしかなぎに抱きついてんのも白鳥くんと見てました!」


「あわわわわわ!あれは…ちがくて…その…」


「まぁ、そこはどうでもいいわけよ、かがみん!」


「そこはどうでもいいんだ…

どこがどうでもよくないの?」


「かがみんはうちの親友だよってこと!

かがみんが誰かを傷つけても不幸にしても殺してもだよ!

それでもかがみんはうちの親友でいる資格があるのです!!

一応確認とるけど、それでおけー?!」


「………は…はるかぁ……!」


「ぎゃっ!か、かがみん!

泣くとこじゃないよ!?笑うとこだよ?!」


「……笑うところか、土浦?」


「あ……え……えっとー…

な、泣かないでよー、かがみんー!」


「だって……だってぇ……!」


私はずるいのです。

この人たちなら私に絶対優しい言葉をかけてくれるってわかってて

期待して話したに決まっています。

心の奥っかわでそう考えていたに決まっています。


そう考えないと私も私を受け入れてしまいそうだから…

だめなんです。


私はあゆみちゃんやお母さんに会わなきゃいけないんです。

けじめをつけに帰らなきゃいけないんです。


だからいまはこれ以上甘えちゃダメなんです。












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