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しあわせまにゅある  作者: にゃー
6/10

赤神さん、むかし話


「ねぇねぇ、かがみちゃん!!

よかったらあゆみの誕生日会来ない?!」


あゆみちゃんと初めて話したのは小六の六月だったと思います。

あゆみちゃんの誕生日会に誘われたのです。


「わ、私行っていいの…?」


「もちろんだよ!!

クラスのみんなも来るからかがみちゃんにも来て欲しいんだ!」


きっとクラスの全員を誘っているんだと思います。

小学生のとき、そういう子いませんでした?

私には理解できませんね。


それでも私は嬉しかったのです。

それをきっかけに私はあゆみちゃんと友達になりました。

あゆみちゃんは明るくて人気者で本当に幸せそうに笑う子でした。

お父さんもお母さんもお兄さんも優しくてきっとこの世に不満のない子なんだって…

私とは生まれもったものが違うんだと思います。


私の家庭はひどいものでした。

いや…私が壊しました。


お父さんが不倫をするのがいけないのかもしれません。

お母さんがお父さんに内緒でブランド物を買ってたのがいけないのかもしれません。

でもそれを無邪気に話してしまう私が家庭を壊しました。それは間違いありません。


お父さんは出て行き、お母さんと二人で暮らすことになり、

夜遊びでお母さんはほぼ家に帰ってこなくなり、家賃や生活費は出すから中学生になったら家を出て行くように言われました。

そうですよね。私の目のことを知っていて一緒に暮らせるわけがないのです。


「お前はそこにいるだけで人を不幸にするんだよ!」


お父さんに最後に言われた言葉です。

私が家庭にいたために私の両親は不幸になったのです。


だから私はあゆみちゃんがうらやましかったのです。

私が持っていないすべてを持っていると思ってましたから。


「あゆみちゃんの好きな人ってだれー?」


「…あゆみは今のところそういうのはいないよ!!」


こんな会話、女の子なら普通にあると思います。

私はあんまこういう会話に参加したくありませんでした。

私はあゆみちゃんがみきちゃんのことが、

女の子のことが好きなことを知っていたからです。


私は知りたくないことを知ってしまうのです。


「ねぇねぇ、昨日のお兄ちゃんが妹を襲うってニュースみた?」


「みたみた!ありえないよね!

気持ち悪い!!」


「私もお兄ちゃんいるけど襲ってきたらと思うとまぢキモいよ!」


「あゆみちゃんのお兄ちゃんは優しいしかっこいいから羨ましいなぁ。」


「う…うん!」


私はこんなこと知りたくないのです。




私はこれ以上あゆみちゃんの知らないところであゆみちゃんの秘密を知ることに耐えられませんでした。

だから私の秘密を全部話しました。


「……え?え?…なに?

かがみちゃん、何言ってるの…?

人の気持ちが見えるって…そんなのあるわけないじゃん…。」


「………」


「ねえ……なんか言ってよ……」


「……ご…ごめんね…あゆみちゃん…」


「な、なに謝ってるの…?

あゆみにわかるように言ってよ…!」


「…………」


「……じ…じゃぁ…私の好きな人とかも…知ってるの…?」


「……うん……あゆみちゃんはみきちゃんが好きなんだよね…?」


「………ほんとになの……?」



「……うん……………」


「…ほ…ほかには………?」


「………あとお兄さんのこととか……」


「……な…なんでよ……ねえ……なんでよ…」


「ほんとにごめんね、あゆみちゃん……」


「来ないで!!!」


「あ……あゆみ…ちゃん……」


「……あ…あゆみに……ち…近づかないで……」


冬休みに入る前日のことです。


冬休みが明けてからあゆみちゃんが学校に来ることはありませんでした。


言わなくてもいいことだったのかもしれません。

言わないべきことだったのかもしれません。

でも言わないままあゆみちゃんと友達でいることに私は耐えられませんでした。

結局私は自分がかわいいためにあゆみちゃんを傷つけたのです。



もし仮に全知全能の神様がいるとしたら聞きたいです。

何故私はこんな目を持っているのですか?

何故私に人生を与えたのですか?




何故私は生まれたのですか?








小学校を卒業して私は埼玉に引っ越しました。

お母さんとも離れ、

私はほんとに一人ぼっちになりました。


友達は作りませんでした。

極力人とも接しないようにしました。

辛くはありませんでした。

さみしくもありませんでした。


気味悪がられることもありました。

いじめられることもありました。

先生にさえ無視されることもありました。

いいのです。

それでいいのです。

全部私が望んだことなのです。

人を傷つけるのも自分が傷つくのももう嫌なのです。耐えられないのです。

全部私が望んだ…ことだから…












「あかがみってば!!」


「わひゃっ!!」


「まったく…どうしたのよ、ぼーっとして。」


「……西条さん……」


「なによ?私の顔になんかついてんの?」


「……ううん、なんでもないよ。

ど、どうしたの?」


「……はぁ。聞いてなかったってわけね。」


「へへへ…ごめん…」


「ひひひ、かがみんは相変わらずかわいいね!!」


「あんたも人のこと笑えないくらい人の話きかないけどね。」


「なにをー!!!」


「かがみ、放課後はひまか?」


「え?うん、なんも予定はないけど…

みんなどうしたの?」


「お前、今日誕生日だろ?

よかったらこの後、かがみの家でパーティでもどうかなって思って。」


「え?………あ、私誕生日だ……」


「はぁ、自分の誕生日忘れてるなんてあきれるわね。」


「かがみんも忘れてたのにかなぎはしっかり調査済みみたいですよ!!

ストーカー一歩手前だね!」


「なんだよ…友達の誕生日調べて何が悪いんだよ?」


「悪いなんて言ってないわよ。

ただ、ちょっとねぇ…」


「ひひひ、ねぇ!!」


「うっざ!!」


「…誕生日……私が生まれた日……」


祝ってもらったことなんてなかったです

祝いたいなんて思ったこともなかったです

なのに……なのにこの人たちは……


「……あ……」


「ぎゃっ!!かがみんが泣いちゃった!!

よほどかなぎがキモかったんだ!!」


「え?!まぢで!?」


「あかがみ!大丈夫よ!

私たちもかなぎのことちょっとひいてるから。泣かなくていいのよ。」


「あ…え?

…そんな気持ち悪かったか俺…?」


「ちがう……ちがうの……」



一人を望んだことなんてなかったんです

さみしくない日なんてなかったんです

辛くないはずがないんです

ずっと耐えてきたんです

ずっと考えないようにしてきたんです



言葉にしちゃったら

泣いてしまったら私は脆く崩れてしまうから…

歩けなくなっちゃうから……


「ひっく……ぐす……」


「……謝りなさいよ、かなぎ。」


「え…?ごめん……」


「誠意が足りないぞ、かなぎ!」


「……ごめんなさい。」


「……へへへ、もっと謝ってかなぎくん。」


「……かがみー……」


「ひゃひゃひゃ!!かがみんも言うようになったね!!」


「へへ…ごめんね…

いつもすぐ泣いちゃって…嬉しくてつい…」


「ひひひ、嬉し泣きならオッケーだよ、かがみん!!」


「ほら、泣き止んだならいくわよ。

ぐずぐずすんの嫌いなのよ私。」


「ほら、いこーぜ。かがみ。」


「うん!!ありがとう…」




今なら言えます。

生まれてきてよかったって

だって私はいま本当に幸せなのです。




でも私は幸せになっていいのでしょうか。

幸せだと思うのと同時に私の脳裏にあゆみちゃんの泣き顔が浮かぶのでした。

























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