赤神さん、らいばるができる
二人と友達になって二ヶ月ちょっと経ちました。
二人に会ってから私は人と接することに以前ほどの抵抗がなくなったと感じます。
「ちょっと!あかがみ!
そのつら貸しなさいよ!」
だから以前だったら絶対無視していたこういう輩とも話してみようと思います。
はい、絡まれました。
このツインテールがよく似合うツンツンさんは同じクラスの西条 なおさんです。
西条さんとははじめて話します。
とりあえずこの面を貸すとしますよ。
「えっと…私になにか用ですか?」
あきらかに怒りの感情を私に向けているこの人ですが私には何で怒っているのか見当もつきません。
そしてその感情には少しの不安を含んでいるようです。
「あんた、かなぎと最近仲良いじゃない。
どういう関係よ?」
「………友達だけど…」
何となくわかっちゃいましたね。
いわゆる面倒くさいやつです。
「ほんとに?ほんとにただの友達なのね?
何もないのね?!」
「えっと…はい…たぶん西条さんが思っているようなことはないと思います。」
「ちょ…!私が思ってることってなによ!?
別に私は何となく気になっただけで…その…」
「かなぎくんのこと好きなんですか?」
「あ、あんたばか?!
そんなこと一言も言ってないじゃない!!
推測だけで物事を話すのはよくないわよ!」
あんたばかですか。
なるほど、一理あるかもです。
推測だけで物事を判断するのはあまり良くないかもしれません。
しかしですが、私のこれは推測なんかじゃないのですよ。
あなたの感情はだだ漏れなのです。
「ごめんなさい。
話はこれだけならそろそろ授業はじまるし机に戻りたいんだけど…」
「え?ああ、ごめんごめん。
……あかがみさ、良かったらお昼一緒に食べない?」
なんですと?
どこからそれがでたのか私には全然わかりません。
「え?…うん、いいですよ。
かなぎくんとはるかも一緒でいいかな?」
「だめよ、二人で話したいことがあるの。」
あー…これはもう嫌なというか面倒くさい予感しかしないのです。
というわけで今日はいつも一緒にお昼ごはんを食べているかなぎくんとはるかに断りを入れて西条さんとお昼を食べることになりました。
「…あかがみってさ、いつもお昼パン食べてるけどそんなんじゃ栄養とれないし、成長するところも成長しないわよ?」
あれ?私セクハラされました?
セクハラですよね?
というかなぜ私が毎回パンを食べていることを知っているのですか?
「……私、一人暮らしだし料理とかそういうのちょっと苦手で…」
「そうなの?朝と夜はどうしてるのよ?」
なかなか本題に入らない人ですね。
「朝は食べないし夜はお弁当とか買ってますよ。」
「はぁ?
よくないわよ、それ。
なんなら料理くらい私が教えてあげるわよ。
今日の放課後あんたんち行っていい?」
「………なんか話したいことがあったんじゃないんですか?」
「そんなのあとでいいわよ。
とりあえず今はあんたの体が心配よ。
どうせひまでしょ?行っていいかしら?」
本気で言っているんだから驚きです。
西条さんは世話好きなおせっかいなやっかいな人みたいです。
正直面倒くさい人みたいです。
でも私はなんとなくこの人が嫌いではないのでした。
「……まぁ暇ですけど…」
「決まりね!
じゃぁ帰りにスーパーよってあかがみの家に行くわよ。
あんたの栄養管理は任せなさい!」
まぁ予想はしていましたが西条さんが私の家に来ることを話したらかなぎくんもはるかもきたいって言い出しました。
「ふ、ふん!
来たければ来ればいいじゃない!
しょうがないからあんたたちの夕飯も作ってあげるわよ!」
なぜあなたが許可をだすのですか?
私の家ですよね?
まぁ、人の手料理を食べるなんて久しぶりなので楽しみです。
「ちがうって!
包丁もつときはこうよ!こう!
危ないじゃない!」
「え…えっと…こ、こう?」
「そうそう。
あら、意外と上手いじゃない。」
「へへへ…」
私にお姉さんがいたとしたらこんな感じなのかな。
「火強すぎるわ。ここはこれくらいでいいのよ。」
「……ごめんなさい、私なにもできなくて。」
「は?ばかじゃないの?
最初からできたらそれこそムカつくわ。
悔しいけど私の最初のほうがひどかったわよ。」
「え?そうなの?
こんなに上手なのに…」
「ちょっとやればこれくらいできるわ。
ほら、混ぜて混ぜて。」
「う、うん!
ありがとうね、西条さん。」
「……いきなりで迷惑じゃなかったかしら?」
なんとなくこの人のことがわかってきました。
一言で言えばテンプレのツンデレさんですね。
考えなしに突っ込んで後で後悔するやつですよ。
「気にしないで。
あそこにもっと迷惑な二人がいるから。」
「かぁがぁみーん!!
それはだれのことかなー?!」
「うぎゃっ!!」
いきなり抱きつくのは反則です。
「ひゃひゃひゃ!!
よし!うちに続け!かなぎ!」
「よっしゃ!」
「え?え?えー?!
かなぎくんはだめ!!セクハラだよ!!」
「………はい…」
ほんきなんだから怖いです。
「ちょ、ちょっと!料理中なんだからやめなさいよ!危ないじゃない!!」
「ひひひ、なんだなんだ?
なおもうちにかまってほしいんだろー?
しょうがないなー!!ほれほれ!!」
「え?!ちょっと!!
やめなさいってば!!
あははは!やめて!わきはやめて…!」
楽しいです。
友達が私の家に来てばかなことやって騒いで笑って
こういうのって普通なことなんだと思います。
でも私にはほんとうにかけがえのない時間なんです。
それにしても二人とも胸がでかいな…
そんなこんなでカレーとハンバーグができました。
ハンバーグは西条さんが作ったのと私が作ったのが一目瞭然でわかります。
「うん、形はともかく味はうまいよ。」
「うんうん!かがみんの手料理を食べれるとは幸せだにゃー!」
「………」
「さ、西条さんのハンバーグもすごいおいしいよ!へへへ、西条さんも私の食べてみてね。」
良くも悪くも本当にこの二人は空気を読めないというか人の気持ちに鈍感なのです。
「と、当然よ!!私が作ったらおいしいに決まってるじゃない!!
ほら、あかがみ!もっと食べて食べて!」
「う、うん!」
みんなでご飯を食べて片付けをして今日は解散しました。
久しぶりに美味しいものを食べれて満足です。
って思ってたらチャイムがなりました。
「あれ?西条さん、どうしたの?」
「……そういえば話したいこと話せてなかったからさ。
あがっていい?」
「…うん、いいよ。」
せっかく仲良くなれたのにな…。
「…私ね、かなぎのことが好きなの。」
「…うん。」
「あかがみはさ…かなぎのことどう思ってる…?」
「…わかんない…。
いいかも、ってちょっと思うけどこれが恋って言われるとちょっとわかんない…」
「…はぁ…まったく。
もやもやする答えね。
まぁ、いいわ。話したいことってそれだけ。
なんとも思ってなければ協力でもしてもらおうと思ったけど。」
「あ、あのさ!」
「ん?なによ?」
覚悟を決めなきゃ…
「わ、私も聞いてほしいことがあるよ…」
全部言わなきゃ…
「へー、感情が見えるのねー。
不思議なこともあるもんね。」
「うん…だから知りたくないのに人の秘密とか知っちゃったりするの…黙っててごめん…」
「は?なんであやまんのよ?
大変なのあんたじゃん。」
「……私、かなぎくんが好きな人知ってる…
かなぎくんが今好きなのは……わ…私なんだ…」
「………うん、私もなんとなくはわかってたけど……
そっか…そうなのね。」
「ごめん…ほんとにごめー
「やめなさいよ。うっとおしいわね。
私があんたの立場なら謝らないわよ?」
「………ごめん…」
「……うざ。
ってか律儀に言わなくてもよかったのに。
なんで言うかなぁ…」
「だって西条さんと友達になりたかったから……仲良くなりたかったから……」
だから隠すなんて私にはできないのです。
これで西条さんが離れていっちゃっても私には言わないなんて選択肢はないのです。
「……だったらやっぱり普通言わないわ。
まぁ、でもいいわよ。」
「え?」
「だからいいって言ってんのよ!
これからも仲良く料理でもしましょうってこと!」
「……いいの?
私といると秘密とか知られちゃうかもしれないし、かなぎくんのこととか……」
「……どっちよ…。
そろそろいい加減にしないとへこむわよ?」
「………へこむの?」
「へこむわよ。」
へこむんだ…
「…ぷ……あははははは!」
「は?ちょ…な、なにがおかしいのよ?!」
「わ、わかんない…!
でも…あはは…西条さんがへこんでるの想像したらなんかおかしくて…!」
「ちょ…
あかがみ…あんた結構性格悪いわね…。
ふふ…まったく…」
こんなに大きな声で笑ったのは初めてかもしれません。
正直なにが面白いのか自分でもわかりません。
でも西条さんの言葉を聞いて嬉しかったのは間違いありません。
西条さんがへこむのが嬉しかったんです。
「まぁ、いいわ。
これからもよろしくね、あかがみ。」
「………よ、よろしくね!西条さん!」
「気にしてるようだから言うけど
私は好きな人をとられたくらいで嫌いになるやつを友達とは呼ばないわよ?
あんたならこれが嘘かどうかわかるんでしょ?満足かしら?」
「……うん……うん…!
ありがとう…西条さん…」
「まぁ、まだ取られる気はないわ!
お礼なんて言ってくれないでくれるかしら?」
「はうあ…!!
ら、らいばるってやつだね!」
「なんで目を輝かせるのよ!?」
高校二年の七月のはじめの日
私には三人目の友達とらいばるができました。
らいばるってあれですよね。
憧れちゃいますよね。