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ヘンテコリンロボくんと花の妖精

作者: サトリ

ヘンテコリンロボくんの大冒険から読む事をおすすめします。

光一の描く絵本は暖かい物に溢れていて、優しい気持ちがこみあげてくる。


私と光一が出会ったのは五年前だ。

当時高校生だった私は少ないおこずかいから半年に一回のペースで発売される、少女小説を買いに行くのが唯一の楽しみだった。

今思うと大分運命的な出会いだったが、いつも買いにいくデパートの5階にある本屋がいつもと違って騒がしい。


それもそうだ、人気絵本作家がサイン会に来ていたのだから。


読書好きな私も光一の顔は知っていたし、お財布に余裕があったから光一の絵本を一冊こっそりと買って、サイン待ちのファンに紛れて長蛇の列にならんだ。


列の長さに比べて私の順番はすぐにまわってきた。


今も自由人な光一は当時はもっと自由人だったのか、私の番になったころには挨拶もせず、僕は疲れているんだ!!と言いたげにムッツリとした表情を全面に出していた。


当時の私は現実の作家にあってガッカリとして、無言で買ったばかりの絵本を手渡した。


光一も光一で黙りこくったままでサインをしていく。



その時だ、照明が消える独特な《ボッッ》という音が聞こえたと思ったら辺りは真っ暗になった。


昼間だったら構わないがその時は冬の夕方で外は暗かった。



客はざわついて、遠くから子供の泣き声が聞こえる。

その時私は何か見えないかと必死で目をこらしてみる。


不意に私の手が誰かに掴まれた。

その時はなぜか誰が掴んでいたかは分かっていた。


暗い場所が苦手な光一はカタカタと震える手で私の腕を必死になって掴んでいたんだ。



私は驚きと光一が急に可愛いらしく思えて、さっきのガッカリの気持ちがなくなった。



災害警報装置の誤作動で引き起こされた停電は謝罪のアナウンスとともに復旧された。



私の腕を掴むよりきっとマネージャーの溝口さんのを掴んだ方が楽な体制だったろうに、光一は片手をピンと伸ばし、机に這いつくばる変な形になっている。



私は極力平然を装い、光一を見下げた。

当の本人は余程暗いところが嫌いだったのか、無造作だった茶色の髪は鼻筋にかかり、涙の溜る瞳を見開いている。






「…………天使さま……」


しばしの沈黙の後に光一からつむがれた言葉だ。



「はい??」


驚きで頭がおかしくなったのかと思って聞き返した。

そんな私の言葉にも光一は無視してマネージャーの溝口さんに耳打ちすると、私は光一の関係者に半分拉致のような形で控室に連れていかれた。



お茶などでもてなされた後、一時間ほどして光一が帰ってきた。

控室まで全力疾走したのだろう、優男風な彼は肩で息をしているのだ。


「天使さま!!」


私は無邪気に私の手を握る彼が頭がおかしいのではなく、物凄い天然だというのがわかった。



それから、連絡先を交換した私達はことある事に食事や彼の車でドライブなどしたが、私が彼の言う天使さまから友達へ格下げされたのは二ヶ月半で、友達から恋人へと格上げされたのは三ヶ月と奇妙な恋愛をしていた。




そして、現在……。




「やっぱり、新婚旅行と言えばハワイだよね〜♪」



私達は結婚し、光一の過密なスケジュールをぬって新婚旅行のハワイに行くため、飛行機に乗っていた。



とんでもなく稼ぎの良い光一のはからいで、対して長くは感じないフライトなのにわざわざファーストクラスに乗っている。



私は結婚式の当日、彼にこんな質問をした。


「私は今でも天使さまかな?」


大真面目に聞いた私だったが、質問の馬鹿馬鹿しさにすぐに恥ずかしくなり口に手を当ててうつ向いた。



「ん゛〜〜。百合は花のユリだろ、だから今は花の妖精かなっ!!」



少し照れた様に言った彼に私はまた惚れ直してしまい、白いタキシードを着た光一を見て泣いてしまったのはつい二週間前だ。



旅行から帰ったら光一に絵本の注文をしてみようと思う。

題名は「ヘンテコリンロボくんと花の妖精」で、私は未来の私の子供に一番初めに読み聞かせるだろう。




読んで下さり、ありがとうございました。

また更新しますのでよろしかったら他の作品も見てください。

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