091 予想外の商品と気の重い話し
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第91話 予想外の商品と気の重い話し
「ん?これは・・・」
おもちゃをあさっていたら店の奥に見慣れた形の物を見つけ手に取ってみると・・・
「やっぱこれって・・・飛行機だよな?」
俺が手に取ったおもちゃは明らかに飛行機の形状・・・それもかなり古い複葉機の形状を持っていたが・・・
「まさかどこかにあるのか?イヤ・・・そんな訳無いよな、誰かが記憶からまねて作った形だけのおもちゃなんだろう・・・」
って言うか・・・もしも現物があっても絶対に乗る気にはならないな・・・飛行機って言うのはメンテナンスしないと絶対に落ちる。
ただでさえ技術が低いのを無理矢理想念法でごまかしてるような社会なのに、技術の結晶である飛行機はさすがに無理だろう・・・どこかで天才が作ったとしても、維持するために1回飛んだら何日もメンテナンスとか・・・およそ現実的な物にはならないだろう・・・
「コレならまだしも・・・」
俺は以前から気になって調べていた飛行船について考えた。
飛行船・・・こっちの世界で再現するのは不可能じゃないだろう・・・飛行機に比べ要は、空気より軽い気体を風船というか機体上部に詰め込んで下に搭乗スペースを確保できれば良いだけだし・・・構造そのものって訳じゃないが、概念はこっちの住民でも有る程度理解できるだろう・・・
(まあ、軽い気体が問題なんだけど・・・)
「色々と方策を考えたが・・・」
結局、俺の知識に『ヘリウム』の製造法なんて無かったし・・・『水素』ならどうにかなりそうでも爆発が怖いからね・・・
記憶が戻り?狩猟団で活動するようになって俺が一番不満に思ったのが移動手段だ!
近場の狩りで馬を使うのは良いとしても、遠出をした時は1週間とか・・・比較的近い街である領主町へも通常の馬車移動だと約1週間だし、そこから王都までさらに1週間とか・・・時間が掛かりすぎだろ?
そこでまず考えたのが移動手段なんだが・・・内陸国家で巨大な川もないこの国じゃ船は論外だし・・・飛行機なんてどこの空想科学小説だ?って現状で上手く行きそうだったのが自動車だったが・・・動力装置の熟成というか、周辺技術の開発や実用に耐える素材開発など難題も多くまだ実用的じゃない・・・
そこでひらめいたと言うか・・・考えた飛行船だが・・・短距離の熱気球的な物はともかく、長期利用を考えた場合どうしても不燃性のガスが欲しいが・・・俺が知る限りそんな物はないし・・・たぶん俺の知識でもどうにかなりそうな水素はメチャメチャ危険で使う気がしない・・・
「アレン・・・それが気になってるのか?」
俺が飛行機のおもちゃを手に持ったまま考え事をしていたら、嬉々として店をひっくり返すのか?って勢いでおもちゃをあさっていたケントが隣で声をかけてきた。
「ん?いや・・・ちょっと懐かしくて・・・」
「へぇ~懐かしいね・・・その変な形の・・・置物?・・・まあ、それが何だか判るのか?」
「ん?あ・・・コレね・・・コレは飛行機だよ!空を飛ぶ機械だね・・・」
「へぇ?空ってアノ空?」
ケントが外の上空に向かい指を向け俺に聞いてくる・・・
「まあ、それ以外にはないと思うけど・・・その空だよ!」
「すげ~~~!なあなあ・・・アレンの知識で空も飛べるのか?その機械って作れるの?俺も飛べるのか?いつ作るんだ?」
「あ・・・いや・・・そんなに一気に聞かれてもな~だいたい俺は知ってるけど作れる訳じゃないぞ!お前だってこの前買った弓を知ってはいるけど・・・自分で作れって言われてホイホイ作れるか?」
「え!あぁ・・・いや・・・無理だな・・・普通の弓なら何とかなるけど・・・アレは無理だ!って言うか製法なんて知らん!!」
「だろ?俺だってそれと一緒、この機会の目的やどんなことが出来るのかは知っているけど・・・それを作れって言われても無理なの!」
「そうか・・・」
あからさまにうなだれがっかりした様子を隠さないケント・・・
(つうか俺だって自分で作れるなら真っ先に作るって言ってるよ!)
俺達が店先で騒いでいるからか、店主が不安そうな顔で・・・
「なあ・・・あんたら・・・ウチの商品を買う気はあるのかい?買ってくれるなら多少は目をつぶるが・・・あまり騒がれるのは困るんだよな・・・周りの店にも迷惑だし・・・」
「「すいません」」
「いや・・・静かにしてくれるなら別に良いんだが・・・ウチの店はそんなに大した物は置いてないし・・・売れる商品もあまり無いからね・・・」
「あ!そう言えば・・・僕達はウッド村から来たんですが・・・ここにある商品を村で見たことがないのはなぜですか?」
「へぇ~~ウッド村からかい・・・そりゃ~見たことが無くても仕方がないよ・・・ウチの商品はゼンマイを仕込んだ精密機械か、そこにあるように1つ2つ買って構造が判れば自分で作れるような物が多いし・・・かさばる割に安いかそこそこ値が張るけど壊れやすい物が多いから行商には向かない品物ばかりだ・・・」
「昔からこういう商売をやりたいって夢があったから始めたけど・・・現実は厳しくて・・・安い商品はいくつか売れたが・・・生活するのも厳しくて、ここも近いうちに閉めないと・・・」
まずい・・・地雷か?なんか語り出しちゃったよこの人・・・
俺達はやっとおもちゃ屋の店主の話から解放されると、精神的な疲労から休息を求め・・・宿に引き上げることにした。
教訓・・・うかつに他人の事情に首をつっこむな!特にネガティブ思考になってる人は・・・精神的にメチャメチャきついから・・・
「何だか疲れたな・・・」
「ああ・・・肉体的って言うより精神的にきつかったな・・・」
「とりあえず風呂にでも入るか?」
まだ夕方にもなっていなかったが風呂にはいることにして、きっちり男性入浴中の札を外に掛け・・・お風呂の時間だ!
「ふいぃ~~」
「はぅ~~~」
やはり風呂は良い!本気で癒される・・・何度か湯船から出たり入ったりを繰り返していると滝のよう汗が流れていき、疲労が身体から抜け落ちていくようだ・・・
大魚亭のような色々そろった大型の施設も良いけど・・・こうした隠れ家的な宿屋もいいな~飯も美味いし・・・
ゆったりと入浴を済ませ自分の部屋でくつろいでいると・・・
「お~い、アレン君!」
ノックと共に俺を呼ぶ声が廊下から聞こえ・・・ドアを開けるとオルドさんがおり、領主館から俺に伝言があると手紙を渡された。
中を開けてみると・・・
領主館から・・・出かけていたダリルさんが戻ってくるので、明日にでも話し合いがしたいから来て欲しいと言うことが丁寧な分で書かれていた。
(ふむ・・・行くのはかまわないが・・・コレって誰が書いたんだ?)
まあ、今ひとつ判らない部分もあったが考えたって判るものでもないし、明日考えても良いか・・・
(とりあえずゴバックさんには伝えておこう・・・)
ゴバックさんとケントが使ってる部屋に行きノックをすると、中からゴバックさんの声で『鍵なんて掛けてねえからさっさと入ってこい!』と大声で返事が返ってきたが・・・中に入ってみるとケントが寝ていた。
(まあ、親子の問題だし・・・起きないようだから良いか・・・)
俺は領主館から手紙が来たことと内容をゴバックさんに話し、手紙も見せたが・・・
「まあ、こいって言うなら行くだけだが・・・時間指定も無しとは・・・ずいぶんと急いでるみたいだな・・・」
「又領主がらみだったらイヤだな・・・」
俺がぼそりと呟いた声を聞き逃さずゴバックさんが・・・
「まあ、諦めろ・・・逃げられるもんじゃないし、コレも修行だと思え・・・」
非情にありがたい言葉に涙が出そうで・・・思わず逃げたくなったが・・・
「今回の件はゴバックさん達も一蓮托生ですからね!」
そう答えた俺の言葉でゴバックさんも頭を抱えてうめきだした。
「とりあえず・・・明日になったら領主館に行くか・・・向こうから呼び出しがあるでしょう・・・今日はあまり飲み過ぎないように注意して下さいね!」
ゴバックさんの顔が土気色というか絶望を背負った状態?の様に見えたが・・・スルーして自分の部屋に戻り今後のことを考え始めた。
しばらく考え事をしていると、扉を開けてケントが現れ・・・食事の時間を教えてくれた。
俺は乱雑に散らかったメモやノートを片づけケントと下に降りていくと、ゴバックさん達やマックスさん達がすでに食堂に集合していた。
マックスさん達に軽く挨拶をしてゴバックさん達と合流したが・・・領主館からの手紙の兼を聞いたのか、皆さん顔色があまりよろしくない・・・
「とりあえず・・・喰おう・・・」
俺が席に着いた後、ゴバックさんがそう言うとまるで聞いていたかのようにオルドさんが現れ・・・
「今日のメニューは、ビックボアの串焼き・野菜とキノコのスープ・焼きたてのパン・特製サラダ・・・お酒はいつもと同じだけど、昨日のエールが残ってるから残りで良いなら自由に飲んでね!」
そう言って俺達の目の前に山盛りのパンとサラダ、木のカップを置き・・・残りのメニューを持ってくるためカウンター奥のキッチンに消えていった。
テンポが遅い気がするので、後々書き直すかも・・・




