086 新店舗の予定地
第86話 新店舗の予定地
焼きたてのパンにハムエッグ、ジャムにバター・・・ミルクまで美味い朝食を食べていると、ゴバックさん達も朝食に降りてきたので・・・
朝食後は、王都へ帰る兄さんを見送りに門の外に行きたいけど・・・良いですか?って一応聞いたんだよね~そうしたら・・・
「まあ、門番もいるし・・・人の多い場所なら安全だろうから好きにしてくれ・・・2度寝するから迎えが来たら起こせよケント!」
モリモリと朝食を速攻で食べて、俺達より早く食い終わったら・・・
寝るために2階に向かいながらそう言い残して部屋の中に消えていくゴバックさん・・・
(せっかく美味しい朝食なのに・・・もったいないよな~)
俺達は良く味わって朝食を堪能し、朝は普通に用意されてるお茶を飲みつつ兄さんを待って・・・ケントと一緒に兄さんを見送った。
「今回の店が落ち着いたら・・・ほぼ確実に巻き込まれるだろうけど頑張ってね~」
俺がそう言って兄さんを見送ると・・・少しげんなりした表情だったが・・・
「絶対に逃げ切ってみせる!工房にこもるけど・・・親父達には言うなよ!!」
そう言って獣車に乗り込み王都へと旅立っていった・・・
「さてと・・・見送りも終わったし、まだ少し時間があるけど・・・宿に戻って本でも読むかな~」
俺がケントの方を見ながらそう言うと・・・
「そうだな~ちょっと町をぶらついて宿に戻って本でも読むか!」
ケントの同意も得たので町にはいるため身分証明カードを見せようとすると・・・
「あぁ~見せなくても良いよ・・・早く進んでくれ!」
などと言われたが・・・コレで良いのかね?
まあ、確かに門の目の前で見送りしてたし・・・町の外に有る集落から町に働きに来てるのか何人か並んでるけど・・・顔見知りなのか全然カードを見てないんですが・・・
(まあ、規則だとか言われて何度も面倒な検査はごめんだし・・・楽だから良いんだけど・・・)
俺達は活気づいてきた町を少し散歩がてらぶらついて・・・宿に戻って部屋で待機した・・・
昨日約束した9時少し前にダリルさんが迎えに来たので、俺達はダリルさんが乗ってきた馬車に乗り込み店の予定地を視察して回った・・・
候補地①、領主町西南の門近くの自警団の詰め所に隣接した結構広めの土地だが・・・ここって自警団の訓練場じゃないのか?
候補地②、ちょうど門から商店街に行く途中で・・・周りには民家とちらほら商店が有る道路沿いの角地なんだが・・・土地が狭く上に建ってる建物が古いって言うかボロ屋だ!
候補地③、文句なしの一等地!商店街のど真ん中・・・しかも表の2軒分の土地建物に裏の物件も会わせて3軒分が確保されてる。
候補地④、領主館の真ん前・・・公園なのか広場なのか不明だが・・・明らかに領主が自分の都合で混ぜたっぽい気がする・・・
他にも別の門の近くや町中の候補地をいくつか回っていたら昼になったので・・・ちょっと嫌な予感はしたが領主館で昼を御馳走になった。
俺の嫌な予感に反して、領主は不在だったし出された料理もサンドイッチや唐揚げなど軽食系で美味しかったが・・・どうにもまだ嫌な予感が続いてるのが気になる・・・
どうやら昼食前に見た候補地が最後だったらしく、そのまま広い応接室に通された俺達は・・・
「で、どこにする気なんだ?」
ダリルさんに候補地を選ぶように言われてるんだが・・・
「4番目は論外として・・・個人的には3番目と1番目が良い感じだと思いますが・・・」
「理由をお聞きしても?」
「無論ですよ!まず・・・」
俺は自分なりに考えたことを話し始めた・・・
まずは一番最初に見た候補地①、広さも魅力だが(普通の商店8軒分)・・・門に近いのが魅力だ!門に近いと・・・朝早くから営業していれば、定期の馬車や獣車の待ち合わせというか乗り降りの際にその乗客の利用が見込めるし、近隣から仕事に通う住民など人の出入りのある場所は俺達が提案するお店のお客になる可能性が高い!
まあ、デメリットとしては・・・建物や生活用・営業用のインフラ整備があること・・・立地的に自警団に恨まれる可能性があることだろうか・・・
次に候補地②、立地的に問題はないのだが・・・土地の狭さと上に建ってるボロ小屋がね・・・結局建て直しになるし、建て直すのを考えれば他のどの土地に建ててもここより良くなる気がするからね・・・(まあ、費用をかけない実験になら良いかも・・・)
そして、一番魅力のあった候補地③、広さはそれほどでもないが・・・領主町の繁華街ど真ん中にある立地の良さに、現在有る建物を改装すれば即日とは言わないが早い段階での営業が可能だし、有る程度インフラも整備されてるからね~
まあ、デメリットは現状だと3件がそれぞれ独立した建物になってることや・・・テラス席を作ろうと思うと大変なことだろうか・・・
論外と切り捨てた候補地④、広さは魅力なんだが・・・広すぎるし、個人的には領主館が近すぎると思うし・・・なんと言っても問題なのが人通りだ!商店街からそれほど離れてる訳じゃないが・・・門と正反対の方向になるから、客足の伸びが非常に悪そうだ・・・
他にも案内された候補地について自分なりの見解を言っていったが・・・なぜに俺メイン?良いんだけどさ・・・俺が言い終わると、黙って聞きながらメモを取っていたダリルさんが・・・
「なるほど・・・結構考えてますねアレン君・・・私からも領主様へ報告しておきますが、一応・・・アレン君達も報告書の提出をお願いしますね!」
なんて、笑顔で言ってるけど・・・報告書は俺に丸投げですか?
(しかし・・・候補地④って・・・今考えると祭りなんかのイベント用の土地なんじゃないのか?)
その後は、その場でお茶やお菓子を楽しみつつ雑談形式で会議を続け・・・宿に戻ってから報告書に纏めて、完成次第領主館に提出することにして宿に戻った。
とりあえず風呂に入ってさっぱりしてから報告書を書くか・・・報告書って俺が持ってる紙でも問題ないよな?一応・・・村で売ってる普通の紙なんだけど・・・
(ま、アノ領主だ・・・どうでもいいっか~)
俺は着替えを持って、脱衣所に入ると・・・『へぇ?』『・・・ ・・・キャ~』全裸の女性が目の前で悲鳴を上げてる・・・
「すいません・・・」
俺は慌てて脱衣所の扉を閉め受付に向かい、オルドさんが居なかったのでケビンさんに事情を説明していると・・・
先ほどの女性がツカツカと目の前まで歩いてきて・・・ひっぱたかれた・・・
俺は寸前まで事故だが謝ろうと思っていたのだが・・・この一発で考えが変わった・・・事情も聞かずにひっぱたいてきたんだ・・・泣いて貰うよ?
「いきなり事情も聞かずに暴力ですか・・・素晴らしい理性と教養をお持ちで・・・」
「変質者に人権はない!死ね!!」
おいおい・・・この人、いきなり短剣を出して斬りかかってきたよ!
「あ、あぶないな~そっちが先に切ってきたんだし・・・手足の一本ぐらいは覚悟して下さいね・・・」
俺は自分の空間から拳銃?短筒?を取り出し構えようとしたが・・・
「やめんか!馬鹿どもが~~~」
ケビンさんが大声で制止したので様子を見ることにする・・・まあ、威嚇でしか撃つ気はないけどね!
俺に斬りかかってきた女性も短剣を握ったまま止まった。
「アレン、説明しろ!」
「はい、え~僕が風呂に入ろうと先ほど扉を開けたら・・・そこの女性が居まして・・・叫ばれてしまい事情説明のためケビンさんと話していたら・・・見ての通り、ひっぱたかれて斬りかかってきたので反撃しようとしたらケビンさんに止められました」
「さも偶然のように言って・・・狙ってたんだろ・・・コレだから男は・・・」
「アグリス・・・こっちの小僧・・・アレンは、偶然の事故を主張してるが・・・お前は認めないのか?」
「当たり前です・・・なぜ私を止めるんですか?こんなヤツ切ってしまえば良いんです。」
「ん~どうしたモノか・・・」
「ケビンさん・・・私は聞いていないのですが・・・この宿では男性と女性の入浴時間が違うとか何か入浴の決まりはありますか?」
「なんだよ・・・オルドもゴバックも説明してなかったのか?」
「はあぁ・・・昨日は男性客のみでしたし・・・忘れていたのでは?」
「一応言っておくと・・・時間帯じゃなくウチじゃあ札を使ってる。女性客が入ってる時は脱衣所の入り口に札が掛かってるはずだが・・・」
「あ!・・・」
女性客の方が何か思い出したようだが・・・もじもじしたまま話そうとしない・・・
「ん~札なんて見た記憶がないんですが・・・見逃したかな?」
もうだいたいのことは判ってるが・・・ひっぱたかれて切られそうになってるんだし・・・容赦しませんよ!
なかなか話が進まず・・・増えていく伏線・・・はぁ~どうしましょう?




