084 領主町の探索①
第84話 領主町の探索①
何とか無事に乗り切って領主館を後にした俺達だったが・・・正直、この町の店にも結構興味があったので、帰り道で見かけた店を見てから帰って言いかごバックさんに聞いたら・・・
「まあ、町中で仕掛けてくる馬鹿も居ないだろうし・・・好きにしろ!」
「ありがとうございます。ケントはどうする?」
「行くに決まってるだろ!」
「兄さんは・・・明日からも移動だし宿で休んでおく?一緒に行く?」
「ん~何度か来てる町だし・・・案内したいところだけど、結構疲れたから宿で休むよ!気を付けてな~」
俺とケントはみんなと別れて、早速領主町の探索に出かけた・・・
「お!アノ店は武器とか置いてあるぞ!ちょっと見ていこうぜ!」
俺はケントの提案に乗って、手近にあった武器防具の店らしい店舗の中に入って行った・・・意外と変わらないな・・・俺達が入った店の中はウチの村にある店と外観こそ多少違うが、中の広さや配置などがほぼ同じで・・・種類が多少豊富って程度だ・・・
「ん~武器か・・・クロスボウも良いんだが・・・そろそろ普通の弓も買っておこうかな~」
「コレなんてどうだ?」
ケントに渡された弓を引いてみるが・・・もう少し強めの方が良いかな?そんなことを考えつつ何度か引いたり話したりしていると・・・
「いらっしゃい・・・ん?探索者にしては若そうだし・・・見かけない顔だな・・・」
対応に出てきた店主らしき男が、町中にいるのに防具を身につけた俺達を見て探索者と勘違いしたらしく訝しげな目で見てくる・・・
「はぁ?探索者?違う違う・・・俺達はウッド村の狩猟団だよ!」
「ウッド村の狩猟団?ウッド村って言えば・・・ダロイスさんとゴバックさんの所か・・・それにしても若いな・・・ん?その顔・・・ひょっとして2人の息子か?」
(なぜ顔でばれる・・・俺の顔って親父みたいに厳ついの?似てるってよく言われるけど・・・)
「親父を知ってるのか?」
「この辺の商人でウッド村を知らないヤツなんて居ないぞ!ウチはウッド村のダラッドの店とも取引があるからな・・・」
「へぇ~ダラッドさんの店とも取引してるんだ・・・じゃあ安心だな!おっちゃん、こいつが弓を買うのに迷ってるから相談に乗ってよ!」
「ん?弓か・・・どんなのが希望だ?」
何だか勝手に話が進んでいくが・・・別に不都合もないし・・・
「えっと・・・今はクロスボウがメインなんですが、そろそろ強めの弓を使ってみようかと・・・」
「ふ~ん・・・強めの弓ね・・・ちっと待ってろな~」
倉庫から在庫でも出してくるのか・・・一端奥に引っ込んだ店主・・・どんな弓を持ってくるのか・・・
少し経って店主が持ってきたのは、1mにも満たない弓だったが・・・試しに引いてみるとメチャメチャ重かった。
てっきり俺達の村で普通に売ってる短弓だと思ったら・・・弓をよく見ると素材は判らないが・・・複数使われた合成弓とか複合弓と呼ばれる種類のモノだった。
「試しに射って見たいのですが・・・どこかで試せますか?」
俺の反応を見ていてドヤ顔っぽい店主が・・・
「ウチの裏で試せるよ!こっちだ・・・」
そう言って店の裏に案内されると、そこにはおんぼろだが熊を模したらしいぬいぐるみと・・・中心部が害獣の絵になった的があった・・・
(なるほど・・・対人じゃなく害獣が的だからこうなる訳ね~)
俺は大魚亭の射的場が円を幾重にも描き中心を赤くした的にして作った時、他のメンバーが違和感を感じていたのがなぜかよく判った・・・
(今度は害獣とかの形で部位によって得点を付けても良いかも・・・)
そんなことを考えつつも指示された位置に立って、店主に渡された矢を弓にセットしてギリギリと引き始めた・・・
「まずはグランドベアの模型を狙ってくれ・・・一応本物と同じぐらいの強度で仕上げてあるから、距離的な問題はあるだろうが実際の猟とそんなに違いはないはずだ!」
言われたように、グランドベアの模型・・・頭を狙い弓を放つ!
---バシュ!---
弓を放つこぎみよい音が聞こえ『パシュ!』っと矢の刺さる音も聞こえる・・・頭を狙ったはずだったが・・・肩に刺さったな・・・多少ずれたが、後は練習で何とかなりそうだ・・・
「アレン・・・俺も試して良いか?」
俺が使ってるのを見て狩猟本能でも刺激されたのか・・・ケントが試したいと言い出した・・・
(まあ、結構深く刺さってるし・・・威力は申し分ないな、大きさも短弓とほとんど変わらないし・・・馬上からでも撃てそうだ・・・)
ほぼ買うことを決定した俺だったが、ケントが試したいならと弓を渡すと・・・
「ちょっと待った!そっちの子が試すなら違うのを用意するよ・・・すぐ持ってくるからそれを使っちゃダメだよ!」
理由はよく判らないが・・・そのまま待っていると、俺が試してるモノとほとんど違いがない弓を持って店主が現れ・・・ケントに矢と一緒に渡した後・・・
『ちょっと手を見せて・・・』っと言いながらケントの手を見ていた・・・後で聞いた話だと、一目見てケントの方が弓になれてるので、俺より多少強めの弓を取ってきて、手を見て確認してたらしい・・・
(いや~プロって凄いな~)
結局、俺よりも深く矢を刺し・・・悔しいことに頭に命中させたケントも弓を買うことにしたが・・・銀か10枚って高くないか?まあ・・・特に大きな買い物も最近してなかったし、お金があったので二人とも買ったんだけど・・・何とか値切ろうとした時に・・・
「お前らは自分の命を預ける道具を値引きさせるのか?武器や防具を値引きするって言うのは元々安物で、自分の命が値引きされるようなモノだぞ!」
なんて言われたので反論も出来ず・・・親父も武器防具は値引き交渉せずに言い値で払ってたのを思い出し・・・店主さんの言い値で買った。
「そう言えば、防具を買った時も値引きより別の商品をサービスして貰ったな・・・」
俺がそう呟くと・・・
「ちっ・・・やっぱアノ二人の子供だ・・・喰えないガキだぜ!」
などと言われ・・・矢を20本サービスで貰った。
(イヤ・・・そんな気じゃなかったんだけどね・・・)
「他には何か欲しいモノはあるか?」
とりあえ俺達は新しい弓に満足してたし、サービスで矢も付けて貰ったので他に思いつかず・・・
『この近くで弓の練習が出来る所はありますか?』と俺が聞いて・・・『探索者の練習場を借りるか・・・門の外で木に何か的を付けて練習するしかないな!』と答えられたので、とりあえず探索者のギルドに行って利用可能か聞いてみることにし、武器防具の店を出ることにした。
「又何かあったら店を使ってくれな~値引きはしないが・・・良い物を出してやっるからな~」
そう言って見送ってくれた店主に聞いた、探索者ギルドを目指し10分ほど歩いた・・・
「結構大きいな・・・」
「あぁ・・・ウチだと自警団本部に纏めてるけど、こっちは別になってるんだな・・・」
俺達の目の前に立つ探索者ギルド・・・3階建ての建物でウチの村の自警団本部と同じぐらいの敷地に建てたれてる。3階建ての分こっちの方が大きいようだ・・・
そんな事を考えながら入り口に入ったが、予想以上に狭い・・・入り口から入った部屋は、どこか役所を思わせるカウンターとほとんど空席で2人程の職員らしき人物しか居なかった。
俺達がカウンターに座る人に近づくと・・・
「いらっしゃいませ!登録ですか?受注ですか?報告ですか?」などと聞かれたが・・・
「え~っと・・・すいません、練習場をお借りしたいのですが・・・登録しないと借りることは出来ませんか?」
「身分証明カードを確認させて頂いてよろしいですか?」
事務的に即答してきた職員にカードを見せると・・・
「あぁ~ウッド村の狩猟団の方ですか・・・ならば利用可能です・・・逆に探索者だと使用料金が発生しますが、指導員を指名して付けない限り騎士団・自警団・狩猟団は原則無料ですから・・・」
「ただ・・・的を持ち込まれない場合、的を破壊したり修理費用をご負担頂くことになりますが・・・」
「え~っと、今日は先ほど購入した弓の試し打ちをしたいのですが・・・的の修理費用とかっていくらなんでしょう?」
俺がそう聞くと・・・カウンターの下から料金表を取り出して説明してくれた・・・
「じゃあ・・・僕はこのグランドベアの皮を使ってる四角い的銅貨10枚のヤツを3個で・・・」
「ん~俺は・・・こっちのグランドベアの模型(小型)のやつ銅貨50枚か・・・それを4つ足と2本足で立ってるので銀貨1枚か・・・うん、それで頼む」
弓の訓練場に案内されて判ったのだが・・・入り口を入った部屋は、純粋に受け付け業務で・・・1階部分の残りは訓練場と倉庫になってるから必要最小限の広さだったようだ・・・




