082 サウスウッドの領主町
第82話 サウスウッドの領主町
「え~~っと・・・ゴバックさん?・・・」
「ん?なんだアレン・・・」
「えっと・・・まずは宿屋で部屋を確保しませんか?」
「ん?宿なら領主・・・ん、そうだったな・・・判った・・・」
何だか因縁というか事情がありそうな検問所・・・(まあ普通に町の出入り口の門で検査されただけだけど)をクリアーして、本来なら領主様に挨拶とか・・・領主様の依頼なんだから領主の城とか館で滞在なんだろうけど・・・自由も効かないし、緊張した食事とかマジで勘弁だったから・・・俺達は領主町の宿屋に宿泊予定だ!
(領主の館?絶対に泊まるなんてイヤだ!!何されるか判らないだろ!主に俺が!!)
色々建前とか言い訳を並べ立てたら・・・堅苦しい事が嫌いな事や領主の普段の態度からか・・・とばっちりを恐れて全員一致で宿屋に泊まることが決定した。
「ん~宿屋は確か・・・こっちだったな・・」
何度も領主町に来てるゴバックさんの案内で領主町の宿屋に向かう・・・ウチの町と違い人も多く、門から途切れることなく続く町並みの中を宿屋へと移動していく・・・
(ずいぶん人が多いな・・・)
しばらく歩くと・・・『ふくろう亭』って名前の目指していた宿屋に到着した・・・食堂を兼ねる酒場と宿が一体化した作りだが、食堂と宿の部分が壁で仕切られ、壁には鉄格子のはまった窓が開けられ・・・部屋への人の出入りがカウンターから監視できるようになってる。
(何だかどこかの国の刑務所みたいな作りだな・・・)
昼食は営業していないらしくきょろきょろ見回していたら・・・
「アレン・・・ケントも覚えておけ、こうした形態の宿は安全が売り物の宿だ!ここから見ると人の出入りが判るだろ?つまり、居ない間に勝手に部屋が荒らされたり荷物の心配をすることなく出て行けるんだ・・・宿にも種類があることを覚えておけよ!」
「「はい」」
「ん・・・良い返事だ!」
『チンチンチン・チン』ゴバックさんがカウンターにあった呼び鈴を使うと・・・
「はいはい・・・いらっしゃいませ・・・」
店の店主?と言うには若すぎるので、たぶん店員か店主の家族らしき青年が奥から出てきて・・・
「あれ?ゴバックさん・・・ヒノフノ・・・6人ですか?」
「おう!親父さんは達者か?・・・今日は6人、明日以降は5人でしばらく厄介になる」
「了解!っと・・・部屋は空いてますから・・・親父は今夜の仕込み中ですが・・・呼んできましょうか?」
「いや・・・部屋に荷物を置いたら飯を喰いに出るからな~それにどうせ夜には会うんだ・・・忙しいところを邪魔すると後が怖いからな・・・」
「そうですね~んじゃあ、身分証明カードを・・・宿帳に記入しますので・・・ま、規則ですから・・・」
「判ってる・・・ホイよ!、そうだ!俺達の部屋だが・・・2階の奥から続き部屋は空いてるか?」
「はい、空いてますが・・・厄介事ですか?」
「ん~何とも言えんが・・・一応用心って所だな・・・」
「へぇ~まあ良いか・・・部屋は奥の210・209・208の3部屋で良いですか?」
「ん、それで頼む」
「じゃあ、他の方もカードを確認しますね!」
何だか顔見知りらしい店員とゴバックさんが宿泊手続きをドンドン進めて行って、俺達の番らしい・・・
「んじゃあ・・・って、ウイリアム・ウッド・・・ダロイスさんの子供?こっちはアレン・ウッド・・・」
「二人ともウチの村長の子供だ!ちなみにそこにいるのがケントって言う俺の子だ!」
「はぁ~ダロイスさんにゴバックさんの子供か~親父が聞いたら喜ぶだろうな~今夜は期待して貰って良いですよ!」
「久々にケビンのヤツとも酒が飲みたいからな・・・」
「あ!申し遅れました。私は当宿の店員・・・って言うか店主の息子で、オルド・コロックと申します。店主のケビン・コロックは昔ダロイスさんとゴバックさんの仲間でしたので・・・安心して泊まって下さいね!」
「能書きは良いから、とっとと部屋の鍵をよこせ!」
「おっと!ハイハイのハイっと・・・」
部屋に向かう俺達に『またね~』などと手を振るオルドさんを横目に見つつ、食堂との仕切りの扉をゴバックさんが開けると・・・『ジリジリジリリン』っと扉に仕掛けられた鈴か何かが音を立てたが、ゴバックさんは特に気にする出もなく階段を上がっていく・・・
(ん~この壁と鉄格子がなければ、西部劇とかに出てくる酒場兼娼館って感じなんだが・・・)
真ん中にあった階段を挟んで右側の奥3部屋が俺達の部屋らしく・・・部屋割りは208にゴバックさんとケント、209に俺と兄さん・210にハリスさんとデッカーさんになった。
兄さんと部屋にはいると・・・6畳ほどの部屋にベッドが2つ、足下の方には壁一面のクローゼット・・・クローゼットの真ん中に何かあったのでよく見ると、衝立?と言うか・・・仕切りが出てきて、どうやら簡単に部屋を仕切る工夫らしい・・・
手早く着替えなどをクローゼットに放り込み、廊下に出るとゴバックさんはすでに用意が出来たようで・・・すぐにケントや奥の部屋になったハリスさん、デッカーさんも合流し食事を取るため外に出て食堂を探し始めた。
「なあ親父・・・この辺に美味い店なんてあるのか?」
ケントが頭の後ろで手を組みながらゴバックさんに美味しい店の情報というか・・・美味い物を喰わせろと言外に要求している。
「な~この町に名物とか無いのか~」
「うるせえ!黙ってろ!!」
『ゴチン!!』・・・あぁ~ケントがゴバックさんに頭を叩かれてうめいてるが・・・ゴバックさんはお構いなしにズンズンと歩いていく・・・
100mも進まずゴバックさんが立ち止まってる・・・『大地の恵み亭』どうやらここが目的地のようだ・・・中に入ってみると、ウチの村にもあるごく普通の食堂兼宿屋風だ・・・
昼時を少し過ぎているからだろうか・・・結構席が空いてるな・・・ちょうど空いていたテーブル席に半々に分かれて座ると、店員らしい女性が来て・・・
「昼の定食はまだあるか?有るなら6人前な!」
「はい、ございます・・・定食6人前ですね?お飲み物は?」
「飲み物?確か定食には飲み物がセットだったと思うが・・・」
「えっと・・・今日定食にセットなのは秋に作った新酒なんですが、お子様連れでしたので・・・お茶かジュースにも変更が可能です」
「お!そう言うことか・・・じゃあ、俺は酒で良い後は・・・」
「「酒!」」
「ジュース」
「「お茶!」」
「かしこまりました・・・お酒が3名、ジュース1名にお茶が2名分ですね~少々お待ちを・・・」
ゴバックさんが纏めて定食を注文し、各人がセットの飲み物を頼んだら・・・店員らしき女性はカウンタに向かって『定食6!』と叫んでカウンターに戻っていった・・・
少し待っていたら・・・柔らかそうなパンが3個・キノコのシチュー・野菜サラダ・小ぶりのハンバーグに、俺が頼んだお茶が運ばれてきた。
「ありがとう・・・」
運んできた女性店員は手際よく・・・すぐに全員分そろったのでお礼を言った後、食べ始める・・・
パンはまあまあだな・・・見た目と同じで柔らかいが・・・個人的にはもう少しざっくりとした歯ごたえのある方が好きだ・・・
キノコのシチューは・・・『美味い!』思わず声が出るぐらい美味しいぞ!・・・その様子を見ていたゴバックさんが、いたずらの成功した子供のような目でニヤリと笑っている。
パンを2個とシチューを全て食べ・・・腹の方も落ち着いたところで残りのパンとハンバーグにサラダを食べたが・・・まあ、普通に美味しいってレベルだな・・・
多少油っぽくなった口をお茶でさっぱりとさせた後で周りを見ると・・・全員完食したらしい・・・
(この町のレベルがコレだと・・・結構激戦というか、飲食店はきつそうだな・・・大丈夫だろうか?)
「アレン・・・心配するな!」
俺が食事のレベルが高いので不安そうにしていたらゴバックさんが声をかけてきた・・・
「この町にもまだ何件か宿屋と食堂があるが・・・一番美味いのはココだから・・・他は気にしなくて良いぞ!」
「へぇ~やっぱり詳しいんですね~ゴバックさん」
「まあな・・・産まれた町だしな~」
そんな会話を続けようと口を開きかけたところで・・・
「懐かしい声が聞こえると思ったら・・・ゴバックの小僧じゃないか!」
「ん?じじいか・・・まだ生きてたのかよ!相変わらずしぶといな・・・」
「わしにそんな口をきいて良いと思っとるのか?昔話を聞かせないとその口はなおらんのか?」
「ハイハイ・・・私が悪うございました。ったく・・・コレだから爺の相手は・・・」
「まあ良いじゃろう・・・」
さすがに産まれた町らしく・・・次々とゴバックさんの知り合いに出会うな~そんなことを考えていたら・・・
「ん?この小僧は・・・」
なぜか会ったこともない老人が俺の方を見てきた・・・
「小僧!お前の親父の名前を言ってみろ!」
見たこともない爺さんに何で親の名前なんて聞かれてるんだ?
言っても良い物か言わない方が良いのか・・・とまどってた俺にゴバックさんが助け船を出してくれたのか・・・替わりに答えてくれた・・・
さらなる登場人物がいっぱい出てきて作者なのに混乱中です。
やっぱり登場人物の紹介②を書いて・・・ちょっと整理しなきゃ!
って事で・・・近日中に登場人物紹介②を投稿予定です。




