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新世界での生活  作者: 投稿初心者
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079 前途多難の冬

第79話 前途多難の冬


まったく・・・ウチの領主のヤツ、本当にろくでもない・・・何でこのタイミングで無茶するんだよ!

俺は、ここ2ヶ月ほど続いた平和な日々が音を立てて崩れるような気分を体験し、領主の相手をする気にならなかったし・・・娘を連れてきた領主の相手など、どう考えてもやっかい事の種にしか思えず、丸太のコテージで引きこもりになった。

丸太のコテージに顔を出す親父や兄さん、ケントの情報によると・・・俺が引きこもったことで領主がぶつぶつ言ってるらしいが・・・こっちはそれどころじゃない!


前に襲われた時は個人的な恨みを利用した警告と言うよりも、こちらの対応を見る様子見っぽかったが・・・そう何度も様子見や警告があるとは思えないし・・・

「あ~くそ!」・・・しばらくのんびりおとなしくして・・・ほとぼりを冷ますはずだったのに・・・「馬鹿領主のおかげで要注意人物だと再認識されてるよな・・・」(海の集落に逃げるか?)・・・いや領主が来て騒ぎを起こされる可能性もあるし・・・あそこじゃ狙われたら逃げ場所がないな・・・

(村に戻るか?)・・・自宅で引きこもりしてれば、まず安全だけど・・・万が一襲撃された場合母さんやミーアを巻き込んじゃう・・・「パスだな・・・」ん~こっそり抜け出そうにも・・・監視なんかされてたら、単独行動や少人数だとさらに危険だし・・・


俺は悩みに悩んだ・・・現状を打破すべく考えに考えたが・・・結局名案は浮かばず、警戒しながら大魚亭主周辺にとどまりつつ今後の様子を見るしか出来そうもないので兄さんから調べモノの結果を聞くことにした。





「アレン・・・大丈夫なのか?」


「ん~大丈夫って訳じゃないけど・・・正直現状じゃ打てる手がないからね・・・」


「アレから、俺や父さんも考えたけど・・・どこかに隠れるかしばらくほとぼりを冷ますために旅に出るぐらいしか思いつかなくてな・・・だが、それも問題があるし・・・」


「道中というか・・・移動中を狙われたら危険が大きくなるからね!それに、向かう先もないし・・・」


「そうなんだ・・・王都は無論、国王派領主の領地は無理だし・・・サウスウッドの町もな・・・」


「うん・・・サウスウッドの町は味方も多いけど、王都に近くて町の規模が大きい分敵の出入りも簡単だし・・・僕も大魚亭に居る方が安全だと思うから・・・」


「そうなんだよな・・・ところで、今日呼んだのは先日聞いた調査の件か?試作品の方も2種の試作を1台だけだが持ってきてるぞ」


「おお!!試作品すぐ作ってくれたんだ!」


「まあ、いまウチの工房は部品の外注とかでチャリを量産してるだけだったからな~それなりに時間が取れたんだ・・・」


ラッキーな状況で、春まで待たないと無理かな?新年に持ってきてくれたら嬉しいな~なんて考えていた試作品が、王都までの往復を考えれば約1月・・・今回こっちに来るまで獣車を使ってもひと月半は無い短時間で完成したとの嬉しい話しに、一瞬だが不安を忘れ俺は笑顔になったらしい・・・


「アレン・・・そのニッタリとした顔はヤメロ!悪巧みしてる親父そっくりだぞ・・・」


(いや、兄さん・・・悪巧みに・・・親父そっくりって・・・)


予想外の兄さんの言葉で、俺の心はかなり大きなダメージを受けた・・・(でもやっぱ俺って・・・親父似なんだよな・・・)


「ま、まあ・・・とりあえず見せてよ・・・」


大きなダメージだったが、何とか気力を奮い立たせて現物を見せてくれるよう兄さんを促すと・・・


「まあ良いか・・・コレだよ!」





小一時間ほど兄さんが持ってきてくれた試作品の話や調べてくれたこと・・・技術的な話などを織り交ぜて話していたら・・・お茶の時間というか、喉も渇いたのでお茶にしようとしたら・・・数日の引きこもり生活で手持ち分を全て飲んでしまったことを思い出し、大魚亭まで飲みに行くことにした。

(兄さんもコーヒーは飲んだこと有るまい・・・)

ちょっとしたいたずら心というか、現実にも水以外に飲み物がなかったので移動してきたが・・・


見慣れない女の子が接客してきた・・・まあ確かに、今回新しく来た授業員にも女の子は居るが・・・

(ん~見たこと無い人だな・・・記憶違いか?)


運ばれてきたコーヒーを飲みながらそんなことを考えてると・・・「コレがコーヒーか・・・」兄さんがコーヒーを前に飲むか飲むまいか考えてる様子だ・・・


「兄さん・・・別に大した物じゃないんだし、気軽に試してよ!味は好みもあるけど・・・僕だって普通に飲んでるでしょ?」


「うむ・・・そうだな・・・」

『ゴクリ・・・』一口飲んだ兄さんの目が見開かれ驚きの表情が浮かぶ・・・

「コレは・・・苦いというかしぶい気がするけど・・・香りが良いな・・・」


どうやら初めてのコーヒーはまずまずの印象だったようだ・・・


「本当なら、コーヒー専用の木の実・・・コーヒー豆って言われるモノを焙煎して飲むんだけど、それらしいモノが無くてね~」

「だけどタンポポの根っこを処理して替わりにすることをシェフの佐藤さんが知っていて、客室係の相楽さんが広めたんだ~」


「へぇ~アレンじゃないのか?」


「兄さん・・・兄さんの中で僕がどう評価されたり考えられてるか知らないけど・・・僕だって知らないことは沢山あるし、何でも出来る訳じゃないんだけど・・・」


「ん~済まん済まん・・・どうも、こっちで新しい事って言うとお前が絡んでる気がしてな・・・しかし、タンポポの根か・・・」


「タンポポの根がどうかした?」


「いや・・・まさか、タンポポの根にこんな使い道があるとは思わなかったからな・・・」


「まあ・・・普通はそうだよね~」


「あぁ~それにしても・・・なるほどこういった新しい物があるからだったのか・・・」


「へぇ?何の話し?」


「いや・・・さっきコーヒーを運んでくれた人とか・・・新しい店の店員で、今研修中なんだろ?」


「はい?兄さん・・・いったい何の話を・・・」


最初は何の話しだか判らず・・・兄さんの話をおとなしく聞いていたが・・・またも想定外の計画が俺に内緒というか知らされず進行していたらしい・・・

兄さんから聞いた計画の概要だと・・・


「王都に店を出すって?!」


「うん・・・俺はそう聞いてるけど・・・」


何でも領主の出資で王都に喫茶店というか食堂というか・・・新しい店を出す計画があり、領主が連れてきた女性従業員を大魚亭の食堂で修行というか接客の訓練を受けさせてるらしい・・・


寝耳に水の話だったが・・・すぐさま以前話した馬鹿話を思い出し・・・ウチの領主の情報収集能力がハンパじゃないことを思い知り、普段の見かけや行動から予想できない領主の恐ろしい面を思い出した。(やっぱり油断できない人だ・・・)


まあ、こっちの懐が痛む話じゃないし・・・春から予定されている開墾でかなり大量のタンポポの根が収穫というか取れるだろうし、その販路を考えればプラスになる話だろう・・・だが・・・

(領主が絡んでるって部分が気になるが・・・)


油断できないが油断を誘う行動を取るって言うか本音がまったく判らない領主、サピオ氏が話しに絡んでる以上・・・出来るだけ警戒して油断大敵の精神でかかわるしかないかな・・・

(でもな~かかわっちゃうと忙しくなる予感もあるんだよな~)


現状で俺に残された選択肢は少ない・・・


①全てに深く関わりメチャメチャ忙しい大変な日々を送る。

②助言などで多少関わり忙しい日々を送る。

③全てを無視してそれなりの日々を送る。


個人的には③が希望だが・・・無理だろうし・・・②で何とかおさめたいな・・・13、いや・・・新年を過ぎたから14か・・・14歳のガキなんだし、やりたいことも出来た・・・最初から油断できない危険な話なんだし、用心するにこしたことはないだろう・・・


休憩に来たはずなのに、新たな難題発生でまったく休憩も出来ず・・・俺も兄さんもコーヒーを飲んだ後、切らしていたお茶やコーヒーを厨房で分けて貰い丸太のコテージに戻ってさらなる話し合いをすることにした。


「ふう・・・ちょっと上で待ってて!お茶を用意してすぐ上がるから・・・」


俺はコテージのロフトスペースに上がるよう兄さんに言うと、備え付けの簡易キッチンでお湯を準備して今度は笹茶を用意した。


以前は荷物置き場だったロフトスペース・・・大魚亭に比べ冷暖房が弱いコテージでは、暖房を使うようになってすぐ俺が片づけて居間というか・・・俺の仕事部屋のように使ってる。

寒くなってきて、ケントのアホが鬼のように薪や炭を下の暖炉で燃やすと暑くて溜まらないが、下が少し寒いかな?ってレベルだと暖かくて快適だし・・・他の人はココで寝てるぐらいだからな・・・


「お待たせ~」お茶を準備する間も色々考えたが・・・お茶を焼き物のカップに入れ、ロフトに持って上がると余剰品を持ち込んだ組み立て式のテーブルセットで兄さんが居眠りをしていた。

(あぁ~疲れてるんだろうな~寝かせてあげようかな~)


とりあえず静かに部屋の隅に移動して・・・仮眠用の簡易ベッドに腰をかけ、持ってきた笹茶を飲みながら自分なりに色々検討を加えていく・・・

まずは兄さんの持ってきた試作品だな・・・部屋の隅に置いてある試作品を眺めつつ・・・俺なりの検討会を始めた。


何とか1話更新!次は更新できるのか?

頑張ってます。

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