069 熟成期間②
難産です・・・何とか書き上げた話を・・・更新です。
第69話 熟成期間②
でかい・・・その針を見た時の俺の正直な感想だ・・・
針を付けても銀貨8枚ぐらいが落としどころだろうか・・・しかしこの竿・・・見た事の無い素材だな・・・他の竿にもいくつか使われてるようだけど・・・
『おっちゃん、この竿って他とどう違うのって言うか・・・素材は何?』
俺達が去年買った竿は所謂リール竿ではあるが・・・素材はもろ竹!って感じの素材が使われているのだが、目の前にある竿は・・・金属っぽい感じだがそこまで重くなく非常にしなりも良い・・・
「素材か・・・素材はビッグスパイダーの糸を加工しているとだけ聞いてるな・・・職人曰く「絶対に折れない!」と自信満々だったぞ!」
ふむ・・・『ところで在庫は何本?』
「あぁ~在庫ね・・・今の手持ちは・・・4本だな・・・」
『ん~~おっちゃん・・・それ全部買うからもうちょっと安くならない?それと・・・シルクスパイダーの糸・・・大量に買うかも・・・』
「ん~~在庫全部か・・・じゃあ・・・」
「あ、アレン・・・」
(く・・・ケント!空気を読めよ!!)
俺が全部買い占めるんじゃないいかと思ったのか・・・ケントが怒ったような目で俺を見てくる。
「4セット全部で銀貨38枚って所かな・・・」
(くそ!こっちの不和を突いて寸前で値引きを減らしたな・・・)
釣り竿なんかは自作する人も多いし・・・銀貨36枚まではすぐ引いてくると思ったのだが・・・ケントを少し睨んで目で合図したら、自分の発言でこっちが不利になった事が判ったのかケントが押し黙る・・・
『銀貨38枚ですか・・・銀貨32枚なら全部買おうと思ったんだけど・・・』
「いや~さすがに銀貨32枚ってのは無理だって・・・ん~~~坊主達には、毎年買って貰ってるからな・・・」
「4セット全部で銀貨36枚!これ以上は無理だぞ!!」
(お!引いてきたな・・・叩けばもう少しいけそうだが・・・)
『ん~~~判った!銀貨36枚!全部貰うよ・・・』
もう少し交渉すれば多少は安くなるだろうが・・・親父とか言い値で買いそうだし・・・確保しておこう・・・
代金を支払って大物セット4個を受け取り、その場を離れて巡回しつつケントと話を進める・・・
『もう~ケント、欲しがりすぎ!あんなに欲しそうにして焦ったら交渉できないだろ?』
「いや・・・すまん・・・うちの親父とか村長あたりに買われるかも・・・って思うと・・・」
『それに・・・お前・・・俺の事疑っただろ!』
「あ・・・いや・・・あれは・・・」
『裏切らないって!それにちゃんと値引きした値段で2セットまでなら渡すって!!』
「す、すまん・・・つ、ついな・・・」
『もう良いよ・・・んで、2セットで良いのか?1セットだけにする?』
「ん~~やっぱ2セットくれ・・・親父用も欲しいからな・・・」
『了解!んじゃあ2セットね!』
俺は狙撃銃でも入れてるのか?って感じの竿・リール・針が入った取っ手付きの黒い木箱を2個とタイガースパイダーの糸を600m分ケントに渡し代金を受け取る・・・
「良い買い物したよな~」
俺から大物セットを受け取ったケントはホクホク顔だ・・・
俺達は巡回に戻ったが・・・みな忙しそうに準備してるな~・・・ん?なんだアノ集団・・・
俺達が露店の広がる広場から休憩所のエリアに入ったところでいくつものテントを見かけた・・・収穫祭の時は有る程度纏まった露店エリアと次のエリアまでの間に休憩所が設置され、露店(屋台)で購入した飲食物を食べたり一息付けるように配置されてるが・・・テントを出すとは聞いてないな・・・
『すいません・・・』
俺達はテントを設営中の人に話しかけた・・・
「はい?」
『え~っと・・・テントを張るって聞いてないモノで・・・』
「あ!ここじゃダメでしたか?・・・何人か張ってたのでここで良いかと・・・」
『あぁ~いや・・・なぜテントを?』
「へぇ?いや・・・旅館がいっぱいだし・・・ここに知り合いも居ないので・・・」
『あ!・・・そうでしたか・・・気になさらずどうぞ作業を続けて下さい・・・』
『ケント・・・ちょっと戻るぞ!』
「ん?なんだよ・・・」
戻って自警団本部で確認して・・・正直ホッとした・・・
『じゃあ、こっちに来た移住者用の部屋は押さえてあったんですね!』
「まあな~村長に言われてちゃんと用意してあるぞ!」
俺が心配してたのは、村民募集でこっちに来てるはずの移住者達だ・・・元々ウチの村に有る宿屋はそんなに大きなモノじゃないし、泊まれる人数だって50人ぐらいで限界だ・・・相部屋と雑魚寝を我慢してもらえるなら100人ぐらいは入るだろうけど・・・
今までの収穫祭なら宿に泊まる人も少なかったし、ほとんどの人が商品を運んだり移動手段で馬車に乗ってきていてそこで商品の番をしながら寝ているので気にしてなかったけど・・・今回はメチャメチャ人が増えさらにその原因の何割かが俺達の村で募集した村民の移動とかち合ったからのようだ・・・
『コレは予定外というか・・・考えてなかったぞ・・・』
「ん~~ちょっとまずいな・・・」
『とりあえず、募集に応じて来てくれた移住者の疲労程度を確認して・・・疲労が少ないようなら大魚亭に向かって貰った方が良いかな・・・』
「ま、予定では収穫祭終了後に一緒に行くはずだったけどな・・・」
そう・・・兄さん達の商隊に同行した徒歩の人達・・・コレはある意味俺達の村が原因だ・・・彼らの多くは王都から来ている。
王都であれば、40人程度こっちに来る人間が増えても他の方面で空いてる馬車や予備の馬車を出せば問題は出ないだろうが・・・
サウスウッドの町程度の規模だと・・・30人ぐらいは移動手段が無くなり徒歩になるだろう・・・実際には移住者が家財道具などを運ぶためそれ以上の可能性が高いし・・・とりあえず移住者が大丈夫な事を確認した俺達は休憩所を回ってテント組が何人いるのか調べてみた・・・
『63人も居るのか・・・』
「ここまで考えてなかったよな・・・」
俺達がテントを張ってる人に人数を聞いて回って調べた結果が63人・・・何人が大魚亭を目指してる人か判らないが・・・宿泊は仕方がないにしても、村に居るんだし・・・風呂ぐらいは入りたいよな・・・宿屋の風呂も大きいけれど・・・さすがに満室分はきついだろうし、露店商の人も利用するからな・・・どうしたものか・・・
俺達が頭を悩ませていると・・・夜の宴会に出るため親父達がやってきた・・・
『父さん!ちょっと良いかな?』
「ん?なんだ・・・お前も宴会に出るのか?」
ん~~言葉はハッキリしてるしキチンと歩いてるけど・・・酒臭い!・・・収穫祭だし仕方がないかな~って気もするんだけど・・・昨日のような騒ぎは勘弁して欲しい・・・
『イヤ・・・そうじゃなくて・・・』
俺とケントで状況を説明して対策が思い浮かばない事を告げるが・・・
「別に良いんじゃないか?無理なもんは無理なんだし・・・気にしたってな~」
『イヤ・・・宿屋に泊めるのは無理だと思ってるけど・・・食事は収穫祭に来た屋台とか食堂で間に合うと思うんだけどね・・・せめて風呂ぐらいどうにかならないかと・・・』
「なんだ、そんな事か・・・ここの風呂を使って貰えばいいだろ?どうせ探索者もしばらく戻らないだろうし・・・もし戻っても時間帯を分ければ平気だろ?」
そう言えば・・・自警団本部には探索者のために2日で銅貨10枚、1ヶ月で銀貨1枚支払って使えるコインロッカー?みたいな封印された木箱を置く部屋があった!俺は地元だし使った事はないが存在自体は知ってたのに・・・
ん?ちょっと待てよ・・・確かここには20以上の部屋があった気が・・・ぶち抜いた会議室というか宴会場もあるけど、自警団で使ってる部屋はそんなに多くなかったような・・・
『父さん・・・ここの部屋ってどう使ってるの?』
「ん?まあ・・・今だと自警団で11人か?・・・一応全員に個室があるようにして残りは物置に使って預かりの木箱の部屋が・・・2部屋だったかな?詳しい事が聞きたいなら自警団のヤツに聞け・・・」
『了解!・・・行こうケント!!』
「あぁ・・・んじゃあ!」
俺は急いで自警団の当番の人を捕まえ、自警団本部の使用状況を確認した・・・
本日も3話更新予定!




