059 悪意の出所
本日2話目!
第59話 悪意の出所
俺が軟禁される事になった貴賓室・・・大魚亭には貴賓棟が新設されたのだが、現在領主が使っている貴賓室に対をなして2部屋で1棟の貴賓棟になっている。
まず、入り口のドアを開け入ってすぐにある風呂とトイレ、その正面にある護衛宿泊用の部屋・・・奥に廊下が続き扉で仕切られた暖炉が付いたリビング?・・・リビングは20畳ほどでグランドベアーの毛皮が敷かれ革張りのソファーが深い色の木の内装に良く有っている・・・細かい細工がされたテーブルも見事だし・・・唯一異質というか俺が違和感を覚えるのは、俺が遊びで作った縄文式土器もどきが飾られてるところだが・・・なぜか他の人には評判が良かったりする・・・
リビングは10畳ほどの寝室と同じサイズの風呂・・・さらに露天風呂が高い塀に囲まれその外には2m程の幅で堀が築かれ覗き対策もバッチリだ!
『まあ・・・豪華な部屋ではあるんだが・・・』
こんな部屋に1人で放り込まれるのは・・・ちょっと寂しいというか・・・母さんやミーアでも居れば良かったのだろうが・・・もう村に帰ったし・・・
---がちゃ---
ん、誰か来たのか?・・・
「やあ!・・・大変だったね・・・」
あぁ~領主様かよ・・・ドアを開け入ってきたのは護衛を連れた領主様だった。
『まあ、大変と言えば大変なんですが・・・』
事情を説明しようとした俺だったが・・・
「へぇ~こっちの部屋はこうなってるんだ~まあ、基本の作りは一緒だし・・・代わり映えしないな~」
もうすでに俺の話など聞く気がないようで・・・自分の対となる部屋の見定めに興味が移ってる・・・
『はぁ~・・・』
俺は大きくため息をついたが・・・考えてみれば何にも判っていないし・・・この領主に説明するのも疲れる・・・ほうちで良いな・・・
余裕が戻った俺の目に、クルツさんとエミリオさんの管理人コンビが目に入った・・・
『あれ?クルツさんにエミリオさん・・・』
「何か大変みたいだね・・・」
「よく判らないけど僕らに警備を頼むってゴバックさんから言われたんだよね~」
『あぁ~護衛できたんだ・・・』
「うん・・・まあよく判らないけど頑張るよ・・・」
とりあえず二人には護衛用の部屋を使って貰い護衛を頼み・・・リビングに戻ったら・・・
「やっぱり絵がないと・・・寂しいよね~アレン君!」
『絵ですか・・・まあ、そのうち誰かが書いて良さそうなら飾っておきますね・・・』
「ん~ここに合わせるとすると・・・」
はぁ~やっぱり聞いちゃ居ないよこの人・・・
「お~い、アレン!」
ゴバックさんが俺の名前を呼びながら部屋に入ってきた・・・
「アレから戻ってもう一回見たが、襲った奴らはどうやら村の方に向かったようだ・・・俺はこれから村に戻って怪しいヤツが居ないかと通った旅人について調べたり村の様子を見てくるから・・・」
「お前は俺が戻るまで念のためここに居ろ!」
『襲った奴らが村に向かったのなら、ここにいるより俺達も村へ向かった方が・・・』
「イヤ、ダメだ!ひょっとしたら待ち伏せがあるかもしれないし・・・お前はここに残っておとなしくしていろ!」
「エミリオ!お前は村長にこっちの状況を伝えて戻るように伝令としてでろ!」
「了解!」
「クルツはアレンの護衛だ!まあ大丈夫だとは思うが・・・念のためだ、この部屋から出すなよ!」
「了解!」
あぁ~軟禁が確定しちゃったよ・・・
「おい!領主様よ~無いとは思うが、あんたも気を付けて部屋から出るなよ!」
「え~~僕もかい?僕は護衛が居るし大丈夫だろ!」
「いけませんサピオ様!」
あぁ~護衛の人に怒られてっるよ・・・つうか・・・俺より狙われるのってどう考えても領主の方だよね?何で俺狙われたんだ?
護衛を狙うなら、どう考えても俺よりゴバックさんを狙うだろうし・・・普通突然襲うなら、身分が高い人とか・・・狙われるような事をしてたり立場のある人なのに・・・
まあ・・・抗議しても無駄だろうし・・・反撃手段が限られた現状じゃまずは反撃手段の確保だな・・・
『判ったよ・・・ちょっとやりたい事も出来たし・・・ゴバックさんは今日村に戻るって言ってるけど・・・暗がりで待ち伏せされたり隠れてやり過ごした後戻ってこられても厄介だから、明日の朝出発して明るいところでよく見ていった方が良いと思う』
「ふむ・・・まあそれも一理有るか・・・今から馬を飛ばせば明日の昼には村に着くが・・・危険を減らすならそっちの方が良いな・・・」
こうして俺の軟禁生活がスタートしちゃった訳だが・・・
暇すぎる・・・銃の改造をしようかと思ったが・・・パーツが作れないし・・・試射もダメ・・・寝ようかとも思ったが・・・
『このベッド無駄に広くて柔らかすぎる!』
『本でも読むか・・・』
ゴバックさんが出て行って2日・・・上手く行けば明日には戻ってくるだろうし・・・頼んでた銃のパーツも設計図と一緒に特急で仕上げてくれってとりあえず銀貨20枚も渡してるから・・・
『しかし、大魚亭の中ぐらいなら問題なさそうなのに・・・』
『それに・・・』
アレから暇に任せて色々考えたが・・・素人2人にプロらしいのが1人って・・・どう考えても脅しだよね?
プロが混じってるのに失敗するって普通無いでしょ?だって、俺がそのメンバーを選ぶなら・・・2人の素人で奇襲を掛けておとりにする裏でプロが確実に仕留めるようにするもん・・・
んで・・・脅しって考えると・・・馬鹿貴族とかくそ爺国王が候補に上がるんだけど・・・いきなり狙うのが俺って・・・なさそうなんだよね・・・
『後は・・・前にもめた馬鹿職人ぐらいか?』
『でも・・・俺より親父を狙いそうなんだが・・・』
ん~考えても情報が少なすぎて答えが全然思いつかないぞ・・・ん~貴族や国王の線だと・・・王都の兄さんは無事かな・・・
村で母さんやミーアを狙ってたら・・・
『よし!くそ爺を殺そう!!』
「ずいぶんと物騒な話が聞こえてくるね~」
げ!領主!!突然声を掛けてくるなよ~心臓に悪いだろ!!
「そんなに驚かないでよ~義父として息子を心配して様子を見に来たのに・・・」
『アリガトウゴザイマス、ちょっと疲れたので・・・』
会話が成り立たないヤツに何を言っても無駄だと思い、適当に調子を合わせ寝室に逃げ込もうとしたが・・・
「お!義父だと認めてくれるんだ・・・しかも今回の黒幕が国王だと思ってるなんて鋭いよね~」
『!!!・・・』
やっぱ油断しちゃダメな存在だこの人・・・ガキっぽいのに・・・
『サピオさんもやっぱり貴族か国王の線だと思いますか?』
「ん~~まあ、息子の質問だし・・・そうだね~たぶん馬鹿貴族アタリの脅しか警告じゃないかな?」
『でもなぜ?それに警告とか脅しなら兄さんは・・・』
「あ!そっちね~そっちはたぶん大丈夫!」
『え?・・・』
「今回の件はね~アレン君!君を狙ったモノだろうからね~」
『へぇ?何で?』
「もう~鋭いくせに自分の価値が判ってないなんて・・・まあ、そこも又可愛いんだけどね~」
「君は自分の価値が全然判ってないようだから教えてあげるけど・・・ここって今、凄く人気があってかなり儲かってるでしょ?」
『えぇ・・・まあ・・・でもそれがなぜ?』
「あのね~この王国って結構深刻な状態なの判ってる?」
「貴族はもちろん王家にだってお金が無くて・・・体面を保つのがやっとの状況なんだよ?移住者にしたって、王家じゃ負担を軽くするために新規で開拓とか貴族に押しつけたいのに手頃な貴族は居ない・・・だから自分の派閥のぼんくら息子を他の貴族に入れて、その条件で開発させようと焦ってるのに・・・ここはどう?」
そう言えば、移住者への支援が薄いとか金額が減ったって話聞いた記憶が・・・あ!新規の従業員からだ・・・
「ん~まだちょっと判ってないようだけど・・・答えを言うとね!」
領主がその後はなしだした答えとやらは・・・
どうやら新規の従業員で移住者を王都から呼んだのが目を付けられた原因で・・・表だってはいないが・・・反国王派と見られてるサウスウッド家が移住者を呼び込めるぐらい力を増してるが・・・縁組みしようにも現状では不可能な状態にあり王都での言動や周りの状況から俺が婚約相手だとバレタのと、この状況を作ってるのが俺だと目を付け・・・一挙に葬るかサウスウッド家から譲歩を引き出すために狙ってきた!って事らしいんだが・・・
『でもなぜ・・・僕は襲われただけで生きてるんでしょう?』
「そりゃ~ね!あの人達もお金が欲しいからだよ!」
『???』
「まだ判らないようだね~脅しでこっちから譲歩を引き出し・・・まあ、この場合は破談とか養子の話の無効だろうけど・・・」
『はぁ・・・』
「考えてごらん・・・領主の娘との縁談が流れて、君が我が領内に居られると思ってるの?ウチにだって体面があるから追放とか修行とか適当に理由を付けて・・・」
『そうか!・・・その後甘言で取り込みに来る・・・』
「正解!本当、貴族の世界ってめんどくさいよね~まあ、今回ウチが譲歩するなんて・・・僕は考えてないけどね~」
『へぇ?・・・何をする気何ですか?』
「そりゃ~もちろん、ここに投資してさらに発展させて国王に一泡吹かせるに決まってるじゃない!!」
ニッコリと笑いながらそう俺に話すサピオ氏・・・すげー怖いんですが・・・顔は笑ってるのに笑ってない目って・・・
「ちょうどね、こっちに来て海を見たでしょ?で・・・道が結構厳しいのも知ったし、それにもまして食材が美味しいのも判ったからね~」
あ~それも考えてのアノ迷惑な同行か・・・やっぱ怖いYO・・・どこまで先を読んで行動してるのかさっぱり判らんぞ!
「ま、海までの道と休憩に宿泊の拠点・・・出来れば少し海に開拓の拠点を作るぐらいまでは持って行って・・・移住者を呼ぶつもりだからね~頑張ってちょうだいね~ア・レ・ン君!」
『へぇ?俺がやるの?・・・あ!僕がやるんですか?』
「言い直さなくても良いよ!もっとフレンドリーに話そうよ~」
この後は頭の痛い会話がメインになったので・・・記憶から消去する事にした。




