005 ばれた!けど・・・
第5話 ばれた!けど・・・
突然、俺に前世の記憶が戻ったことを見抜き爆弾発言をした母さんが、混乱してる俺に優しくかたり続ける・・・
『別の記憶ってね強い衝撃とか病気やなにかで心身に大きな動きがあるとね、結構思い出すモノなのよ・・・』
『別によくあることだし、思い出すって言っても技術や経験、生活環境何かのことだからこっちじゃ誰も気にしてないわよ・・・』
『大体ね~移住者が沢山居るんだし記憶があるって言っても、何を今さらって感じでしょ?』
『ところでアレン・・・どうして隠そうとしたり、ちょっと指摘しただけで様子がおかしくなったのかな~』
明らかに優しい目からいじめっ子のような目つきに変わった母さんが俺に聞いてくる(これは全部わかっていてからかってるな・・・)
「だって・・・そんな子は私の子じゃないとか・・・追い出されるんじゃないかと・・・」
『バカね~この子は・・・何を思い出そうがあなたは私が産んだことに変わりがあるわけじゃなし、自分の子供を追い出す親がどこに居るんですか!』
俺のストレートな告白を聞いた母さんは、いじめっ子の目から優しい目に変わって俺を優しく抱きしめてくれた・・・
突然の混乱から急激な安心感、優しく抱きしめてくれる母さんのぬくもりでちょっとほろりとしていた俺が自分の記憶にある異世界モノ定番のパターンをいくつか言うと・・・
『え!もうそんなにいっぱい思い出してるの?』
ちょっとびっくりしつつ、好奇心にあふれる目で色々聞いてくる・・・
「か、母さん・・・そんなに一度に聞かれても答えられないって・・・」
『そ、そうね~まあ、とりあえず後回しでも良いか~』
『あ!もうこんな時間・・・早くお昼ご飯の用意しなくっちゃ・・・』
『アレンは教会にミーアを向かえにって来て!・・・帰ってくる頃にはお昼ご飯も出来てると思うから・・・』
「え!家の中が静かだと思ったらミーアって教会なの?」
『ええそうよ!アレンの勉強が始まるし、今は収穫と狩りの時期で子供を教会で預かってくれるから行かせてるけど、今日はお弁当じゃなくお昼にはいったん迎えに行ってうちでご飯を食べるから迎えに行って欲しいの』
「うん判った!じゃあ迎えに行ってきます」
『あ!ついでに、お父さんが物置か薫製小屋のあたりで作業してるはずだからもうすぐご飯だって言っておいてね~』
「は~い」
ん~まさに案ずるより産むが易しって感じか?
気が付いたら異世界で前世の記憶がよみがえるなんてどうなることかと思ったが、こっちじゃありふれた事みたいで軽く流されてたし・・・(なんだか意気込んでた割に拍子抜けって感じだよな・・・)
「さてと・・・父さんはどこだ?」
あ~居た居た・・・家の裏にある薫製小屋で忙しそうに薫製を作る準備をしてるみたいだな~
「父さん~もう少ししたら昼ご飯だって母さんが言ってたよ~」
『お~う判った!』
『もうこんな時間か・・・ところでアレン、お前はどこに行くんだ?』
「あ~うん、母さんに頼まれてミーアを迎えに行ってくる」
『お!そうか・・・んじゃあこっちを片づけちまうから、帰ってきたときにもう一回声をかけてくれ』
「うん、判ったよ父さん」
父さんと話した後、俺は教会にミーアを迎えに行くため歩き出した。
教会へ向かうため歩きながら俺はぼんやりとこの世界の技術について考え始めた・・・
「今歩いてる道・・・石畳だけどきちんと舗装されてるな・・・」
「建設用重機とか見たことがないけど・・・やっぱり思念法とか言う魔法で何とかしてるのかな?それとも古代ローマ時代みたいに技術と人の力なのかな?」
「ふう、つうか・・・教会まで結構距離があるな~さすが10歳児ぼでぇー!」
「まあ、大人の足なら1kmぐらいだしたいしたこと無いんだろうけど・・・ん?そろそろ市場か・・・もう一踏ん張りだな!」
『お!アレンじゃないか・・・もう身体は大丈夫か?』
市場を少し過ぎたあたりでずんぐりとした身体の大きな男に声を掛けられた・・・
「あ!ゴバックさん・・・助けていただいたのにお礼もまだですいません・・・身体の方は念のために後1~2日安静安静にって言われたけどもう大丈夫です」
『そりゃ~何よりだ・・・お礼なんて別に気にしないで良いけど、もうあんな無茶するんじゃないぞ!』
『まあ、気持ちは判るけどな~』
ちょっと怒った目をした後、にやりと笑いながらグリグリと頭をなでられた・・・
(ちょ・・・痛い・・・ゴバックさん力が・・・)「痛・・・」
『おっと・・・病み上がりにはちょっとまずかったか・・・』
「いえ・・・大丈夫ですけど・・・」
「ところで、こんなところでゴバックさんはどうしたんです?」
『ん?おりゃ~昼だから教会までケントを迎えに行く所だ』
『そういうアレンは、治療院に行くって訳でもなさそうだが・・・』
「あ!僕の方は教会にミーアを迎えに行くところです。」
『おぉ!そういや訓練を始めるって村長が言ってたな~』
『2~3日後には今回の狩りの回収があるし、村長がアレンを連れて行くなら、うちのケントもそろそろ仕込み始めようかな~』
『今回出かけるのは北の荒野と街道沿いの森だし・・・そんなに危ないこともないだろうからな~』
『自警団本部でやる今日の寄り合いの時にでも聞いてみっか!』
ゴバックさんと話をしながら教会へ行き、ミーア達を引き取り昼ご飯のためそれぞれの家に向かいながら又ちょっと話して分かれた・・・
昼食後・・・寄り合いに行く親父を送り出し、ミーアを昼寝させ一息ついたところで母さんとの勉強?尋問?が始まった。
『それじゃあアレン、落ち着いたところでどんなことを思い出したのか話して!』
『どんなで世界?どんな技術?』
「ん~ぼんやりとして思い出せない部分も多いけど・・・」
「僕は、地球って呼ばれる星の日本て言う国で生活してたみたい・・・」「ココと違って魔法・・・想念法もなかったし・・・科学技術が発達してた世界だったな~」
『へ~そうなんだ~、あ!魔法でも通じるよ、私の居た世界じゃ想念法じゃなく魔法って言ってたし・・・』
『まあ、こっちの世界の魔法って自分の魔力で世界の力をイメージしたように具現化させるのがそうだから「想念法」って言われたら納得なんだけどね~』
『私が元居た世界じゃ「精霊魔術」とか「神聖魔法」って言われてた使い方に近いかな~』
「へ~「想念法」っていまいちイメージできなかったけど、母さんの元居た世界の言い方だと、僕が思い出した世界での物語やゲームのイメージで何となく判るよ!」
『へぇ~って、物語はともかくゲームって?』
「ん~っと・・・物語の世界を機械で・・・ん~っと・・・」
「遊びとか娯楽で、架空の世界(物語の世界)を擬似的に楽しむって言うか・・・」
「え~っと・・・こっちにも将棋とかチェスはあったな・・・」
(説明が難しいな~どう言ったら良いんだ?)
「将棋とかチェスをテレビとかパソコン・・・んと、機械の画面に映して離れた場所の人とか、ん~機械の疑似人格と遊ぶんだ・・・」
『へぇ~よく判らないけど難しそうね~・・・アレンはそう言った技術者だったの?』
「んっと~違うよ、僕はそう言った物が好きでよく遊んでたってだけ・・・」
『ふ~ん、じゃあアレンは何の技術者なんだろう?』
「母さん、何で技術者限定なの?」
俺が質問すると母さんはあきれたようにこう言った・・・
『まったくこの子ったら・・・アレン!教会でのお話しをちゃんと聞いてなかったの?』
『良い?この世界はね神様がお作りになって小神様が管理をしてるけど、住んでる私たちは色々な世界からこの世界を発展させるために集められた技術者なのよ』
『私だって結構優秀な土系統の魔法使いだったんですから・・・』
「え!母さんって魔法使いだったの?」
驚いた俺が思わず叫ぶと、危険な目つきに豹変した母さんが急に怒り出しこう言った。
『ア~レ~ン!!お前が今まで全然勉強してないことがよく判りました!』
『今後の教育はお父さんと考え直すことにしますが、とりあえず・・・そうね~お父さんの書斎にある「神殿と教会の説法集」って題名の本を持ってきて、目の前で読み上げてもらいましょう』
(うわ~母さん・・・目が本気で怖いです。)
「は、はい!」そう返事をすると俺は父さんの書斎から言われた題名の本を持ってくるため急いで今を出た・・・
夕食までに5回、寝るまでにさらに3回「神殿と教会の説法集」(43ページ)を全部声に出して読み上げさせられた・・・
途中からミーアが俺のまねをして読み上げて、まだ字の読み書きができないし舌っ足らずなもんでぐだぐだになったのでやっと勘弁してもらえたが疲れた・・・
両親の話し合いの結果、俺への教育はさらに厳しいモノになるようで鬱になりそうだったが、ゴバックさんと親父の相談で3日後の狩りの回収には俺も参加することになった。
疲れ果てた俺は、風呂から上がるとすぐにベットへ潜り込み眠りの世界に旅立っていった・・・
(なんか、当初の予定と全然別なことで精神力が持たないんですが・・・異世界生活ってこんな感じが普通なの?)