057 悪夢の再来④
本日ラスト!3話目です。
第57話 悪夢の再来④
俺達って言うか俺とケントが戻った大魚亭周辺には、大量のお客があふれていた。
『あ~何か凄いね・・・何でこんなに居るんだ?』
「そりゃ~ここの事を知ってるヤツも、話を聞いてるのもここの再会を待ちわびてたからな・・・知ってるか?ここを使いたいって話の数!」
『なにそれ?親父は何も言ってなかったけど・・・』
「いや・・・ここを改装って言うか増築で一端締めてたろ?しめた後でドンドン使いたいって話が来だして・・・俺が聞いてるだけで千件近い話が来てたはずだぞ!」
『な、千件って・・・マジ?さすがに多すぎだろ・・・100件ぐらいの間違いじゃ?・・・』
「いや・・・俺が直接聞いた訳じゃないけど、締めてるのを知らない王都や他の町なんかからも結構問い合わせが来てたから・・・」
俺はケントから聞いた話の規模を信じられない思いだったが・・・船の上からでもこのにぎわいを見ると、あながち間違っても居ないような・・・
そんな事を考えながらも、大型船は船着き場に到着し・・・周りにいた人の感嘆の声とボート係の仲間に迎えられ無事に接岸し、大量の積み荷を降ろし始めた・・・
「チイ兄ちゃん!」
予想外に掛けられたミーアの声に反応してきょろきょろと探すと、荷物を船に移動させ一足先に付いたらしい親父と、なぜか母さんとミーアが俺を待っていた。
『早かったね父さん・・・母さんはミーアと遊びに来たの?』
「あぁ~荷物を馬から下ろしてほとんど船に移動させたからな・・・」
「ここが新しくなったって聞いてたからミーアと見に来たのよ」
「アレンちょっと・・・」
俺が母さんやミーアと話そうとしたら、挨拶もそこそこに親父に連れられ丸太小屋のコテージに連れて行かれると、シェフの佐藤さんホテル支配人の沖田さん、ゴバックさんの3人が親父と俺を待っていて・・・
「来たな・・・じゃあ話を始めるか・・・」
ゴバックさんのかけ声?で話し合いが開始された・・・
「今回、海で収集してきた食品類だが・・・量としてはかなりあるが、見て判ってると思うがこの人気で・・・料理長の判断では二ヶ月持たないモノがほとんどだそうだ・・・」
『げ!・・・マジで・・・』
思わずつぶやいた俺の声に反応して佐藤シェフが済まなそうな顔で俺を見る・・・(そんなつもりじゃないんだが・・・)
「まあ、驚くのも無理はないと思うが・・・」
「現状を報告させて頂きますと、ホテル部門の大魚亭は当面・・・約二ヶ月は満室です。コレは旧館の16室と新しい16室の32室ともで・・・キャンプサイトの方もかなり無理をして詰め込み状態になっており・・・炊事の場所やトイレでの行列など問題が散見されていまして・・・早期の解決要望がありますが・・・」
『ぐあ・・・そっちもか・・・』
ホテル部門の報告を沖田さんから聞いた俺が絶望的な顔をしていると・・・
「アレン!落ち込んでる暇なんて無いぞ!!何とかするしかないんだ!」
親父・・・
「ここの責任者はお前だ!まあぁ~色々言いたい事もあるだろうが・・・一応そうなってるんだ・・・皆お前の指示を待って居るぞ!」
へぇ?・・・うがぁ!親父のヤツ俺に丸投げかよ!
ゴバックさんもニヤニヤと笑ってるし・・・くそ・・・鍛えるって言っても限度があるだろ!!
俺はまだ11歳のガキで・・・あ!誕生日過ぎてる・・・12歳か・・・まあ、こっちじゃ別に誕生日を祝う習慣なんて無いし・・・年明けで扱いが変わるから誕生日って言ってもな・・・
それにしても12歳のガキに期待しすぎって言うか・・・問題を丸投げって、やりすぎじゃないか?
不満が目に出ていたのか表情を読まれたのか・・・
「アレン!早く指示を出さないと問題は山積みだぞ・・・」
「ま、手伝ってはやるから・・・さっさと指示を出せ!」
親父もゴバックさんも・・・そのニヤニヤ笑いをやめろ!くそ・・・こうなったら・・・
『じゃあ・・・とりあえず・・・ゴバックさんは・・・領主様の対応係を・・・』
「げ!・・・マジか・・・」
『父さんは、トイレと炊事場の増設を担当してもらいましょうか~ね~』
「ぐあ・・・わ、わかった・・・」
『さあ、お望みだった指示を出したんです・・・きりきり働いて下さいね!』
「っち・・・しょうがねえ・・・」
「こう来るとは読めなかったぞ・・・」
愚痴っぽい事を言いつつお互いに責任のなすりあいをしながらだったが・・・何とか指示した行動を開始したようだ・・・
『さて・・・食品関連は・・・とりあえず最大で2ヶ月ぐらい、その間に今回ぐらいの量をさらに持って来たら1ヶ月程度伸びるって考えで良いのかな?』
「そうですね~基本的にホテル利用のお客様だけに対象を絞れば・・・2倍から3倍長持ちというか消費が押さえられますが・・・」
「こちらの名物というか・・・バーベキューは人気ですし、コレをホテル利用者のみに限定すると相当な不満が出そうです。」
『ん~単なる炭火焼きで、そんなに工夫してるわけでもないのに・・・何でそんなに人気なんだ?』
「「さあ?」」
『まあ、そっちは・・・現状で出してるリバーシュリンプや海の幸系統から、肉類中心にして海産系や魚介類を減らすか・・・料金設定を作って何種類かコースって言うか選べるように変えれば結構持ちが違うんじゃないか?』
「ん~どこまで押さえられるか・・・海の幸って珍しいし、美味しいですから・・・」
「そうですね~王都やこの周辺の町や村でも見かけないですから・・・結構それ目当てで人が集まってるかも・・・」
『ん~ま、とりあえず提供素材のコース分けと入手しやすいモノや安いモノの方を工夫して、入手が困難だったり高く付く方はそれなりの工夫で消費を押さえる方向で佐藤さんお願いします!』
「どこまで出来るか判らないが・・・試してみますね!」
「それでは、早速!」
2人が大魚亭に戻り一息つきたいところだが・・・留守にしていた間の事を聞いたり、他にも問題があるか聞かなきゃならんから・・・後ろ髪引かれる思いで丸太のコテージを後にした。
その後、大魚亭や他の関連施設を見て回り・・・現場での問題を聞いたりその場で対処法を考え指示したりしながら1日が終わり・・・
『ん~とりあえず炊事場とトイレの方は父さん達が作ってるから・・・2~3日で有る程度問題は緩和されるだろうけど・・・』
『海の幸は・・・少数でも何とか出来る方法を考えるか、道をもっと整備して一気に運べるようにしなきゃな・・・』
鉄道でも通せば問題は解決するが・・・そんな知識も技術もない物を作る事も出来ないし・・・建設用の重機があるわけでもない・・・
『地道に想念法で道を整備するしか無いかな・・・』
「どうした?眠れないのか?」
ブツブツと今後の事を考えながらコテージの居間?に居た俺に、大魚亭で酒を飲んでいたのであろう少し酒の臭いをさせた親父が話しかけてきた・・・
『ん~眠れない訳じゃないんだけど・・・色々考えちゃってね・・・』
「そうか・・・まあ、俺の経験から言うと・・・疲れた頭で考えても、ろくな考えなんて出てきやしないからさっさと酒でも・・・は、ちょっと早いから・・・ん~ま!風呂にでもゆっくり入って寝てから考える事だな!」
『ん~~そうするかな~~』
まあ、確かに親父の言う事にも納得できる部分があるし、本気で疲れていたので・・・俺は大魚亭に戻って、本日2回目の温泉を今度はゆっくりと堪能してコテージに戻って寝る事にした。
翌朝、少し遅めに目を覚まし朝食を取りに大魚亭へ行こうとすると・・・
「アレン!飯なら母さんが作ってくれたのがそこにあるぞ!」
コテージの居間にあるテーブルの上に、ふかふかのパンと冷製スープ親父特製のソーセージに目玉焼きにしゃきしゃきのサラダまで用意されていて、俺はむさぼるように平らげたのだが・・・
「アレン・・・そう言えば何だが・・・海に置いてきたテントとか・・・いつ回収するんだ?」
『あ!忘れてた!・・・』
「なんだ・・・忘れてただけか・・・俺はてっきりすぐに海に採取に向かうから、しばらく交代で向こうに行けるかと思ってたんだが・・・」
『ふむ』・・・親父の考えを聞いて悪くないと思った。大人数は無理でも少数なら・・・荷物限定なら馬車も使えるかも・・・船だって活用できるし・・・必要なら湖の対岸に休憩拠点、海の方に宿泊拠点を作れば・・・ダメだ・・・人手が足りない・・・でもいずれは・・・様々な考えが浮かんでは消え消えては浮かんでくるが・・・
『父さん、昨日父さんに頼んだ仕事ってどれぐらいで終わりそう?』
「ん?トイレと炊事場の増設か?どっちも基本、既存の施設に隣接させて作ってるし、トイレの増設については例の「スライム式」も使うから・・・そうだな~きょ、いや・・・明日には有る程度増設が終わると思うぞ」
『ん~じゃあ・・・その後で、海までの道を何とか荷馬車が通れるレベルに出来ないかな?』
「うむ・・・アレで結構時間が掛かってるからな~」
「だがまあ、小型の荷馬車レベルなら・・・後は森を抜ける道だけでも何とかなるから・・・狩猟団総出だと1週間、半数で2週間からさらに1週間って所だろう・・・」
とりあえず、湖の対岸から海に向かう道を有る程度整備すれば・・・対岸からは荷物を船で・・・人は馬で移動すれば負担もあまり掛からないし・・・
『海と対岸の道を重点的に整備する方向で・・・何とか人が馬を引いて歩くんじゃなく荷馬車に乗って移動できるレベルだと、全員で掛かって2週間ぐらい?』
「ん~対岸と海の間だけか・・・それを荷馬車に乗れるレベルか・・・ま、総出なら2週間有れば何とか行けるだろう!」
『じゃあそう言う事で、居間の作業が終わり次第お願いします。』
「おう!みんなにも俺から言っておく!」
こうして一端動き出した流れはとどまる事を知らないように流れ始め・・・さらなる動きを加速させていく・・・
この時の俺は、狩猟団総出・・・護衛を連れたまま滞在するサピオ氏・・・急に発展し人が増え続ける湖湖畔・・・その全てを軽く考えていた・・・
一応明日も休日更新で3話更新予定ですが・・・
ちょっとまったく違う話のネタを思いついちゃって・・・
今後は毎日か不定期で1話更新になるかも・・・出来るだけ毎日更新と休日3話更新を続けていこうとは思うのですが・・・
決まったら又後書きにでも・・・




