054 悪夢の再来
本日ラスト!3話目です。
第54話 悪夢の再来
あの時・・・なぜ俺は親父に相談なんて考えたんだ?
後でそう思うほどきつい出来事が起こった・・・そう俺の目の前に今居るのは・・・領主だ・・・
昨日、今後の大魚亭運営に関する問題(海産物系食品の補充問題)ってヤツを狩猟団団長と協議すべく・・・って言うとかっこいいかも・・・
ま、親父に海に行かなきゃ!って話を持って行った訳なんだが・・・
釣りにでる寸前で捕まえた親父とゴバックさんの両名が・・・
「「良いんじゃないか?無いなら採りに行かなきゃな!」」
ってあっさり同意というか遠征に賛成するのは読めてたんだ!
うん・・・ここまでは俺も考えた・・・
だから、釣りにでる寸前だったし・・・すぐに親父達を解放して明日の調整に向かった俺はまずい対応をした訳じゃないはずだ・・・
でだ・・・翌日朝から完成披露宴の準備に取りかかった俺が昼飯を喰いに食堂に戻ったら・・・領主様とごたいめ~ん!・・・なぜ?
俺が聞いていた予定だと・・・1週間後に来るはずの領主が、なぜかニコニコと笑いつつ親父達と歓談してるんですが・・・
『アレ?ユメデモミテルノカナ??』
「やぁ!アレン、元気だった?」
ん~幻聴まで聞こえるとは・・・
「おい!仮にも領主様だ挨拶ぐらいせんか!」
「おいおい、ゴバック!仮にはって失礼な!僕は正当なサウスウッドの当主でここの領主だぞ!」
「あ・・・まあ~言葉のあやだ気にするな!」
ボクノイシキはいまだフリーズチュウデス・・・そんな俺の肩を(ぽんぽん)って親父!なんだその全てを諦めきった悟ったような目は!
『えっと・・・お久しぶりです御領主様・・・ずいぶんとお早いお着きで・・・』
「うん、我慢できなくて急いで来ちゃった!」
って、子供かよ!・・・我慢だ!ここは辛抱して乗り切るんだ!頑張れ俺!
『はあぁ・・・さようで、一応・・・滞在期間の御予定をお聞かせ頂けると・・・』
「ん~結構変わったみたいだし・・・しばらく滞在する!そうそう!大型船も完成したんでしょ!あと、パークゴルフって言うのもやってみたいし・・・もう泳げるかな?」
『はぁ・・・大型船は素晴らしい出来ですので是非お試し頂きたく(あ!コレは本当勘当しちゃう出来だよ!)パークゴルフも皆様に大変好評です・・・ただ・・・泳ぐのはいささか気がお早いかと・・・』
「ね~アレン君・・・さっきからなんか他人行儀って言うか反応が冷たいよ!」
『はあぁ・・・私は現時点では当施設の責任者ですので・・・』
「それはそうなんだろうし・・・公私の区別をその年で使い分けるのは義父として頼もしいと思うんだけど~」
ちょっと待て!なんか今さらっと聞き捨てならない単語が飛び出さなかったか?確かに婚約の話は聞いてるが・・・時間稼ぎのための話だったよね?
「まあ、他人じゃないんだし・・・プライベートではもっと気楽に話してね!」
『ぜ、善処いたします・・・』
俺はその場から逃げ出すように離れ・・・よろよろと外に出て行き、宴の準備中の庭に設置してあった椅子に腰を落とすと・・・
「よ!その顔ってことはもう会ったな!」
などと話しかけてきたケントをみて事情を聞いてみた。
(まあこいつならゴバックさん経由で事情を知ってそうだし)
ケントから聞かされた話は・・・どうやら本当に待ちきれなかった領主がうちの村に人を送り込んで情報を集めていたらしい・・・それで、早くも進水式の時点で大魚亭に来たかったらしいが、さすがに貴賓室もまだ出来ていないので親父を始めみんなの反対で我慢していたらしいのだが・・・
完成記念の祝賀会って言うか宴がある事を掴まれた時点で暴走しちゃったらしく・・・予定を大幅に繰り上げ来ちゃったんだって・・・
『はぁ~~~』
俺は大きなため息をつてここまでは現実を受け入れたよ!だけどね!・・・ケントから聞かされた次の現実は甘くないというか・・・大きく予想を裏切って受け入れるのに夜まで掛かったよ!
「で・・・来るってさ!」
『へぇ?』
「いや、だから・・・海まで付いてくるんだって・・・領主様・・・」
いまなんと?え!確かに昨日親父達と食材収集の話はしたけど・・・
『なんで?どうしてそうなった!』
俺の叫びが辺りに響き渡る・・・
「落ち着け!落ち着くんだアレン!」
『はぁはぁ・・・ふぅ~~~』
『なあケント・・・俺って最近何か悪い事でもしたかな?』
「あぁ~気持ちは判るけど・・・冷静になれ!もう一回深呼吸だ!!」
『あぁ・・・(すぅ~~~はぁ~~~~)コレで良いかい?』
「どうだ少しは落ち着いたか?」
『うん、逃げ出したいって考えられる程度には落ち着いた・・・』
「ん~まあ良いか・・・じゃあ話すぞ・・・」
なんでも・・・敗因は情報の漏洩と領主の責任+権限ってヤツだそうだ・・・
俺が昨日親父達に海に行く話を相談したのが、到着早々に領主にバレて・・・(スパイでも潜入しているのか?)それに興味を持った領主が付いてくるって言い出した事はまあ理解できた。
当然まわりも親父達も反対した訳なんだが・・・俺達が向かう海ってサウスウッド家の領地らしいんだよね・・・まあ、領地って言うか・・・この辺りの王国南部辺境の地は測量されてる地図があるわけでもなく、適当に・・・高い山に囲まれた大陸の谷間から今居る半島の先までサウスウッドの領地って事になってるらしい・・・凄い広さだけど・・・昔、開発の進んでいない辺境を「ここから先はサウスウッドの領地!」って感じで適当に決めたら凄い広さで・・・まあ・・・だからこそ親父が開拓なんてすることになった原因でもあるらしいんだけど・・・その話はおいておき・・・
貴族が領地を巡察したりその領地を把握するのは有る意味当然の義務であり・・・そこでの産業や人の暮らしを把握して税を決める権限があるそうなんだ・・・
で、周囲からの反対にあった御領主様が持ち出したのがその話!
つまり・・・「自分には、自己の領地を把握し視察・巡察を行う義務と責任がある」ってヤツ・・・で・・・コレに反対できる人が居なくなったので決定しちゃったんだと・・・
(やっぱ、俺・・・逃げても良いよね?)
って訳で・・・冒頭に戻るというか・・・
あまり記憶に残ってないけど・・・昨日施設完成の宴が無事に済んで・・・ちょっとした嫌みのつもりで、今日海に出発って言ってやったら・・・「早速海に行こう!」ってこっちの施設より海に興味を引かれてた領主の一言で決定が下され・・・今、俺の目の前に領主が居るって訳だ・・・
「アレン・・・疲れてるのか?さっきからブツブツと独り言を言ってるようだが・・・」
『いえ・・・多少疲れはありますが大丈夫です』
「そうか・・・疲れてるなら私の隣で休ませながら海に行こうと思ってたのだが・・・」
いや・・・そんな残念そうに言わないで下さいよ!あなたの隣なんて海に行くまでに死んじゃいますって・・・精神的に・・・
まあ・・・海に行くのに何で隣って思うでしょ?
だって、湖の周辺は湿地帯で馬車なんて無理だったはずだからね~
だけど・・・驚いた事に、道が出来たんですよ!
パークゴルフ場を整備した後で親父達がセコセコと何とか馬や小型の馬車ぐらいなら通れる道を湿地帯に造って、海までの森も切り開いてる途中だったらしい・・・まあ~舗装とかされてる訳じゃない単なる土がむき出しの獣道?ってかんじの細い道なんだけど・・・有ると無いとじゃ大違いだし・・・だからこそ相談した時あっさり海に行こうって話に乗ってきたらしいんだよね・・・
で、狩猟団から俺達親子にゴバックさん親子+6名で10人・・・領主とその護衛で10人の計20人が海に向かう事になってるんだけど・・・馬で向かうのかと思ったら、領主様はどこからか調達した2頭だての小型馬車で・・・残りが馬でって事らしい・・・
しかし、こんな道で馬車を使うって正気なのかね?
サスペンションなんて存在しない小型の馬車で、がたがたの未舗装道路?を馬についていくのって・・・想像しただけで酔いそうなんですが・・・
(この予想はすぐに当たる・・・)
「んじゃあ~とりあえず用意も出来たし・・・出発・・・」
普段と比べると、まったく覇気も元気もない親父の声で大魚亭を出発し、親父達の苦労を忍ばせる道をひたすら進み3時間ほど・・・森までまだ半分以上残した辺りでの休憩で領主様が撃沈!
いや~頑張ったよね~あの中で3時間て・・・俺は地獄だと思うよ!
一応、出発前に親父とか周りの人が注意して馬で行くように進めたらしいんだけど・・・貴族の体面なのか・・・馬車で行くって頑張ったらしいんだよね・・・領主様・・・
ま、やっと納得したようで・・・ここに馬車を残して騎乗で海に行く事に同意したらしいんだけど・・・荷馬って騎乗でも使えるのかな?ま、馬は馬だし何とかなるか~
結局、乗馬の得意な護衛が荷馬に乗って領主様に騎乗用の馬を使わせたようだ・・・ま、おかげで移動速度も上がったし・・・昼過ぎには冬に休憩した森の手前まで何とか到着して・・・昼食準備です
頑張って準備したので・・・何とか今週も3話更新に耐えられそうです。




