004 教育と訓練?
第4話 教育と訓練?
最近寝っぱなしだったのとワクワク感が抑えられず寝られないかも・・・な~んて事は全くなく、ぐっすり寝ちゃった翌朝・・・
さっそく教育?の座学です。(講師は親父)
「んじゃあ始めっか!」(親父・・・テンション高いな・・・)
ちょっと親父のテンションの高さに引いちゃったけど、俺も楽しみにしてたからここは元気よく・・・
「はい!お願いします。」
「まあ~とりあえずアレンがどの程度知ってるか確認すっか~」
「アレンはこの世の成り立ちは知ってるか?」
俺はだんだんとなじんできたこの世界の知識を思い出しつつ自信なさげに答えることにした。
「え~っと・・・村の教会で聞いた話ぐらいなら知ってるけど・・・」
「アレ以外に何かあるの?」
「ん~っと・・・んっじゃあ・・・神がこの世界を作って、わしらのご先祖が色々な世界から集められたり、ほかの世界で集められた祝福されし魂がこの世界に生まれてくるのは知ってるな・・・」
『「魔の誕生」「小神契約」とか教会の話は全部知ってるんだな?』
「うん・・・たぶん大丈夫だと思う・・・」一応、うちは村長の家だし教会には結構まじめに行ってるからね~
(ガキの頃は居眠りして母さんに怒られてるけど・・・)
『ん~じゃあ、うちの歴史とか聞いてる?』
「え~っと、うちのおじいさまが貴族の4男で、この村の御領主様がうちの本家で・・・父さんのイトコが今の御領主様なんだよね?」
「んで、この村が開発されたのは、今の御領主様が家を継いだとき国王陛下に、領地辺境の開発を約束して父さんが開拓団を作って始めたんだよね?」
『ん~・・・』おれの答えを聞いたとたん難しい顔をしてうなりだした親父・・・
(何かまずいことでも言ったか・・・村で聞いた話じゃこんな感じだったんだけど・・・)
『まあ・・・これも教育だし・・・話しておくか・・・』
『アレン!、これから話す事は知識として知っていた方が良いけど、表で話しちゃダメな話だ・・・お前秘密を守れるか?』
『もし自信がないなら、もう少しお前が大きくなってからにするけど・・・どうする?』
初日からいきなり秘密の話とか・・・ハードル高くない?
「だ、大丈夫です・・・たぶん・・・」
『ん?ああぁ~わりぃわりぃ!そこまで深刻な話でもないんだ・・・一応な・・・建前として公式な場とか表だって話すなって事だからそんなに緊張しなくても良いぞ!』
『実はこの村の開発な・・・俺も領主のサピオも国王にはめられたんだ・・・』
『まあ、サピオも家を継いだときは若くってな~貴族の腹芸なんて全然ダメだったから、当時のくそ爺・・・あ!国王な!・・・あいつに引っかけられちまったんだよな~』
「引っかけられた?」
『ああ・・・うちの本家は貴族って言っても貧乏貴族でな~』
『サピオが家を継いだときは爺様やら婆様やらが、寿命やら病でバタバタ死んじまったもんだから特に物いりでな・・・家を継いだばかりのサピオに助言できる奴も居なくって、ぶっちゃけ国王に騙されたんだ・・・』
「こ、国王に・・・だ、騙された?・・・」
『ああ・・・本来、貴族の領地の開発とかは貴族本人の申請と貴族会議での討論で決定して、開発予算の支援とかも有るし、領主の裁量権ってのも有るんだが・・・』
『くそ爺の奴、目上の親族がバタバタ死んで家を継いだばかりのサピオに家を継ぐ条件だとか抜かしやがって・・・』
『しかも、たちが悪いことにサピオが開発を願い出たって話にして、即時開発着手と王国の支援無しで単独開発って話で・・・貴族会議に根回ししたあげく勅命にしちまったんだ・・・』
『勅命にされちまうと逆らったら「反逆罪」だし・・・』
『即時開発なんて条件を付けられてるから開発資金もないのに「準備中です」とか逃げる事も出来ないしでな~』
・・・
「父さん・・・うちの本家って国王に恨みでも買ってたの?」
(国王なんて権力者と敵対してる家の末端なんて・・・完全に死亡フラグだよな?)
『ん~特に恨まれてたわけじゃないんだが・・・』
『教会の話に出てくる異世界からこっちに来る移住者な・・・』
『今でも来てるんだけど・・・こいつの扱いがやっかいでな~』
『大抵は王都の神殿に出てくるんだが・・・知っての通り技術や経験のある人達が何も持たずにただこっちに送られてくる・・・』
『さらにな・・・送られてくるのにも波みたいのが有って・・・』
『その当時は、結構大量に来てたんだけど・・・』
(げ!異世界人って、そんなお手軽に大量に来るもんなの?)
親父が続ける裏異世界事情に驚きつつ俺は黙って真剣な表情を浮かべ話を聞き続ける・・・
『技術や経験を持った人が増えるのは良いんだけど、生活ってもんが有るわけだから住む所も必要なら着る物だって、食い物だって、必要になってくるだろ?』
『その必要になる物を王家が神殿や教会を通じて支援することと、どんな技術持ち経験をしてるのか調べてから王家の直属技師にしたり、色々本人の希望も聞いて振り分けるんだけど・・・』
『ぶっちゃけ大工の技術と経験とか・・・鍛冶屋の技術と経験・・・なんて感じで珍しい技術を持ってる人なんてほとんど来ないし、全員を王家で養う利点がないばかりか結構な負担になってたんだよね~』
『王都で養える人数にも限界があるし、働き場所もあんまり無いし・・・』
『戦士や軍人だったらとりあえず武器防具を支援して騎士団や探索者って言う手も無い訳じゃないけど・・・』
『普通の技術者や商人・農民にそんなことも出来ないだろ?』
「うん・・・そうだよね~」俺は納得しつつも異世界での物語やゲームとは違うこの世界の現実に驚きつつ納得させられる思いだった・・・
(そうだよな~魔なんて存在があっても討伐不能なほど強いわけでもなく、魔王なんて居ない世界でチートでもない普通の人が増えても結構負担が大きいんだろうな~)
『まあ、そんな訳で負担では有っても神より送られし移住者を住む所とか生活環境のない場所に送り込むわけにはいかんし、そう言った生活環境を整える開拓・開発は結構お金がかかるから移住者の生活支援で金のない王家には厳しかった訳なんだが・・・』
『貴族にだってそんなに余裕がある訳じゃないし、進んで開発してる貴族なんてほとんど居なかったんだ・・・』
『でだ・・・』(親父・・・いったん冷静になったと思ったけどまたやばい雰囲気が・・・)
『さっきの話のようにくそ爺がパリスをはめて、本家が辺境開拓をせざるを得ない状況に追い込んできたんだが・・・』
『くそ爺の手はこれだけで終わってなかったんだ・・・』
「え?まだあるの?」
『ああ~くそ爺はな、神殿にも圧力を掛けて当時旦那を事故でなくして神殿に入ってたうちのばあちゃんの妹・・・レーシア様がその開拓に志願するように仕向けたんだ・・・』
(え!レーシア様ってうちの親戚だったのか・・・)
「そ、そうだったんだ・・・」
『当時はレーシア様もパワフルでな・・・「開発費用が無いなら自分が単身で辺境開発に向かう!」それで時間を稼いでなんて言い出してな・・・』
(親父・・・目がうつろになってきてるぞ・・・そんなに当時は大変だったのか?)
「れ、レーシア様って凄いね・・・」
『まあなぁ~だけどまさかそんなことが出来るわけもなく、当時学院を卒業間近だった俺とか本家の領地から何とか人をかき集めて開拓団を作って今に至るわけだ・・・』
『俺だって若かった頃は色々考えてた将来の希望があったんだが・・・ガキの頃から世話になってた、レーシア様に全部押しつける事も出来ないから一族で話し合ってな~仕方が無く開拓団の団長になってこっちに来たんだ・・・』
(親父って・・・結構苦労人なんだな~)
「大変だったんだね~」
『ああ~すげ~大変だった・・・まあ、くそ爺のしたことで良かったことと言えば母さんをここに送ってきたことぐらいだな~』
(え!母さんて移住者だったの?)
『今もそうだけど、母さんの若い頃は凄くかわいくてな~』
(ここまで来ての、のろけ?)
『もう村のアイドルって感じでな~、熾烈な競争を勝ち抜いてプロポーズを受け入れてもらったときは「ここままココで死んでも良い!」って感じで天にも昇るようだった・・・』
(親父・・・さっきの怒りはどこへ行った?目がラブラブモードに変わって、ハッキリ言うと気持ち悪いぞ)
「そ、そんな裏話が有ったんだ・・・」
『まあ、表だって全部ぶちゃける訳にはいかんがな~』
『ん、もうこんな時間か・・・少し休憩するか・・・』
「そうだね・・・ちょっと休憩しようか・・・」
(主に親父が気持ち悪いモードになっちゃったから・・・)
『じゃあ、続きは・・・昼からだと寄り合いがあるしな~』
『ん~、母さんに頼んでおくか・・・』
ぶつぶつ俺の教育に付いてかつぶやいてる親父と俺は休憩のため今へと移動した。
「ふう・・・」(母さんの入れてくれたお茶と手作りのクッキー美味し!)
居間にある暖炉が赤々とした炎で部屋を暖めてるおかげか少し厚いぐらいだ・・・
ん?「そう言えば・・・何で俺の部屋とかうちの他の部屋は暖房もないのにこの時期(今の季節は雪が降り積もる少し前でそろそろ降り始めるぐらい)に寒くないんだ?」
思わずつぶやいた俺の声に母さんが今さら・・・って目で俺を見ながら説明を始めた・・・
『アレン・・・あなたも、うちに温泉があるのは知ってるでしょうに・・・』
「え?温泉と関係有るの?」
何を今さらという感じから、あきれたような感じの目に変わった母さんが教えてくれた・・・
うちにある源泉の湧出口・・・そこからの引き込み管に仕掛けがあって、暑い季節には風呂にだけ地下の配管を通して給湯されるが寒い季節になると家の床下とか壁に仕込まれた配管を通して暖房に利用できるようになってるらしい・・・しかも、暑い季節には水を流して冷房にも使ってるとか・・・
(温泉暖房に冷房・・・この世界の技術って侮れないみたい・・・)
驚いてる俺の顔をじ~っと見つめていた母さんが突然爆弾発言を投げかけてきた・・・
『アレン・・・あなた別の記憶がよみがえったんじゃないの?』
(げ!・・・なんでだ・・・)
「え!・・・な、なんの・・・」
俺の答えを待たず母さんがさらにたたみかけてくる
『どうも、おかしいな~って思ってたのよね~』
母さんがまるでいたずらっ子を捕まえて説教するように話を進めていく・・・
(まずい!ばれたぞ・・・どうすりゃいいんだ・・・俺、家を追い出されるのかな・・・)
処刑宣告を受けたような真っ青な顔の俺をみて母さんが優しく話しかけてくる・・・
『アレン、何を考えてるか判らないけど・・・前世というか異世界の記憶って、こっちの世界じゃ割と普通に多いのよ?』
『アレンも知ってると思うけど、こっちの世界じゃ移住者とこっちで生まれた祝福されし魂って呼ばれる物を持つ人、それに元移住者・・・こっちで死んで又生まれてくる魂が有るんだけど・・・』
「はへぇ・・・?」
一気に気が抜け出す俺の声を聞いて母さんは優しく語り出した・・・