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新世界での生活  作者: 投稿初心者
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043 人の知恵とは・・・③

第43話 人の知恵とは・・・③


その日、しばらくつきあいの悪かったケントが珍しくと言うか・・・強引に俺の腕を取ると船着き場に連れて行かれ、「じゃじゃ~ん!」とか言いながら俺に見せたモノは・・・一見するとただの竹の筒に横から木の棒が差し込んである正体不明のモノだったが・・・


『なあ・・・ケント、ぶっちゃけて聞くが・・・何それ?』


「うぐ・・・ま、まあ・・・確かにこれだけだと判らないか・・・」


ケントがボートに乗り移り、後ろの方でごそごそと何か作業をし出すがすぐに終わり・・・


「よし!完成!乗れよアレン」


『お、おう!』


俺は言われるままボートに乗り込んだが・・・

(まさか・・・コレは・・・)


「じゃあ、動かすぞ!」


・・・


・・・


静かにボートが湖面を動いていく・・・


『ケント・・・最近つきあいが悪いと思ってたら・・・お前俺に内緒でボートの推進器を作ったのか?』


「え?推進器?・・・良い響きだな~良し!コレの名前は推進器だ!」


俺の話の内容が理解されていないようだったので・・・


『名前はどうでも良いけど・・・要するにケントが作ったモノを使えば漕がないでもボートが動く念具なんだよな?』


「ん?おう!そだぜ!!」


『そりゃ~凄いぞ!』


俺は興奮したまま作ったケントに質問を重ね判った事は・・・


釣りでボートを使っていた時、結構体力を使うので良い方法がないか考えていると俺の持っていた本にあったヨットの帆を見て「コレなら楽じゃねえ?」と思いついたが・・・作るのがめんどくさくなっていたら夏になってしまい扇風機が登場!

扇風機からの風で読んでいた本のページがパラパラとめくれたのを見て、「こっれって使えんじゃね?」と思っていたが忙しくしてる間に収穫祭になり・・・

予想以上の小遣いというか分け前?(俺的には給料なんだが・・・)に気をよくして扇風機を購入してこっちにきてから実験したが、当然そんな小型のモノじゃ動くわけもなく「ちっ!使えね~な!」とボートを下りようとした時に扇風機を落としたのだが、落とした時に「ゴボ・・・」という音と共に扇風機が水の中で動いたのを見て、扇風機を拾った後で再度水中で実験したところほんの少しだがボートが動いたらしい・・・


「でだ・・・何度やってもちょっとしか動かなくってな~煮詰まったので風呂に入ってたんだ!」

「で俺は、その時ひらめいたんだよ!!」

「風を動かす扇風機で動くんなら水を動かすようにしたらもっと動くんじゃねえ?ってな!」


ん~実にケントらしい大雑把というか・・・偶然と奇跡のひらめきの結果だが、できあがった念具は俺も凄いと思う!何せプロペラとかスクリューの概念じゃなく、俺からしたら水中ジェット推進とかスクリューレスの未来型推進法だからな~


『すげーじゃん!・・・コレは本気で凄いぞ!』


「いや・・・まあな~」


俺がべた褒めなので多少照れつつニカ!っと笑いながら答えるケント・・・


『しかし、疲れてたのに良く実験する気になったな~』


「あぁ~それね~・・・やっぱさ、領主・・・が最後に大型船作れ!とか言い残して帰ったろ?」

「で、落ち着いてから考えたら・・・どう考えても動かすのって俺らだよね?」


『まあ・・・そうなるだろうな~』


「んでさ!何とか楽できないかと思ってね!んで、前から考えていた実験をする事にしたわけよ!」


『なるほどな~道理で俺に内緒でやってるわけだ・・・』


「まあ・・・たまたま上手く行ったけど・・・やっぱ失敗したら恥ずかしいからな~」


少し照れたままのケントとべた褒めし続ける俺、実験というか俺へのお披露目が終わった後大魚亭に戻ったがすぐさまケントの部屋に突撃してさらなる改良と改造を繰り返した。


翌日の昼に親父達が到着したのでさっそく全員にお披露目したが・・・全員目を丸くして驚いた後、ケントの胴上げが始まった・・・親父達も領主の残した言葉で大型船を作る事にはしていたが、大型になると当然動かすのが大変になるわけで・・・


「正直・・・帆を付けるぐらいしか思いつかなかった・・・」などと話す親父やゴバックさん・・・俺は作り方まで知らないがエンジンやスクリューの発想から飛躍できず現状じゃ再現不能で諦めたのに、まさかケントが発想の転換と偶然にも助けられたとはいえこんな大発明を成し遂げるとは・・・


やっぱり、技術のない知識より有る物を活用できる知恵や発想が大切なんだと改めて認識させられた。

俺はどうも前の世界の記憶というか知識に引きずられて、発想の転換とか甘いんだよな~今回の「ケント式推進装置」はたぶん俺が10年、20年と考えてもひらめかなかっただろう・・・


その日の夜、大魚亭で狩猟団の寄り合いが開催され・・・全会一致でこの推進器を「ケント式」とすることが決まり、これから製作する大型船や既存のボートに採用する事が決まった。


翌日から大型船建造の準備が始まったが・・・ケント式の念具はメチャメチャ役だった・・・

夏の間プールとして利用していた乾ドックだったが、その後の急なあれやこれやで放置され水抜きをしていなかったのだが、今回の建造で水を抜く事になり作業実行班だった1人が・・・「ケント式で水を動かせるんならコレに(水抜き)にも使えないかな~」ってつぶやいたのを俺が聞いて・・・すぐさま思い出したのが水中ポンプだ!


俺は所用で現場を離れる事を告げ、急いで部屋に戻ると試行錯誤の事件で使った「ケント式推進器」を取り出し改造を加え始めた・・・


『まずは・・・水が出てくる出口にフタをしてホースを作って・・・』


防水シートを使ってホースを作ったり、本体の改造を2時間ほどで終えると乾ドックに戻り・・・さっそく新しい実験を開始した。


まあ・・・実験は成功したのだが・・・対応を失敗した!・・・作業班の目の前で実験してしまって即日親父達にバレ、間に合わせで作った念具ではなくキチンと作った念具として完成させる事を約束させられた・・・

まあ、防水シート製のホースは糸で縫いつけた縫い跡から水が漏れていたし・・・接続も金具とかじゃなく、フタにした木に付けた細めの竹に糸で縛り付けただけだったし・・・もっと使える物にするのは判るけど・・・


ちょっとした疑念はあったが俺は素直親父達にしたがい、自分で製作可能なレベルで一応の完成品を4個作ると自分なりに完成させるにはどうすれば良いかを設計図と概念にして親父に渡しておいた・・・


数日後、予想外の早さで乾ドックが使用可能になり大型船製作が始まるかと思ったが・・・


「乾ドックは用意できたが・・・どんな構造で作るのが良いんだ?」


そう大型船を作ると言って準備を進め、乾ドックを使用可能にしたり、木材を用意して乾燥させたり・・・だが、肝心の設計が決まっていなかった・・・


『何か見本になる資料とか無いの?』


「うむ・・・船なんてここで使うまで必要なかったし、お前が趣味で買った本ぐらいしか資料など無い!」


『イヤ・・・そこを強調されても・・・』


「一応、商工会を通じて大型船の建造資料は取り寄せ購入の依頼にしているが・・・」


『あぁ~~』俺は非常に頭が痛くなってきた・・・つうか・・・設計図も資料もないのに準備とか命じてる親父の自信はどこから来るんだ?


仕方がないので、コレまでの知識や経験を総動員して5m×2m程のボート船体を2個使って片側の縁を少し切り下げ、上部に甲板というかフラットな床を設置して周りに柵を付けた感じの双胴船型の設計図を書き上げると親父に渡し・・・


『コレ・・・大型船とまでは言えないけどかなり安定するはずだし・・・練習用に作ってみない?』っと提案してみた。


「ふむ・・・コレか・・・」


『何かまずいの?一応一生懸命考えたんだけど・・・』


「いや・・・他にも案が結構出てきていてな・・・」

「とりあえず夜にでも寄り合いを開いてさらなる設計案募集をしてみようかと・・・」


『へぇ~良いんじゃない?色々案が有れば煮詰めていく材料にもなるし、どうせ作るなら良い物を作りたいからね~』


俺の答えを聞いて上機嫌になった親父と今後の事を色々話して、夜の寄り合いで親父から設計案をさらに募集して貰う事にすると俺が考えた完成系の水中ポンプが届けられてきた・・・


どうやら交代で村に戻った狩猟団に頼んで村で製作させていたらしい・・・『なぜこんなに早く?』・・・俺の疑問に親父が説明してくれた。


①水が貯まってるところが有れば消火ホースのように使える。

②同じく畑の水やりに・・・

③イケスの底を掃除したり・・・

④高いところに水を吸い上げたり・・・

⑤井戸に設置して水道化したり・・・


ケントが作った推進器としても驚いたが、どうやら俺が改造した水中ポンプとしての可能性にも充分驚いたらしい・・・


まあ、この世界って色々ありそうだけど無かったり逆になんじゃコレ?って言う用途で念具があったり・・・結構バラバラだからね~


しかし・・・ドンドン意図せずに技術革新とか内政系に傾いてきちゃったよな~俺の希望はのんびり田舎生活(便利で快適な状態で!)だったんだけどな~


今となっては手遅れな妄想をしつつ親父と別れると自室に戻って色々考え始めた・・・


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