038 領主が居るのが難点だが・・・始まった収穫祭
第38話 領主が居るのが難点だが・・・始まった収穫祭
ケントと広場で準備を進める露店や行商人の店を眺めたり、もめ事がないか巡回警備をしていると、去年俺たちが買った釣具屋の露店を見つけ店主と挨拶を交わした。
『おっちゃん、1年ぶり!今年も良いもの持ってきてる?』
「ん?・・・え~っと・・・おう!去年の坊主か!」
「大きくなったから一瞬判らなかったぞ!」
『まあね~俺たち成長期だし!』
「今年も何か買いに来たのか?あいにくまだ準備中だが・・・」
『いや、違うって!コレコレ』と俺たちは腕に付けた自警団の腕章を強調する。
『コレで、今年は俺たちは会場の警戒とか割り振りをしてるんだよ』
「ほう・・・そうだったのか・・・まあ頑張ってくれな~」
「そうそう・・・今年はこの村で需要があるって聞いたので釣り針をかなり仕入れてるし、タイガースパイダーの糸も多めに持ってきてるんだが・・・ホントに売れそうなのか?」
『あ~そのことね!売れるって言うか・・・どれぐらい持ってきてるの?』
「ん~釣り針が各種で10本入ったセットが1000セット、タイガースパイダーの糸が50巻きだな・・・後はバラだが・・・」
『へ~ちょっと見せてよ!』
「おう!これだ!良い品物だろ?」
『んで・・・コレっていくら?』
「ん~まあ・・・釣り針のセットが1セット銅貨5枚、タイガースパイダーの糸が50m1巻き銀貨1枚だな・・・」
俺はニヤリと笑いつつ・・・『釣り針はサイズ別で単品か同じサイズのセットでも売ってるのかい?』と聞いてみると・・・
「まあ・・・小さい針なら10本で銅貨10枚、普通サイズで10本銅貨2枚、大きいのが10本で銅貨4枚って所かな・・・」
「そうだな~じゃあ、小さい針を100本、大きい針を100本、タイガースパイダーの糸を5巻き貰おうかな・・・」
『で・・・合計すると銀貨6枚と銅貨40枚がおっちゃんの言い値だけど・・・いくらに値引きしてくれるの?』
「む・・・そう来たか・・・そうさな~知らない仲でもないし・・・」
「思い切って銀貨5枚と銅貨20枚でどうだ?」
『ん~まあ準備中に押しかけたわけだし・・・それで良いよ!』
『じゃあコレ・・・』
「まいど~そう言えば竿は買わないのか?一応半銀貨1枚が定価だけど・・・今なら半値でも良いぞ!、ただし・・・こっちの新製品は銀貨1枚だけどな・・・コレは値引きできないぞ!」
「へぇ~新製品なんて有るんだ・・・」
おっちゃんが後ろの木箱から竿を取り出し見せてくる。
「おう!コレだコレ!糸巻きが着いた新製品だぞ!王都で仕入れてきたんだ!!」
「強度は前の竿より強いし糸が巻けるから取り扱いが楽なんだ・・・」
俺の目の前に出された新製品・・・リール竿だ!
『おっちゃん、コレって組み立てたサイズとか太さってそれだけなの?』
俺の目の前にあるのは、分かれた2本をつなげる継ぎ竿で組んだら4m程になりそうな竿だった。
「お!良いところに目を付けたな・・・ただ残念ながら今はこれだけしかサイズを作ってないな・・・」
「どうだ・・・欲しくなったか?」
『むう~良し!2本貰うよ!』
「まいど~~」
「さっき売ったタイガースパイダーの糸なら100mぐらいは巻けるからな!巻いた後はつながってる糸を切って使ってくれ」
「よく見てみると先ほど買った糸は糸巻きに巻かれた状態だったがつながっていた」
「へぇ~細かいところまで結構考えてあるんだね!去年は50mかっただけだから知らなかったよ!」
「あ、アレン・・・俺も買う!おちゃん!・・・」
今まで俺の脇で黙って聞いていたケントが俺が買うのを見て、しびれを切らしたように注文していく・・・
「え~と、俺は・・・新型の竿2本とタイガースパイダーの糸を6個、針が小さいのを200本大きいのを100本普通のも100本買うよ!」
「おう!コレは大きく出たな・・・合計で銀貨10枚と銅貨60枚か・・・そうだな~よし!銀貨8枚と銅貨80枚でどうだ!」
「OK!じゃあコレ・・・」
「まいど~!しかし売っておいてなんだが・・・良く金があったな・・・」
「まあ、コレでも村の狩猟団の正規メンバーだからね~」
「そうか・・・まあ、割り引いたんだし他の人にも宣伝しておいてくれよ!」
『判ったよ~忙しいところ悪かったね~じゃあ、商売頑張ってね~』
俺たちはお互いの買い物について話しつつ巡回警備に戻り、その後は特にもめ事もなく平和に終わった・・・
『しかし・・・初日前だって言うのに結構大胆に使っちゃったな・・・』
「まあな~やっぱ元々持ってる額が額だけに大胆になってたかもな・・・」
「まあ、でも・・・言い買い物だったと思うぞ!」
『だよな~ところでケント、ずいぶんと釣り針を多めに買ってたけど・・・そんなに使うか?』
「あ!コレね・・・一応親父によこせと言われても大丈夫なようにちょっと多めに買ったんだ・・・」
『ああ!ゴバックさんの分も考えてか・・・納得した』
「んじゃあ、自警団本部で報告と当番の変更がないか確認したら帰ろうぜ!」
『あぁ・・・ソウダナ・・・』
(まだ家にはアレが居るんだろうな・・・帰りたくなくなってくるな・・・)
「まあ頑張れ!」
『あぁ・・・』
その後自警団本部で、今日の報告と明日の変更事項などを確認していると・・・
「あ!アレン・・・親父さんから伝言だ、「今日は領主様と収穫検査官と一緒に検査終了の祝いと歓迎の宴があるから」、遅くなるって奥さんに伝えて欲しいって言うのと・・・時間があれば少しは顔を出せ!だそうだ・・・」
『了解!』
俺は救われたような気持ちでケントと別れ、足取りも軽く自宅に戻り母さんに親父からの伝言を伝えると3人で夕食を取って、風呂に入った後は当然のごとく宴なんかに出ずミーアと遊んでから早々に寝た!
翌日はぐっすり寝ている親父達を放置して・・・護衛の人と挨拶を交わすと、教会へ行く母さんとミーアに同行してミーアを教会に預けた後、特に待ち合わせをしてるわけではなかったが露店の広場にいたケントと合流して、露店を冷やかし始めた・・・
『さて・・・昨日は思いがけず良い買い物が出来たけど・・・他には何かあるかな~』
「とりあえず・・・本でも見てみるか?」
『そうだな~何か良さそうなのが有れば良いんだけどね~』
「今年は店も多いし結構期待できそうだぞ!」
目に入った割合沢山本の置いてある露店に近づくと品揃えを確認し始める・・・
「ん~っと・・・連続小説系は必要ないし・・・良さそうな本は~」
俺は技術系の本を探し出すと・・・お!「お!」・・・ケントと手が重なった・・・本のタイトルは・・・
「炭焼き小屋の構造と炭の生産、備長炭を目指して・・・」
「なあ・・・どっちが買う?」
『昨日俺の方が使ってないから俺が買うよ!』
「了解!、後で貸してくれな!」
さらにめぼしい本を探す・・・
「寒冷地における畜産の実践と考察」・・・ん~有用そうだが・・・趣味じゃない!
「男と女のQ&A」・・・必要なし!
「ズバリ解説テーブルマジック!」・・・面白そうだけど・・・必要ないかも・・・
「スライムの生態とその利用法」・・・お!コレは親父が前に話していた・・・ん~統計とか経過観察の載った学術書系だな・・・こんなに詳しいことを知りたい訳じゃないし・・・パス!
「クッキーから始める菓子料理」・・・コレは・・・キープだ!プリンが載っている!!
しかし・・・探してみて思うが・・・この世界って何でこんなに本があるんだ?紙って結構高かったよな・・・
露店だと探すのが大変だったり、売ってる本がバラバラだけど・・・王都辺りでキチンとした書店を出したら儲かるかな・・・
『だいたいこんな所かな・・・』
俺は炭の本とお菓子の本の計2冊を購入すべく値段を聞き支払いを済ませる・・・
『次はどこを見ようかな~』
『あ!アレは・・・』
俺は引き寄せられるように日用雑貨を売ってる露店に近づくと、店頭に並んだモノを見てつぶやいた。
(お釜だ・・・この世界にもあったんだ・・・)
『おばちゃん!コレどうしたの?』
「ん?コレってオカマの事かい?この鍋なら最近こっちでお米を食べるのが流行してるって聞いたので、お米調理用の鍋を持ってきたんだが・・・オカマって鍋だけど・・・買うかい?」
『えぇ~っと・・・コレはいくら?』
俺はちょっと大きめで、1升ぐらい炊けそうなお釜を指さし値段を尋ねると・・・
「え~っとちょっと待ってね~」
おばちゃんはひょいっと物差しのようなモノを持って大きさを測り始める・・・
「この大きさなら・・・銀貨2枚だね~」
「銀貨2枚か・・・どうしようかな~」
正直すでに家にもある厚手の鍋で炊くことに馴れたいたので、必要性は低いのだが・・・お釜か・・・
『ん~もう少し考えてから又来るよ!』
「そうかい?まあ好きにすると良いよ!もし最終日に残ってたら多少は割引するからね~」
俺は手を振っておばちゃんに答えると、ケントと共にさらに他の露店を見て回ることにした・・・
頑張ってますが・・・ドンドン減っていくお話しのストック・・・
そろそろ毎日1話更新に変えた方が良いのかな?不定期更新はなんとかせずに最後まで頑張りたいと思ってます。




