032 湖の巨大魚!
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第32話 湖の巨大魚!
親父が魚とやりとりを始めて、すでに30分以上の時間がったっているが・・・いっこうに魚が姿をあらわさない!親父も懸命に竿を操り、釣り上げようとしてるのだが・・・
(本気ででかいな・・・つうか、気のせいかさっきから船が引っ張られてるような・・・)
気のせいじゃなかった・・・俺たちの乗った船は確かに魚によって引っ張られている。
(まさか魚じゃなくモンスターとかってオチじゃないだろうな?)
格闘することさらに1時間!ついに力尽きた化け物サイズの魚が湖面に姿を現した。
(おいおい!2m以上有るぞ・・・どうやって取り込めば良いんだ?)
俺も親父もあまりの大きさにびっくりしたが、親父は魚とやりとりをしながら考えていたらしい・・・
「アレン!船に引き寄せるから槍でしとめろ!!」
『え!あ・・・うん、判った父さん!』
姿を現した魚のでかさで、一瞬惚けていた俺に親父からの鋭い声の指示か飛ぶ!
「じゃあ寄せるぞ!・・・おら!こい!!こっちだ・・・」
「そうそう・・・良い子だからこっちに来い!!」
親父が懸命に魚を引き寄せるなか、俺は役に立たない網を船の上に置いて自分の空間から槍を出し組み立てて、柄をさらに長くする・・・
『父さん、準備完了!』
俺が2mほどにのばした槍を掲げると、「おし!もう少しだ・・・外すなよアレン!うぐぅ・・・」と言いながら真っ赤な顔でさらに魚を引き寄せる・・・(今だ!)寄ってきた魚に向かって槍を素早く突き入れるとものすごい力で暴れ、俺は船から振り落とされ湖に落ちた。(うわぁ~~)
「大丈夫かアレン!」
俺が何とか湖面に浮上して船のへりに掴まると、親父が心配そうに声を掛けてきた『大丈夫だよ父さん!それより魚は?』
俺が問いかけると・・・
「おう!お前の一撃で最後の力を使ったらしく、ほれこっちにロープで繋いで有るぞ! だがこいつは船には上がらないな・・・岸まで引いていかないと・・・」
強度的に少し心配だったが、親父の手を借りて船の上に戻ると俺がはい上がった縁の反対側とアウトリガーの間に、ロープで槍の刺さった巨大な魚がくくりつけられていた。
『とりあえず一端岸に戻ろう、父さん・・・』
「そうだな・・・」
巨大魚との死闘で体力と精神力がつきたのか、親父が力無くうなずき答える・・・
岸に戻ると大騒ぎになった・・・
(しかし、本当にでかいな~これってサケとかイトウってヤツなのかな?)
(鹿を飲み込むとか伝説を聞いたことがあるけど・・・これなら子鹿ぐらい平気で飲み込みそうだな・・・)
大人数で何とか巨大魚を船着き場に引き上げ、防水シートの上に置くと・・・俺と親父に巨大魚をみんなが取り囲み驚嘆の声を上げながら話を聞いてくる。
「おう!まずはな・・・」みんなの注目を集め上機嫌で親父が語り始める中俺はケントを探して声を掛けた。
『ケント!』
「おう、アレン!!」
「すげー大物じゃないか!どうやって仕留めたんだ?」
「おう!アレン俺にも聞かせてくれ」
ケントの傍に居たゴバックさんも加わって話を始める。
『ケント、喜べ!親父の使ってた竿も糸もお前の買ったのと同じヤツだったぞ!!』
「ま、マジデカ?アレで釣ったのか?」
『おう、マジマジ本気でアレだ!』
「おい!お前ら、アレって何だ?特別なヤツなのか?」
事情を説明してケントが出した竿と糸を見ながらゴバックさんが・・・「ん~これでか・・・俺も買っていけば・・・」などとつぶやき始めたが、「ケント・・・ちょっと貸さないか?」などとすぐさまケントの竿と糸を借りようと狙ってきた。
「だ、ダメだってまずは俺からだよ!」
「そう言うな、あのでかさならお前が釣ると湖に引きずり込まれるぞ!」
「なあぁ~ケント・・・悪いことは言わない、お前でも大丈夫かまずは父さんにだな・・・」
「ん~ん~引きずり込まれるのはちょっとな・・・」
「だろ!だからまず父さんが・・・」
交渉?を続けるゴバックさん親子に『ちょっと着替えてくる』と言い残し新拠点に戻って着替えを取り出し風呂に向かった。
(いや~夏の季節だから助かったけど、水温が低い時ならやばかったかもな~)
風呂につかり着替えを済ませ戻ると、さすがに落ち着きを取り戻しつつあったがあれだけの大物を目にしたせいなのか、作業にも戻らずまだ話し込んでいる。
「おう!アレン戻ったか・・・」
『あ、父さん・・・風呂に入って着替えてきた!』
「そうだな・・・俺も今日は疲れたし・・・ゴバック!」
「今日はもう作業にならんだろ?昼からは休みにして希望者は釣りにしないか?」
「お!話せるじゃないか村長!! みんなもそれで良いな?」
「「「おう!」」」
「「おれもやるぞ!!」」
「んじゃあ、とりあえず良い時間だし昼飯にしよう!」
そう言って新拠点にみんな移動していったが、ゴバックさんが俺に寄ってきて「アレン・・・昼からも船を使うか?」(あぁ~そうね狙いは船だね・・・)と聞いてきたので、疲れていた俺は『いや、疲れたしのんびりするよ!もし父さんが又行くって言ったらゴバックさんお願いできないかな?』
「おう!任せろ!!それで村長が行かない場合だが・・・」
『そのときはゴバックさんが好きに使って、どうせ巨大魚狙いだと思うけど船を壊さない要注意してね!』
「おう!大丈夫だ!もし壊しても作り直して返すから安心しろ!」
『ゴバックさん、それ安心できないって・・・』っと俺が抗議しても・・・
「冗談だ、冗談!ちゃんと返すから昼から船は借りるぞ!」
『うん、それは判ってる。他の人が借りたいって言ってきた時もゴバックさんが判断して、任せるから・・・』
「おう!任せておけ!」
こうしてゴバックさんに船を貸し、テンションの上がった狩猟団のメンバーと昼食を取ると、みんなが食休みもそこそこに新拠点を飛び出していく中俺と親父が食堂に残っていた。
『父さんも昼からは休養?』
「まあ、結構疲れたからな・・・それに、ほかのヤツも船で釣りをしたいだろうし、独占は良くないからな・・・」
「ところでアレン、お前あの本は持ってきてるか?」
『あの本って、船の本?それなら持ってきて部屋に置いてあるけど・・・』
「じゃあ、ちょっと貸してくれ確かあの本にボートとか頑丈そうな船が載ってたろ?昼からはそいつを作ることにするからな!」
『へぇ~じゃあ、コレ・・・はい』
「ん・・・じゃあ、借りておくな!」
『うん、ところで父さん・・・あの魚どうするの?』
「どうするの?って喰うに決まってっるだろ!」
『いや・・・どうやって食べるの?・・・あのサイズだと結構切り分けないと料理も出来ないでしょ?・・・まさかと思うけど塩をふって丸焼きにするわけでもないでしょ?』
「お、おう!そ、そうだな・・・俺は・・・燻製にでもしようかな~って思ってたぞ!」
(絶対今考えたよね?まあ良いんだけど・・・)
『ふ~ん・・・良いんじゃないかな・・・』
返事を返しながら何気なく外を見てみると、ゴバックさんはケントと船に乗って釣りに行ったようで、岸に残ったメンバーは桟橋で釣りをしたりイカダを作ろうとしてる人が居たり、有る意味活気に満ちあふれた状況のようだ・・・
『そうだ!』
「ん?どうした?アレン・・・」
『いや・・・僕、湖に落ちたから装備を手入れしないと・・・』
「あ!そうだな・・・早く手入れしておかないとダメになったりするからな!もし判らないことがあったら・・・たぶん俺は外で船を造ってるから聞きに来るか、そばで作業しなさい」
『うん、判った父さん!』
「じゃあ、先にむこうで作業してるからな~」
俺は親父から離れて、風呂に入った時に乾かそうと防水シートの上に広げた装備を自分の空間に入れると、シートをたたんで親父のそばに行き広げたシートの上で手入れを始めた。
装備の手入れを終えて親父を手伝っていると、桟橋がにわかに騒がしくなり「大漁だぞ~」と誰かの声が聞こえたので親父と見に行くと・・・
ゴバックさん親子の船もイカダに乗っていたグループもかなりの釣果で、2m越えの化け物サイズは無理だったようだが1mは優に超えてる大物が10匹以上60cmクラスは数えられないぐらいロープに通して引き上げてきた。(鯉のぼりみたいだな・・・)
「どうだ?結構良いだろ!さすがに村長みたいな化け物は釣れなかったがどれも良いサイズだぞ!」
「岸でやるより・・・明らかに船の方がサイズが良いな・・・」
「イカダだとちょっと厳しいけど、何とか釣ることは出来るな・・・」
サイズの自慢や数の自慢・・・戻った船でさらに釣りに出ようと話しかけてくる人・・・そんな混乱の中、ぼそっとつぶやいた親父の言葉がなぜか鮮明に聞こえた・・・「コレは、もう少し考えを修正しても良いかもしれないな・・・」(ボク、ナンダカ トテモワルイヨカンガ スルノデスガ オトウサマ)
俺が悪い予感に身を震わせていると、得意顔のケントが来て釣りの様子を話し出したが、「おお!!これもいいサイズだな~燻製にしたら美味いかもな~」「おう、そうかそうか!」などと言う親父の声が聞こえてきて、ひょっとして聞き間違いだったか?などと思考の海に沈みそうになったところで「おい!聞いてるのか?」というケントの声で現実に引き戻された。
『悪い悪い!ちょっとぼ~っとしてた・・・』
「大丈夫かアレン?そう言えば湖に投げ飛ばされたんだったな・・・具合が悪いなら寝てたほうが・・・」
などと、急に心配しだしたケントをなだめるのに忙しくなり、俺は悪い予感を無理矢理押さえ込んで忘れると、『大丈夫だ!』と声をだした。




