030 始まった湖畔の別邸建築!
第30話 始まった湖畔の別邸建築!
さて・・・春になって「ウッド村」の狩猟団が総力を挙げて、湖畔の新拠点を建設!・・・って事にはならなかった。
まあ、少し考えれば誰でも判るけど・・・
俺たち狩猟団は、村に有害な害獣を駆除するため狩りをしている。
春になると、当然だけどこの害獣の活動が活発化して、被害が増えてくるって訳だ・・・
で・・・そんな状況を放置して、湖畔に新しい拠点なんて建てるのは無理って訳で、人手不足は当然予想されてたので今年10歳になる土地持ちの子を3人、自警団から卒業?と言うか結婚予定の2名が狩猟団に入って自警団組が湖畔の新拠点完成後の維持に当たることになっている・・・
実際の建築には王都や町から建築職人を何人も呼び寄せ、一気に完成させるらしいけど・・・本当に出来るのかな?
そうそう、びっくりしたのが建設費用!
村の予算から出るのは当然なんだけど、去年オークションに出したグランドベアの大物・・・これに凄まじい値が付いた!
なんと・・・金貨20枚である!!
銅貨1枚=100円ぐらいの感覚で生活してる俺から見れば、2000万円!誰が買ったのか知らないけど・・・バカじゃないのか?
たかが熊の毛皮だぞ!
(まあこれには親父達も驚いて唖然としてたけどね・・・)
普通は大物と言ってもせいぜい金貨1枚程度、状態が良く高値が期待されても金貨2枚が相場だって言うんだから何があったんだか・・・
そのおかげで、実にすんなり職人を呼び寄せての新拠点の建設が決まってたんだから、世の中何が幸いするかわからんもんだね~
「アレン!ボ~っとするな、出発するぞ!」
『はい!』
そんな感じで、今は新狩猟団メンバーも加え全員で北の荒野と街道沿いの森に狩りに出かける真っ最中何だよね~
今回は1週間程度、北方の害獣を駆除したら次は南方の駆除でさらに1週間程度・・・俺や新人には結構厳しい内容になるらしい・・・
「疲れた~!」
「久々だときつい!」
「もう寝たい!」
その日の夕方、やっと休憩用の拠点についた俺たちは不満というわけではなく、その日の感想を口に出す。
村を出発し徒歩で拠点方向に向かい、害獣との遭遇戦をこなしつつ罠を設置していく・・・過酷な1日だった。
(まあ、こんな狩りをやってるんだから土地持ちへの不満みたいなのが出ないんだろうな~)
親父に聞いた話だと、『春先から初夏・収穫前の秋』この期間の狩りは、害獣の数が多くてきつい割に肉や毛皮を利用できる獲物が少ない『面白くないが、村にとって重要な義務の期間』って言うヤツらしい・・・
その後2日間休憩用の拠点に泊まり込み、付近の害獣を駆除して野営用の拠点に移動するとそこでも2日間害獣駆除を行い、村へ向かって戻りつつ設置した罠の確認とさらなる害獣駆除を行った。
そんな感じで村に戻った俺たちだったが、食料などを補充すると翌日には南方の駆除に出かけ、・・・今までの親父達の苦労を身にしみて理解することになった。
(親父達ってこんなに厳しいことやってたんだな・・・家に帰ってきて酒を飲んで、狩りの自慢話をしてるところしか見て無かったけど、改めて尊敬しちゃったよ!)
2日間ほど風呂と食事とトイレ以外寝て過ごし、厳しかった狩りの疲れを疲れを癒してると村に30人ほどの建築職人さんの集団が護衛に守られて到着し、湖畔の新拠点建築に向かうことになった。
2日掛けて拠点に到着してからの職人集団の仕事ぶりは、さすが職人!と言わんばかりの凄い物だった。
到着した翌日、打ち合わせしていた建設候補地をいくつか回ると、今の拠点から500mほど離れて湖畔側に近い場所が最適との判断され、その日のうちに整地作業にかかると500m×500mの広い土地が整地され、翌日には堀が完成して塀作りが始まっている。
『すごいな~こんなに早いなんて・・・』
「ん~やっぱり、本職は違う!」
「俺たちならここまでやるのに1~2週間は・・・」とか・・・親父達も驚きの早さで建築が進んでいくが、俺たちだって遊んでいたわけではない!
山から石材や木を切り出しを手伝い、職人さんの資材輸送や建築現場の護衛をし、俺や親父はかなりの量を一緒に運んだので職人さん達も驚いていた。
その後は1週間ほどで調理室・食堂・風呂場が2室の1棟目が完成し、玄関から真っ直ぐ延びる廊下で客室?となる部屋になる2棟目・3棟目が完成したのは、建築を始めてからひと月も経っていない5月の末のことだった・・・
完成した新拠点は、上から見ると「王」の字に見える本館と大きく裏手に周囲を囲う塀、木造の50頭ほど馬がつなげる厩舎に10台ぐらい馬車がしまえる納屋?・・・
入り口から50mほどで湖畔に着くがそこには石作りの20mほどの船着き場?桟橋?が設置され後は内装を残すのみ!
完成を祝う宴会が催され、親父も職人さん達も大いに飲んで騒いで2日ほど休むと、ここに常駐予定の元自警団員2名を残し俺たちは村へ戻った。
『トイレに不満は残るけど・・・完成したんだな~』
俺は家に帰って親父と温泉につかりながら新拠点について思い返していた。
「まあ、普通村の拡張や開拓なんて1年や2年で完成するもんじゃないからな・・・」
「今回は職人に依頼して拠点を建築したが、上水道や下水道なんてこの村だって10年目で完備できたんだぞ!」
「それに、ちょっと複雑な気分だがトイレだって職人の考えた新方式で作っただろ!」
『そうだね・・・』
そうなのだ・・・今回俺がちょっと不満のあるトイレも、職人さん考案の新方式で今までのように穴を掘って仮小屋を上に置くような物ではなく、ちゃんと拠点の建物の中に組み込まれている。
職人さん考案の新方式・・・「スライム式トイレ」、今回の拠点は維持管理の常駐者が居ることから出来れば水洗にしたかったが、さすがに短期間じゃ無理だったので職人さんとも相談の結果・・・建物の下に石作りの地下室?を作り、そこでスライムに処理させる新方式で作られている。
まあ・・・ゴミ処理とトイレ処理が兼用なのはちょっとアレだけど・・・
親父達が村を開拓した時は、今までの拠点と同じ方式で10年も頑張っていたらしいから気分的な問題はあるが、とても清潔で合理的な方法だと頭では判っている。
『まあ・・・気分的な問題だからそのうち馴れると思う』
「そうだな・・・俺も効果は認めるが、やっぱり気分的にな・・・」
『だよね~・・・』
「だよな・・・」
たぶん、狩猟団の全員が精神にしこりを残しつつ「馴れれば・・・」とみんなが思ってるだろう・・・
『明日は、俺たちの替わりに害獣駆除をしていた護衛を連れて職人達が村を去るから・・・今夜は送別会だ!』
そんな言葉を残し、夕食が済むと親父は夕闇に消えていった・・・
俺は久しぶりにミーアと遊んでやり、喜んでいたミーアが疲れて眠った後、早めにベッドに入って今後のことを考えていた。
『とりあえず、組み立て式の船を実験しなきゃな・・・』
『拠点が出来たからもう普通のボートでも良いんだけど・・・』
俺が最初想定していたのは、狩りの時に山の上の湖や南の湖で釣りをしたり、水鳥を狩るための装備だったので組み立て式にしたのだが・・・
(まあ、北側の山に有る湖では使えるし、うまく行けばそのうち海でも使えるかもしれないからこれはこれで良いか・・・)
とりあえず、しばらくこっちで準備したら又向こうに資材を搬入して、調査って名目のレジャーが待ってることだし「もうひと頑張り頑張りますか!」・・・
その後も色々と考えていたらいつの間にか眠っていた。
次の日の早朝、職人さん達を見送りに村の門まで親父と行くと、ケントや数人の狩猟団メンバーが同じように見送りに来ていた。
(そう言えば、ケントのヤツ職人さんと作業中にもよく質問してたし、休憩の時も何か本を出して良く話をしてたみたいだったよな~)
確かオルバートさんだっけ?俺たちとも年が近い、若手の職人さんと別れを惜しんでいるケントと一緒に職人さんの集団を見送ると家に帰りながら親父と話をした。
『父さん、しばらくは準備って言ってたけど・・・新拠点の備品は買うの?自分たちで作るの?』
「アレン・・・作るに決まってるだろ!買うって・・・そんな予算どこから出てくるんだ?」
「うちの村は、それなりに蓄えがある方だけど・・・新拠点の建築で結構予算使ってるんだぞ!」
「必要最低限は買うけど、自分達で作れる物は作って節約しないと何かあった時、「お金がありませんじゃ」村の連中に何を言われるか判らんからな・・・」
『うん・・・別に買って欲しいって言ってる訳じゃなくてね・・・』
『どうせ作るなら、サイズとか規格をきちんとして統一感があるように作った方が、見栄えが良いんじゃないかと思って・・・』
「ふむ・・・それも一理有るな・・・」
「確かに・・・王都の宿だと大きな所はどの部屋も同じベッドとかで、きれいだからな・・・それに・・・」
なんだか余計なことも考えてるようだったが、俺の提案を親父も賛同の上で寄り合いで話すことになり設計案を書くハメになった・・・
俺の、「父さんからみんなに話して・・・」と言う意見は、即座に却下され仕事が増えてしまった。
(流石は年の功・・・)
まあ・・・夏が近いし・・・完成したら母さんやミーアも喜ぶだろう・・・頑張らなきゃ!




