023 和食もどきと収穫祭の終わり・・・冬の訪れ
第23話 和食もどきと収穫祭の終わり・・・冬の訪れ
今、俺の知識と調理実験の成果が試されようとしている!
翌朝、目を覚ますとすぐに身支度を調え母さんの作った朝飯を食いつつ、親父にも調理実験の話をして食後の団らんの後、調理実験の用意を始め・・・キッチンで母さんと相談しつつメニューを完成させていった。
「食べてみてよ!」
俺の目の前には努力の結晶である和食もどきが並んでいる。
ご飯・・・水加減での失敗を恐れて多めにしたので、多少べたっとしてるがおかゆほどでもなく充分ご飯といえるだろう。
みそ汁・・・出汁が思いつかなかったので魚の骨を湯通ししてから、少し煮込みキノコを入れて味噌で仕上げた。
おかず・・・塩をふった大ぶりの魚の切り身を焼いた物、なんちゃって漬け物・・・
親父がおそるおそるご飯を取って食べている・・・
『ほう・・・結構喰えるな!』
「みそ汁とおかずも試してよ!ちょっと味気ないようならこれを掛けて・・・」
俺はそう言うと醤油を小分けにしたカップを見せる。
『そうだな・・・』
魚の切り身を取って食べた後ご飯を口に入れた親父の顔が変わる
『結構美味しいんじゃないか?』
『米だけだとちょっと足りない感じだが、おかずを一緒に食べると美味しく感じるぞ!』
みそ汁も口にして・・・
『ん~こっちのスープは、まあまあかな・・・ちょっと変わった味だが・・・』
親父が試食したので母さんもミーアも食べ始める。
俺も喰いだした・・・
「ん~やっぱ出汁が足りない感じだな・・・」
『ん?出汁って魚の骨とキノコで結構出てるだろ?』
「うん・・・だけどやっぱり記憶の知識だと海の物で出汁を取ると美味しいんだよね~」
『ふむ・・・海か・・・ちょっと遠いな~・・・』
『だが・・・結構美味しかったし、もっと美味くなるなら行ってみる価値はあるかもな・・・』
「まあ、狩りの時食べたみたいに具だくさんのスープにするとたぶん相性が良いと思うから、今度狩りの時作ってみる!」
『ほう、そうか・・・なら、次の狩りの時にでも頼むとするか・・・』
俺が作った和食もどき・・・おおむね不評はなかったが、やはり好評とまでは行かなかったようだ・・・
その後はケントと一緒に収穫祭を楽しんだ!
まあ・・・特にすることもなかったから、知り合いになったヘンリーさんの露店で時間をつぶすというか、話し込んでた時間もかなり長かったけど・・・
ヘンリーさんとの話で結局俺は色々なアイデアを提供した。
ヘンリーさんの露店に並んでる商品?がどう見てもガラクタにしか見えないので、色々話していると・・・
ヘンリーさんは、本職が露店商というわけではなく王都にある工房、今はお兄さんが継いでるらしいけど・・・そこの経営がうまく行かないので、工房の製品やしまい込んでたガラクタを持って行商まがいのことをしていたらしい。
ヘンリーさん曰く、「金も稼げて消費者の好みも判る一石二鳥の手!」だそうだ・・・
まあ、みんなが何を求めてるか?って話で、俺もケントもこんなのが有れば便利だよな~って物を色々言ってたら、アイデアの提供になったらしい・・・
俺が欲しかったのは、グラインダーというかもっと楽に刃物なんかを手入れできる道具・・・、結局動力源の話になって自転車式の方法と昔、学校にあった足踏み式ミシンの方式・・・ミシンもアイデアだって言われたよ!
どちらかの方式を使って丸くした砥石を回転させれば、楽に手入れできそうって話をしたらメッチャ食いついてきた!
ケントの方はもっと道具や荷物が入る想念法のリュックサックとか鞄って話をしたら、すでにあるらしい・・・メッチャ高いから一般の人は買わないらしいけど・・・
その後、俺の槍とかケントの竿の話になって・・・俺が槍はともかく竿は継ぎ竿じゃなく振り出しの竿でも良いんじゃないかって話をしたら、詳しい構造を聞かれ・・・王都に帰ったら試作する!っと目を輝かせていた・・・
まあ、そんな感じで御馳走を喰ったり色々な露店を見て回ったり・・・楽しい時は過ぎ、収穫祭最後の夜になった。
この夜も色々あった。
投げ売りに近くなった大工道具・・・俺も欲しくなり交渉してると30点セット(ハンマー大中小・バール大小・平型ノミ大小・丸形ノミ大小・V字ノミ大小・カンナ大中小・丸鋸大中小・鋸大中小)のケントが買った20点セットに、(バール中・平型ノミ中・丸形ノミ中・V字ノミ中・糸鋸・極小カンナ・作業ベルト・作業ベルト用の袋大中小)が付いてる物が銀貨1枚と半銀貨1枚の所、銅貨75枚の半値になっていたのでさらに値引きさせるべく交渉しいたのだが・・・
俺の後ろでケントがやばい感じにブツブツつぶやきだしていたので、値引き交渉ではなくケントの買った20点セットを下取りにして、言い値だった銅貨75枚で30点セット2個って話で纏めるとケントが復活した・・・
(世話の焼けるヤツだが・・・親友だからな・・・)
まあ、渋ってた露店商もケントが出した20点セットがまったくの未使用品だったので認めた部分もあるだろう・・・、辺境とは言えそれなりに売れる村で信用がなくなったり悪い噂でも流されるとまずいと思ったかもね~
(さりげなく村長の息子だって示唆したし・・・)
まあ、ケントにもお礼にいちごのジャムを1個(200gぐらい入った木の容器)銅貨10枚を買ってもらったし・・・
失敗だったのは、またしても女子グループに捕まっておごらされたことぐらいだろうか・・・
俺もケントも早く買い物をしまくり使い果たして置くべきだったんじゃないかと、真剣に話をしたぐらいだ・・・
まあ、初日は貰ったばかりの自分の小遣いを使いたくなかった・・・、最終日は自分の小遣いを使い果たしていたって感じでたかりに来たのだろうが・・・
俺とケントの財布には大ダメージで精神的にも大きなダメージだった・・・
そんな事も有ったが・・・旅芸人の大型テントで講演された劇(入場料銅貨2枚)の最終公演を見ていたら忘れた!
ストーリー的には駆け出しの探索者グループが勘違いをしながら依頼を受け、幸運と勘違いで獣ではなく魔を討伐し後で知ってびっくり仰天!って感じの話だったが、やっぱ本職は違う!俺もケントもハラハラしたりドキドキしたり最後には腹を抱えて笑ってた!
そんな感じですっかり収穫祭を満喫した俺たちは家路につき、俺は家で、まだ広場で狂乱の宴を繰り広げてるであろう親父が帰ってないことを確認して、とっとと風呂に入って寝た。
(ふぅ~・・・楽しかったな~色々物も買ったし・・・明日はヘンリーさんを見送ろうかな~)
翌朝、身支度を済ませ飯を喰いつつ当然のように起きてこない親父を確認してから露店があった広場に行くと・・・
ヘンリーさんをはじめとする露店商の人達が荷物の積み込みをしていたので手伝っているとケントも来て手伝い始めた。
俺たちを出入り禁止にした露店の人達も俺たちが荷物の積み込みを手伝っていると来年からの出入り禁止は解除してくれる話になったが、どうも話を聞くと俺たちがあっさり景品を取っていたので他の子供が沢山挑戦して、結構儲かったからのようだ・・・
まあ、そんな感じで手伝って村を出発するヘンリーさん達を見送ったが、ヘンリーさんは試作品が完成したら送るから絶対に感想を聞かせて欲しいと行って去っていった。
(俺たちはモニターかよ!まあ、良さそうな道具をくれるのはラッキーと思うけど・・・)
こうして収穫祭が終わり、俺たちは日常に戻る。
勉強したり狩りで訓練したり、時には釣りに行ったり遊んでいたり・・・そして狩りのシーズンが終わり冬になった。
冬の訪れは突然だった!12月に入ってすぐに雪が降り出し、あっという間に積もるとすぐに1mほど積もるまで雪が降り続き、それと同じように気温が急降下した。
長い冬の始まりだ!
俺たちの住み土地は、12月ぐらいから3月の末ぐらいまでが冬のシーズンで、狩猟団も頻度の落ちた半日程度の狩り以外特にすることもなく、大人達は寄り合いで酒を飲んだり、武器の手入れをしたり思い思いに過ごし長い休暇のような状態が続く・・・
親父の話じゃ、昔はウィンドウルフの大規模な集団や単体から小規模な魔の襲撃があったらしいが、今は定期的な討伐の狩りもしてるから滅多な事じゃそんなことにならないというか・・・
もう、最近10年はそんなことはないらしい・・・
俺はそんな暇のある生活の中で買い込んだ本を読み、来年ぐらいに山の狩り場でのボートを使った猟や南にあるらしい湖で猟ができないかとか・・・色々考え、どうにか組み立て式のボートが出来ないか考えていた。
俺が買った本に書いてあったのは、組み立て式ではない船ばかりだったので結構悩んでいる。
親父にも相談したが、そもそもボートを使って釣りをするとか湖で羽を休める水鳥を狙うような発想がないらしく、説明にはかなり苦労した。
もうすぐ新年・・・
俺はケントや親父、ゴバックさんも仲間に引きずり込み組み立てボートのアイデアをひねっているが、良いアイデアも出ずにもうすぐ新年という時期になってきた。
いつものように朝飯を食べお茶を飲んでくつろいで居ると、唐突に母さんからもうすぐ兄さんが帰ってくると告げられる。
兄さんか・・・仲が良い方だったと思うが・・・別の記憶がある俺を受け入れてくれるだろうか?ちょっと心配しながら、兄さんが帰ってくるのを俺は少し楽しみにしていた・・・




