020 収穫祭!③
第20話 収穫祭!③
さて・・・収穫祭本番である!俺は起きたら身支度を調え朝飯を喰いながら両親に今日の予定を告げつつ家族の予定を聞くと、親父は収穫祭の挨拶をした後午前中は自警団本部で待機で、夕方以降は寄り合いというか宴会に出る事になっていて、母さんは朝から夕方まで休憩を挟みつつ料理の補充をするとのことだった。ミーアのことが気になって聞いてみると、教会で預かってくれるし御馳走も食べられる昔の俺と同じ扱いだと聞いておやつでも途中で持って行ってやろうと考えた。
親父が出かける前にと思いイケスの様子を一緒に見に行き、餌をどうしてるか聞くと『釣りの時肉に食いついてるんだから肉だ!まあ、くず肉とか切れっ端だがな・・・』と言っていたので、堅くなったパンを水で戻したり野菜くずを混ぜても大丈夫じゃないかと提案してみた。
部屋に帰って本でも読もうかと思ったとき米のこと思い出したので聞いてみると、もう検査が終わったので10kg程度なら村の倉庫にある分からもってきても良いと言われ早速取りに行くことになった。
自警団本部の裏にある村の倉庫群・・・管理は自警団でしてるので俺は正面の当直室で自警団の人に、親父から10kg持ち出しの許可を貰ってることを伝え、一緒に倉庫から米を出し自分の空間に入れたあと自警団の当直にお礼を言って家に戻った。
さて・・・米は手に入ったが籾殻付きだからな・・・どうするか・・・
(確かテレビでは一升瓶とかに入れて上から棒でつついていたな・・・)
俺は米を入れる器をさがして家中を探し、結局小型の木の箱に入れ木の棒で突きまくった!
「むう・・・力加減が難しいな・・・割れちゃったのも有るみたいだし・・・」
「まあ、素人だし・・・このあたりは要研究だな・・・」
そろそろ露店も開くし中断して祭りに行くか・・・
俺は誰もいなくなった家を出ると収穫祭の会場へ向かった。
(露店で何か良い道具はないかな~)
とりあえず親父の挨拶なんか欠片も興味がないので、昨日と同じように露店の方を見に行く・・・うろうろと露店を冷やかしながら見ているとケントが合流してきた。
昨日は準備中だったところを中心に見て回ると、昨日とは別の本の露店があったのでケントと見に行く・・・
「どれどれ・・・」
ふむ・・・「法具作りの基本」これは親父の書斎にもあったな・・・
「ビールにワイン、命の水に魂を込める!」・・・これも親父の書斎にあった本だ・・・なるほど・・・親父のヤツもこうやって露店とかで本を仕入れてたんだな・・・
お!カラフルな本が置いてあるな・・・「騎士と姫君」・・・子供向けの絵本かな?
これは後でミーアの持ってる本を確認してからだな・・・
他には・・・俺もケントも良さそうな本を探し真剣に見ていく・・・
「農業技術」・・・ひょっとして・・・俺は露店商に銅貨1枚を渡し内容を見てみる。
「あ!・・・」失敗だ・・・作付けとか除草、本気で生育用の農業技術書だ・・・
「どうかしたのかアレン?」「いや・・・思った内容と違う本だっただけ」
他には・・・「鉱石判定法」・・・鑑定で良いじゃん!
「釣り具と漁具の作り方」・・・お!これは・・・これはキープだな・・・
網の作り方やかご漁、竿に適した木とか加工のポイントが書いてある。
「5分で判る、野草の見分け方」に「薬草学」、「香草と料理への利用法」・・・誰か持ってそうだよな・・・あんまり興味もないし・・・
「実践!想念法」・・・親父の書庫にあったな・・・今度借りようと思ってたヤツだ・・・
ん~あまり良いのがないな・・・ケントを見るとちょうど1冊買うところだった。
(ケント・・・タイトルが「設計と建築」ってお前どれだけ読むんだ?)
俺も気になった本の値段を聞いてみる。
「すいませんこの本はいくらですか?」
『まいど~え~っと・・・これは古本だから銅貨20枚です。』
「買います。」俺は、「釣り具と漁具の作り方」を買った。
ちょっと気になったので露店の店主に仕入れについて聞いてみた。
(新品と中古が混在してるって疑問だったんだよね~)
『ん~とな、うちらは最初新品だけ持ってこの商売を始めるんだが、旅から旅をしていると新品だけじゃ商品が足りなくなるだろ?』
『出版はほとんど王都でしかしてないから仕入れに王都に戻ってばかりじゃ、ここのような辺境には一生行けないことになる。』
『そこで、こうやって露店で商売をしながら程度の良い古本を買い取り商品化してるって訳だ!』
『坊主達も家に要らない本できれいなのが有れば買い取りしてるから持ってきてくれ!多少高くしてやるぞ・・・』
「へぇ~そうだったのか・・・」なるほど、色々考えてるんだな~
「そう言えば、売れ筋とか有るの?」
『ん~そうだな~お前らには少し早いから売れないけど・・・こういった本が今の時期はよく売れるな・・・』
そう言ってタイトルのない赤い表紙の本を店主はチラッと見せた。
「それって、どんな本?」
『ま、まあ・・・れ、恋愛小説ってヤツだ!』
(この怪しさはほぼ確定だな・・・興味ないけど・・・)
「へぇ~やっぱり、冬の退屈しのぎは小説か~」
『まあな~長編で続き物も結構あるし、技術系は大抵の村で誰かが持ってたりするからあまり売れないんだよな・・・』
『まあ、今の時期無いと思うが・・・長編小説のフルセットだと買い取り金額を増やすから、家の人に言っておいてくれ!』
「判った!どうもありがとう!」
「待たせてごめん!」「いや別に良いよ!」
俺たちはさらに見て回る・・・
「楽器」「鍋・釜」「調理器具」「食器」「調味料」・・・ん?
「ちょっと寄ってみよう!」俺はケントに声を掛け調味料を扱ってる露店に立ち寄った・・・
「へぇ~ジャムの量り売りか~結構種類があるな・・・」
「スパイスも有るな・・・」
ちょっと聞いてみるか・・・「すいません」『ん、なんだい?坊やお使いかい?』
「いえ・・・ちょっとお聞きしたいのですが、「醤油」とか「味噌」って扱ってますか?」
『こりゃ~「醤油」に「味噌」と来たか・・・この村で売れるなんて思ってないから、町での売れ残りが少し有るが・・・どれぐらい欲しいんだ?』
「え!有るんですか・・・別に商売にするとかじゃなくちょっと興味があっただけなので少しで良いんですが、高い物ですか?」
『いや・・・元々高級品なんて扱っちゃ居ないし、ちょっと待ってな!』
露店の店主は後ろにあった木箱をごそごそとあさりだし、4リットルほど入りそうな樽と同じく小さな木の器を持ってきて・・・
『この中に醤油が1リットルぐらいとこっちの器には味噌が2kgほど入ってる。どうせ売れ残ってる物だしこれで良いなら銅貨35枚、樽と器も付けるなら半銀貨1枚でどうだね?』
「樽と器付きで下さい!」
『まいどあり~!ところで次も誰かコレを持ってきたら買うかね?』
「ん~試してみるだけなので何とも・・・」
『そうか・・・誰か買うようなら商工会に依頼を出しておけば行商人が持ってくるかもな・・・』
『もし使うのが判ったら教えてくれれば、俺なら有る程度の量を融通できるって親御さんに言っておいてくれな!』
「はい、わかりました!ありがとうございました。」
「お待たせ~何度も悪いね~」俺が自分の空間に、手にいれた醤油と味噌を収納しながら声を掛けると・・・
「別に良いけど・・・醤油と味噌って何だ?」
「ん~例の記憶にある調味料、たぶん気に入る人もいると思う!」
「へぇ~何か作ったら俺にも少し分けてくれよ!」
「大丈夫!大丈夫!試してみて美味しかったら狩猟団でお披露目するから」
「んじゃあ、そろそろ昼飯喰いに教会の方の広場に行こうぜ!」
「そうだな、行くか!」
広場に向かうと沢山の人が集まりテーブルの上には焼きたてのパンが山積みされ、端の方でスープが配られその横ではお酒や果汁が振る舞われてる。
俺たちも早速スープを大きめのカップに注いで貰い、近くのテーブルからパンを取るとパンを半分に切り、他のテーブルを回って肉や野菜を挟んで食い始めた。
「結構美味いな~」「おう!美味いな~」
「次は向こうに行ってみよう!」
色々なテーブルを回り親父のソーセージや母さんのリバーシュリンプ、ゴバックさんの豚の丸焼き・・・普段食えない御馳走を腹一杯食べた。
「うぐぅ~もう喰えねえ~」「腹が破裂する~」
「こりゃ・・・動くと逆流しそうだけど・・・ここで寝るって訳にもいかんし・・・」
「荷物も置きたいし、ちょっとやることもあるんだよな~」
「一端、家に帰るか・・・」「ん~じゃあ俺も行って良いか?」
「ん?別に良いけど、どうしたんだ?」「いや・・・アレンのやることにちょっと興味がある。」
こうして俺たちは喰いすぎて苦しい腹を抱え俺の家に向かった・・・




