015 坑道の探索
第15話 坑道の探索
一夜が明け・・・狩り場での生活にも慣れだした俺は、いつもより早めに起きると井戸にむかい顔を洗おうとするが、朝食の準備をするゴバックさん達がすでに起き出し水くみをしていた。
「おはようございます。」
『おう、おはよう!今朝は早いな~』
事実、今までの俺ならもう少し寝ていたし身支度を調えるとすぐに朝食、そんな感じがこれまでの狩りだった。
「少しは馴れてきたって事ですかね?」
そんな軽口を叩く俺にその場にいた大人達は・・・
『ちがいねぇ~!もう二回目だしな~』『早く馴れてくれないと俺たちもきついからな~』『まあ、早起きは良いことだと思うぞ!』
『ほい!井戸が空いたぞ、顔を洗うんだろ?』
「ありがとうございます」
『せっかく早く起きたんだ、身支度が終わったらケント達を起こして朝の見張り番でもやって貰うか~』
「はい!すぐ準備します」
『おう!んじゃあ、頼むぞ!』
俺は軽く顔を洗い口をすすぐとケント達を起こし、急いで装備を身につけ見張りの準備をした。
早朝から見張りに立っていた大人達に交代を告げると、「おう!だんだん慣れてきたようだな~」「もう何回か狩りに参加すれば一人前になるかな?」「じゃあ、頼むぞ!」
などと言ってくれたので多少は認められてきたのかもしれない・・・
『朝飯にするぞ~』の声で屋内に戻ると、やっぱり昨日の鍋?を少しアレンジしたスープに焼きたてのパン、ちょうど良い具合に焼けた肉にサラダ・・・朝から豪華な内容だった・・・
(狩り場の食事は、日が経つにつれて豪華になるな~)
『んじゃあ、喰いながら聞いてくれ!』
そう親父が声を掛け朝のミーティングが始まった。
『本来なら今日も分かれて狩りの予定だったが、順調に成果があったし馬を使った街道と荒野の狩りも思った以上に早く終わって、正直もう村に戻っても良いのだが・・・』
『ちょっと迷っているのでみんなの意見を聞きたい!』
「そうだな~村に戻るのも良いが、俺としてはもう少し残ってこの休憩拠点の整備をしても良いんじゃないかと思うんだ。」
『ん?ここの整備?』
「ああ・・・村長も判ってると思うけど、ここは王国基準で村から半日の距離だろ?」
『そうだな、俺たちが村を作るとき王国基準で整備しながら全部作ったんだからな!』
「だけど、ここは狩りで一番多く使う拠点だよな?」
『まあ、そうだな・・・村から離れてこっちの狩りに使うときは遠くに行くときも、近くで狩りをするときも必ず使うな・・・』
「それでだけど・・・一番使うのに野営用の拠点に比べて不便だよな?」
『まあ、そりゃ~休憩用の拠点だからな・・・』
「そこでさ、もう少し整備して使い勝手を良くすれば今後の狩りの時、もっと過ごしやすくなるんじゃないかと思うんだが?」
『ふむ・・・確かに良い考えかもしれないな・・・』
『今までは王国基準で維持するのがやっとだったが・・・ここを整備すれば確かに狩りが楽になる。』
『他の者の意見はどうだ?』
「そうだな~俺としては、こっちを整備するよりもう少し村の近くか山の方に猟師小屋程度で良いから拠点があると日帰りの狩りで役立つと思うのだが・・・」
『ふむ・・・その提案も魅力的だな・・・今までだと、どうしても泊まりの狩りになるし天候の急変時に逃げ場が少ないからな・・・』
「今年で村が出来て20年、ぼつぼつ成人して家を分ける者も増えてきた・・・人手も有る程度用意できるようになったし、もう少し村を広げても良い時期じゃないかな?」
『ふむ・・・色々な意見があるな・・・』
『まあ、だが・・・今話しているのは今日の予定だ・・・』
『新しい拠点や村の拡張については、村に帰ってから寄り合いで話し合う議題にすることを約束しよう!』
『とりあえずは、ここを少し便利にした方が役立つって話でどこまでやるかの話にして良いか?』
「了解だ村長!」 「そうだったな、先走りすぎたようだ・・・」
「良いと思うぞ・・・」 「とりあえずトイレは欲しいな・・・」
「「風呂があると疲れがとれるぞ!」」 「薪小屋を作れば小屋を広く使えないか?」 「大きめの納屋を建てて・・・」
様々な意見が出て検討されていくが・・・
『とりあえず今回は、トイレと出来れば風呂を何とかしてそのほかは村に戻ってから又検討しよう!』
(トイレは正直ありがたいな~だいぶ狩りで馴れたけど・・・野外は抵抗があるし、人間が無防備な一瞬だからな・・・)
(風呂はどうするんだろう?ここには近くに大きな川がないし、井戸水を汲んで湧かすのは大変そうだけど・・・)
朝飯を食い終わり大人達の話し合いを聞いていると、とりあえずトイレについては野営拠点と同じで地面に掘った穴に足場をもうけ、移動可能な二畳程度の簡易小屋を設置する方向でまとまったが、風呂については良い案が出ず・・・俺たちが昨日見た地面の暖かい場所あたりで温泉をって話も、せっかく秋に入っても夏草が茂る場所が出来たのに環境を変えてしまい無くなるとまずいという流れになり、一応閉鎖した坑道がどうなっているか調査して坑道内で温泉が湧いていればそっちを整備、湧いていなければ村に帰ってからの議題って話に落ち着いたようだ・・・
で・・・俺はって言うか俺たち子供組は、全員が閉鎖坑道の探索になった!(一応、俺が発見者・・・って事でらしい・・・)
トイレの方は、材料の切りだしや加工に穴掘りなんかで6人と拠点の見張りと留守番で2名・・・残り全員で昨日の坑道入り口へと向かった。
坑道の入り口に付くと、昨日は参加していなかったメンバー(主にうちの親父・・・)が残っていた夏草に驚愕し、声を上げている。
(親父・・・恥ずかしいぞ・・・)
閉鎖されていた坑道の入り口は、外側の1mほどにしっかりとした木の柵が作られていて、入り口の大きな扉には大きくX状に板が打ち込まれている。
俺たちは柵を越えると打ち込まれていた板をはがし坑道の中を探っていった。
坑道の中は蟻の巣状になっていて大きな部屋?堀後が5部屋と、それにつながる通路で構成されていた。
親父に後から聞いた話だと、直線上に一本・・・左右で上下にずらし二本ずつ試し堀をして資源を探したが特に出てこず、結局休憩拠点に使う分の石材を掘ったら閉鎖したらしい・・・
坑道内にはいると、親父達が掘ったときに埋め込んでいた明かりの効果のある想念法の陣がまだ機能していて、蓄えた念量がほとんど無いため薄暗いが俺や親父は夜目が使えるので問題無いし、人数が集まったので念吸収の陣がすぐに念を集めだし不自由しない程度に明るくなった。
【この世界の明かりは、想念法の念具が主流で一般的には二枚でワンセットの念具で、明かり発生の放出で一枚、スイッチと吸収で一枚を必要数だけ使うが・・・壁などに直接陣を刻みつけ発動させることも出来るそうだ・・・
(やっぱ、ファンタジーだよな・・・)
アレンとしての人生では物心付いたときから使ってるので、今までまったく気にしていなかったがやっぱり俺はこっちの世界の住人なんだな~、多少異世界(日本)の知識って言うか記憶があっても、基本こっちの住人だからむこうで言うファンタジー要素に気が付きにくくなってるんじゃないかな?
坑道の明かりを見て一瞬そんなことを考えたが、実にあっけなく坑道の中に入っていった・・・
『ん~こっちもだいぶ熱がこもってるな・・・』
「外に比べてずいぶんと暖かいね・・・暑いと言っても良いくらいだし・・・」
『意外と湿気が少なくないか?』
「もっと水が出てきてもおかしくないと思うが・・・」
確認しつつ探索を進めていくが、天井付近や壁から多少水分が出てるのか2cmぐらいの鍾乳石のような物から水滴が落ち、その下に水たまりがあるぐらいで温泉の気配は皆無だ・・・
『ん~もしかしてと思ったが、やっぱ湧いてないな・・・』
「え!父さん、入る前から判ってたの?」
全ての探索が終わり、外に出ながら親父がつぶやいた言葉に俺が反応すると親父が教えてくれた・・・
『まあな、これだけ地面が暖かいならわき出る温泉の温度も結構高いはずだろ?』
『だが、坑道の入り口からは湯気も出ていなかったし中に湿気もない・・・』
『それを考えれば、それぐらいの予想は誰にでも出来る』
『アレンも経験を積めば判るようになると思うが、常に頭を使うことだ!』
(なるほど・・・確かに言われてみれば納得できる)
「はい!」
俺は元気よく親父に返事を返し坑道の探索を終えた。
『とりあえず坑道は再度封印して・・・拠点に戻ってトイレの方がまだなら終わらせてから村に帰るか・・・』
『だが少し半端な時間になるな・・・そうだ!』
『昨日見つけた「ワサビ」って採取場所は遠いのか?』
「ん~ここからだと1時間て所かな?・・・取りに行くかね村長?」
『一時間か・・・これまた少し半端だな・・・』
『聞いた生育条件なら、もっと近くで採れても良いと思うが・・・』
『今から探すぐらいなら村の裏山やもっと近い場所で探す方が良いな・・・』
『よし!とりあえず拠点に戻るぞ!』
親父がそう決めたとき、木が茂ってる方から「バキ・・・ガサガサ」っと獣が移動してくる音が聞こえ、グランドベアが姿を現した。
本日はコレまで、予約投稿が巧く昨日していれば3話投稿できたはず。
明日も3話の予定!




